強面の夫婦はニコリともしなかった。
そうするとさ、思いがけない、ていうか、想像もしない出来事にぶつかって、ちょっと視点が広がる、ってこと、あるよね。
日本中、あるいはもちろん海外、度肝を抜かれたり、ジ~~~ンとしたり。そんな意外だらけのシーンはさ、つまり「発想の宝庫」なんだと思う。
これからこの連載で、僕が出会ったさまざまなシーンを紹介したいと思う。
昨年のクリスマスイブ、僕の本が出版されて、そのタイミングに、実は僕はメキシコとキューバに行っていた。なんつっても、日本にいるときはメキシコの治安の悪さばかり聞いていて、もうね、メキシコでは強盗に襲われてやっと普通(笑)ぐらいに諦めて現地に入った。
いつも思うんだけど、その現地に立ってしまうとそこは日常で、不思議と危険な気配を感じにくくなる。(でもさ、先日のエクアドルの事件なんて、ほんとやっぱり気をつけなくてはね、僕の友達もペルーでタクシーに乗っていて、信号で停まったら、窓を割られて鞄を強奪された。(別に南米だけでなく、パリもスペインもアメリカも中国も世界中どこだって用心だ)
別に、具体的に広告の戦略があったわけでもない。思いつきのやっつけだ。写真としての完成度もクソもない。でも、二度とないレアなチャンスを有効活用するほうが、よほどいい、写真作家より戦場カメラマン的な。
思いつく必要ないの。
教科書的に伝えてみんながアイデアマンになれる、なんて幻想もいいとこだしね。そういう意味で言うと、僕の本の広告を僕がする、というのは、これもまた「やって見せる」ことになるわけ、アイデアの実例。
で、自分のこととしての本だから、自分で撮影して、自分でいろいろ告知してみてもいいかな、と思った。
ヒヤヒヤしながら、スケッチブックを持たせた、ただのスナップ写真かと想像していたふたりは不審そうな表情、不審が不機嫌になる前に、激写したよ、質問のヒマを与えずに(笑)。
スマ~~イル! と精一杯僕が話しかけてもニコリともしない。メキシコはスペイン語で、とても基本的な英語も通じないの。 ドキドキしながら撮影3分、サンキュー! と引きつった笑いで手を振って、その場を去った。
このチャンスは、もう二度と来ないからね。
次に来るチャンスは、このチャンスとはまったく別物だからさ。
ちょっとでもピンときたら、全部クリアしとかないとね、後で後悔してもしょうがないじゃん。
▼(今回のキーワード)
このチャンスは、
次のチャンスとは別物だ。
全クリしよう。
執筆者プロフィール
永澤仁 Hitoshi Nagasawa
クリエイティブディレクター/run!run!! planning!!! 海の家 店主
経 歴
セブン-イレブン(忌野清志郎さんが歌うブランドの根幹を担う「近くて便利」コミュニーケーション)、バイク王(雨上がり決死隊バージョン)、キリン氷結(発売から6年間)、シチズン(広告&商品開発)など数々のクリエイティブを責任者として手がけ、そのすべてをジャンプアップさせた実績を持つ。競合プレゼンでは独創的なスタイルで3年半無敗を記録。受賞歴は国内外100以上。強い、正しい、面白い! 国も地域も企業も商品もお店も人も、めざすゆたかな高みへ。
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