オタク文化への憧れを胸に来日
転機が訪れたのは3年生のとき。必要単位をほぼ取得し終えていた王社長は「時間を有効に使いたい」と、先輩が受講していた「起業家養成講座」を受けてみることに。さらに、大学内のビジネスコンテストに挑戦します。その際発案したのが、クリエイターが描いた作品をさまざまなグッズに商品化し、販売するというもの。専用プラットフォームにアップされたイラストを基に商品案を生成・公開し、消費者はその公開された商品イメージを見て購入する仕組みです。自身の作品を周知したいクリエイターの支援にもつながるのが特徴で、「二次元とものづくりをかけ合わせたビジネスがしたかった」という王社長ならではのアイデアでした。コンテストで優勝した王社長は「いずれ起業したいとは思っていたけど、日本ではひとまずメーカーに勤める気でいた」という考えをあらため、SO-ZOを立ち上げます。
ただ、会社設立と同時に競合他社が多数出てきてしまったために、同社は一般的なグッズからインテリア商品の企画開発・販売に特化した事業に舵を切り直します。「二次元の作品とコラボした壁紙やカーテンなど大きな商品を扱っているところはほとんどなかったので、これでいこうと決めました」。また、王社長がものづくりのノウハウを活かして簡単なリフォームまで手がけられたため、商品企画開発から販売、施工まで一貫して引き受けられることも武器に。これが現在の同社のメイン事業である、「痛部屋」につながっていくのでした。
「好き」の気持ちがどんな壁も超えさせてくれた
現在は「痛部屋」以外に、インテリア商品を販売するECサイト「イタテリ屋」の運営や、使用許可取得済作品のプリント商品を受注生産する「イタプリ」などの事業を展開中。「痛部屋」については顧客の大半がホテルや旅館などの宿泊施設で、日本のアニメや漫画を好む外国人はもちろん、推し活の一環として“ホカンス”を楽しみたい日本人向けに“痛ルーム”を提供したいという問い合わせが多いといいます。そんな依頼を受け、同社はこれまで『ユーリ!!! on ICE』をはじめとした話題作のキャラルームを多数手がけ、実績を重ねてきました。同社が携わったあるホテルでは予約開始と同時にアクセスが集中し、公式サイトが一時ダウンしてしまったことも。利用者に記入してもらうアンケートには、枠から溢れるくらいの文量で感想を書いてくれる人もいるのだそう。「その宿泊施設だからこそ成し得るデザインにこだわっているので、喜んでいただけるとやりがいを感じますね」。
「痛部屋」プロデュースは想像以上に大変。でもやめられないのは・・・
そんな苦労がありながらも仕事が楽しく、日々充実していると王社長。コロナ禍で2年半以上、中国に帰れていないことについては少し寂しそうな表情を浮かべながらも、「帰れたとしても仕事すると思う」と笑いました。異国の地で、さらに学生という立場での起業に始まり、昨今のコロナ禍など幾多の試練があったにもかかわらず、夢中で取り組んでこれたのは、やはり日本のアニメ・漫画が好きだからだといいます。
「“好き”という気持ちがあれば、挫折してもまた立ち上がれます。会社を設立した直後に競合他社が出てきたときもそう。アニメや漫画が好きでそのビジネスを諦めたくなかったから、他のやり方を見つけ出せて今につながっています。今も大変なことは多いけど、好きなことを仕事にでき、同じ趣味を持つお客様が喜んでくれる。そのためならいくらでも頑張れます」
王社長の目標は独自のコンテンツをつくり、日本のサブカルシーンに新たな風を起こすこと。一企業のトップとして、また日本特有の文化に魅了された外国人として、その視点を活かし、これからもオタクカルチャーの発展に力を尽くすつもりです。
http://so-zo.co
■住所
〒170-0013
東京都豊島区東池袋4-23-17 田村ビル5階
vol.6 オンリーワンの痛部屋を創出 オタク文化支える中国人社長の挑戦 株式会社SO-ZO
(2022.8.17)