トピックスTOPICS
コラム 一職業会計人の "軒昂奉仕" vol.25 デジタルデバイドと情報難民問題を考える 一職業会計人の "軒昂奉仕" 公認会計士・税理士
コラム 以前に私が税理士の友人から、その方の事務所の創業50周年の記念品をもらった時の話から始めましょう。
贈られたのはUSBメモリでした。同じく贈られた仲間の一人が、「これ何に使うの?」 と質問してきました。年齢は私よりちょっと若いくらいですが、日本の最高学府を卒業し、超難関な資格を保有している方です。 USBメモリを知らないことの驚きもさりながら、彼が次に発したのは「アッ、フロッピーディスクのようなもの?」という言葉でした。
今やフロッピーディスクも生産終了してしまいましたから、絶滅の化石種シーラカンス状態になっています。彼は文章を書くのが仕事ながら、清書は全て秘書任せのため、ワープロやメールも使えていないようです。
そこで自分のことに目を転じ、身の周りにあるIT機器等の利用状況を考えてみることとします。
私たちの年代 (65歳からの前期高齢者に成りきった年代で、かつ70歳未満) でも、携帯電話未利用者はさすがに少なくなっています。しかしメールを使っている人の割合はどうでしょう? 小学校のクラス会で作っているメールリンク (またはメーリングリスト) の利用者は全体の4分の1つまり25%、高校のクラス会のそれは約40%。私どもの年代は、ちょうど管理職になって現場を離れた頃からIT化が進展し、パソコンとの縁がないまま定年を迎えてしまった方も多く、そのまま現在に至っている人も多いのです。ただし、大学のクラス会での利用率は所在判明者の約90%あります。意外と多いものだと感じました。
一方、驚くべきデータもあります。私が役員を務めるある財団で、80歳代の評議員に彼の大学時代の仲間のメール利用率を聞いたところ、20%でした。仕事を辞めてから20年以上経っている方たちのメール利用率が20%もあるというのは、すごいと感じませんか?
この方の大学時代の友人は、おそらく70歳くらいまでは各企業や業界で役職を張っていたような、日本のトップレベルの階層の人たちばかりです。ですから、時代に取り残されないよう、自ら向上心と探究心と好奇心を持ってパソコン利用のスキルを獲得していったに違いありません。
デジタルデバイドとは、情報技術 (IT) を使いこなせる者と使いこなせない者との間に生じる機会の格差、個人間の格差のことです。情報技術 (IT) を使いこなせない人は、ものすごく遅れてしまっていることに気付かないまま取り残されているんじゃないでしょうか。学歴の差が生涯獲得所得の差になっていることの問題点も指摘されていますが、デジタルデバイドが生み出す待遇や貧富、機会の格差こそ、今後問題になるかもしれません。
IT機器利用者の格差は私の年代の前後を境目にして生じています。まあ私どもはすでに世の中に対する貢献も役割もその使命を終えてしまっていますので、これを使えないからと言っても、更なる格差も生じようのない年代です。
しかし、私どものクライントの中でも、若いのに 「私はアナログ人間だから、ダメなんです」 と公言している人がいます。これからの世の中に貢献すべき若人なのですから、デジタルデバイドによる待遇やチャンスに格差が生じないよう、奮起を望みたいものです。
-
前の記事
一職業会計人の "軒昂奉仕" vol.24 最近の不正事件と経営監視制度、公認会計士監査について考える 一職業会計人の "軒昂奉仕"
-
次の記事
一職業会計人の "軒昂奉仕" vol.26 豪華社宅やお寺の庫裏の家賃負担問題について 一職業会計人の "軒昂奉仕"