イノベーションは、一人の単純な「気づき」から生まれる。<5の1>
さらに、近年の地球環境や地球資源の問題に目をやれば、前時代的な大量生産・大量消費に歯止めがかけられようとしていることは自ずと理解できる。
地球規模でマクロ的に「モノ」と「コト」を見据えていくと、次の時代は「自然の循環」を大切にする経済になっていくと言える。
モノを大切にする経済、つまり使い続ける経済。この経済においては、ケアやメンテナンスなど、モノを必要としない「コト」が必須になる。経済はモノづくり主導の状態から脱却し、サービス主導の経済に移行していく。そのときの新しい主役はサービス業だ。
ただ、サービス業にも欠点がある。規模の経済が望みにくく、物流に乗せられないという点だ。
しかしながら、この難点こそビジネスの最大のチャンスなのだ。難点は誰にとっても難点であり、またそうであるがゆえに、それを解決する方法・原理を探り出して「ソリューションする」ところにビッグなビジネスチャンスがある。
それを察知した企業は、様々なビジネス局面で「ケアすること」や「メンテナンスすること」を実践してお客様に喜ばれている。
たとえば、ホテルや旅館などの宿泊サービス業。中でもリッツカールトンが偉大なのは、すべてのオペレーション業務が「心の癒し」つまり「心のケア=メンテナンス」から発想されていることだ。
モノづくりにおいても「心の癒し」は徐々に理解され始めている。トヨタのレクサスは自分が運転するときも、してもらうときも、乗車中の「心の癒し」を基準に設計されている。レクサスに乗って降りてくれば「気分爽快」、たちどころに元気が出てくるというものでなければならない。
サービス産業におけるビジネスの基軸は、ケアとメンテナンスである。すなわち、どうすればお客様の心をケアし、メンテナンスできるかがメインのテーマになる。それが単純に「おもてなし」であるとは一概に言えないが、人の心の「心理」「真理」を考えれば、次代のマーケティングは、仕組みの「方法と原理」を変化させれば「成功する道」に入れるということに気づいてもらいたい。
レクサスのヒットにしろ、リッツカールトンの成功も、ディズニーランドの隆盛も、すべては1人の経営者の「未来を見抜く直観力、想像力、発想力、やるべきことをやり抜く実践力」に委ねられている。時代の変化に対して、社会の足元にある現象や潮流(トレンド)に対して、どのように判断して舵を取るかにかかっている。
成功できない企業にあっては、経営者の私利私欲をもとに経営意思の決定がなされて、マーケターはその意思をもとに市場をリサーチし、マーケティングを行う。それは、両者の間違った利己欲によって、互いの自己満足を充足させているにすぎない。
ただし、逆の可能性もある。経営者はマーケターのプレゼン次第で経営の意思を変える存在であると考えるなら、企業の成長と発展は、1人の人間の「気づき=勘」「勇気」によって、いかようにも変えられるのだ。
このことは、大企業においても、中小企業においても、変わるところはない。つまり、あなた個人によって企業は大きく変化して成長するということである。