アルバイトくんの一言から感じた危機感
「僕は偉くなって会社を変えたい」だって!?
ここで言う「私の経験」とは、2018年に社内の組織改革で導入した執行役員体制がうまく機能せず、何年か経つうちに生じた弊害のことだ。
私が執行役員体制の悪い面に気付いたのは、確か2022年の1月だった。正月だから顔を出しておくか、と思って若手の勉強会に参加して、アルバイトの子たちに夢や抱負を話してもらったときだった。その席で、一人の子がこう言ったんだよ。「僕は偉くなって会社を良く変えたいです」って。
私は「あれっ?」と思った。会社を良くしたい。いいね~、嬉しいね~。でも、その前の「偉くなって」はマズい兆候だ。現場のバイトスタッフがそう思うということは、「偉くならないと会社を変えられない」という認知が社内に蔓延している証拠だからね。
話が噛み合うようになるため最低限必要な二つのこと
「立場に関係なくルールを守る」「経営思考を身に付ける」
また、外部コンサルタントも専門分野ごとに3名体制にした。うち一人にお願いしたのが環境整備だ。社内改善で「環境整備」と聞くと、いわゆる3S活動(整理・整頓・掃除)を思い浮かべる人が多いけど、そして実際、現象としては「道具を使ったら所定の位置に戻す」といった行動として変化が見えてくる部分が多いけど、環境整備の本来の趣旨は「決めたらその通りにする。立場に関係なくルールを守る」こと。一部属人化されているルールや業務を見える化し、標準化することで、それを社内の“当たり前” つまり文化にすることだ。全員がその習慣を身に付けることだ。
そして、もう一つの環境整備は、「各自が経営思考を身に付ける」ことだった。これに関しては、1976年にソニーの西順一郎先生が開発した、マネジメントが学べるゲーム「MQ戦略ゲーム(MG)」を2022年4月から社内に導入し、活用させていただいている。
事業を成功させる組織にするには、マーケティングもマネジメントも、基本要素は一通り理解したうえで共通言語と共通認識を揃えておく。マーケティングなら「販売、集客、店舗、商品、実務、アフター、クレーム」。マネジメントであれば「財務、管理、人事、採用、評価、理念、教育」が基本となる要素だ。
経営陣がこれら全部を関連付けて考えるのは当然なのだが、幹部や管理職も理解して動けるように勉強しておかなければならない。そうじゃないと会話が成り立たないからね。
そりゃそうだよ。上司が「集客にはこのツールが必要で、それにはいくらかかって、会社が今出せるキャッシュはいくらで・・・」というふうに集客と財務を関連付けて話しているのに、部下が「ツールの使い方なら任せてください!」というように情報が分断されたところで話していたら、嚙み合わないじゃないか。
「意味ない!」とブチ切れかけたコンサルタント
リーダーの認識を変えさせるのに10ヶ月かかった
コンサルタントは環境整備の社内リーダーと話が噛み合わずに悩んでいた。私はそのリーダーに事情を聞いてみた。すると、「あのコンサルタントは使えない、アイツはやらないんだからダメだ!」と私に不満を爆発させた。
私はリーダーに諭して言った。「いやいや、やるのは私たちだから。先生には月に1回指導していただいている。みんなに働きかけて、説得して動かして、整備を進めていく実務はうちがやらなきゃ誰がやるの。リーダーが先導して動かしてくれなきゃ、いつまで待ってても動かないし始まらない」
リーダーがそのことを理解するのには時間がかかった。しかも、インプットしたことをアウトプットできるかは、また別の話だ。だから、覚悟が固まって実際にプロジェクトが動き出してからまだ8ヶ月ぐらいしか経っていない。
それでも私が先日先生に、「今の状態は100点満点でいったら何点のところまで来ましたか?」と聞いたら、「30点。達成率30%ですね」と返ってきた。まだまだ道半ばだけど、ようやく大きな山が動き出したことは素直に嬉しい。2年前の正月にあのアルバイトくんの小さな声を拾い上げられなかったら今頃どうなっていたかと思うと、ゾッとするよ。
やはり鍵を握るDX化
その本質は情報の可視化だ!
でも、どんなに見える化を進めても、昔の組織体制だと、「なんで俺のとこに情報を持ってこないんだ! 聞いてないぞ!」と、根回しを受けてないことに怒り出す人がいるんだよなぁ・・・。
石丸伸二さんのYouTubeで安芸高田市議会のやり取りを見る限り、「俺は聞いてない!」というのが古株議員たちのスタンスで、それに対し元市長の石丸伸二さんは、「出てますから。見てください。自分から情報を取りに来てください」と繰り返していたように思う。依存体質のお偉いさんに「自立しろ。本来の仕事をしろ」と教えている感じでね。それが私も非常に勉強になり、組織の在り方について影響を受けたから、自社の改革に踏み切ることができた。
ともあれ、可視化の時代だ。一部の人が情報を握っていろいろコントロールするなんて時代はもう終わりだ。これからは全員が情報を得る。そのためには、ベースとなる共通言語と共通認識を成り立たせることが大事だ。
皆さんの会社はこれから、どういう方向で進んで行きますか?
事務局 郡上商業開発
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vol.93 力がある人の都合に合わせる組織は衰退するから、気を付けましょうね、という話(2024.7.17)
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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