後編 臨機応変に対応できる会社であるために
また、近年特に注目されているのが、女性が働きやすく、活躍のできる環境であること。「真の女性活躍とは何か」を考え、推進するWOMANʼs VALUE AWARDにて第三回準優秀賞を受賞したほか、女性リーダー、プロフェッショナルを続々と輩出している企業と、自ら道を切り拓き自分らしく働く女性を讃えるForbes JAPAN WOMEN AWARD 2022の従業員100名以下の部にて、企業総合部門9位、経営トップ実行力ランキング1位を獲得しています。秋山由香代表取締役と、スタッフの関香里さんに同社の成り立ちや産育休制度についてお聞きした前回に続き、復職後の取り組みや、同社が推進する「ママインターン」についてもうかがいます。
スタッフの自己実現を後押しする
関 産育休を取得していたスタッフはみんな自立して仕事をしている人ばかりで、仕事のコントロールもうまくできているのだと思います。復職後、保育園のお迎えなどで時短勤務をしている先輩は「以前より時間管理について考えるようになり、うまく時間を使えるようになった」と話していました。取材や執筆、編集業務などマルチタスクが求められる仕事だと思いますが、限られた時間の中でメリハリをつけて働いているのがよくわかります。
――お話をお聞きして、制度を整えることだけが大切なのではなく、コミュニケーションを取って個人個人の悩みを解決することが重要なのだと感じました。
秋山 その通りだと思います。社内環境を整えるにあたっては、制度に目がいきがちです。しかし、働いているスタッフ同士がコミュニケーションを取れていなければ、制度も生きてきません。一番大切なのは、お互いの理解です。弊社では、定期的にマネジメント層とスタッフとの1on1ミーティングを行っています。また、月1回のペースで、スタッフ自らがテーマを決めてナレッジを共有したり交流を深めたりするチーム会というものを開催しているんですよ。仕事について議論をすることもありますし、仕事を離れて純粋にゲームやレクリエーションを楽しむことも。こうした取り組みのほか、業務報告書やアンケートを通したやりとりや、日々の雑談などもこまめにしています。
――そういった取り組みは、どこか参考にした企業などがあるのでしょうか。
秋山 具体的に参考にしている企業があるわけではありません。チームビルディングに関する本を読んだり、知人から話を聞いたり、セミナーなどで事例を見聞きしたりする中で、「これはうちの社風に合いそうだな」と感じる取り組みがあったらやってみるようにしています。他社で効果が出ているからといって弊社でも有効かはわかりませんし、有名企業の真似をすればうまくいくというわけでもありませんから・・・。弊社の社風やスタッフに合いそうな取り組みや考え方をいろいろなところから少しずつもってきつつ、足し引きをして採り入れるようにしています。
――スタッフの方々には、どのように働いてほしいとお考えでしょう。
秋山 自己実現をしてほしいです。“会社のための自分”ではなく、“自分のための会社”だと思っています。自分の望む仕事をするために、うまく会社を使ってほしいですね。独立することを夢見ているスタッフがいるなら応援したいです。また、退職を希望する人がいたときは、「やっぱり専業主婦が合っていた」など前向きな理由であれば、それも応援します。スタッフたちには、会社に縛られず、自由であってほしいですね。
――関さんは、そういった秋山社長の思いを感じることはありますか?
関 そうですね。「自己実現につなげる」という点で、スタッフ一人ひとりの仕事や働き方の希望にしっかりと耳を傾けてくれていると感じます。私はもともとコピーライティングに興味があるのですが、それを上司に伝えたところ、コピーライティングに関するお仕事を積極的に回してくれるようになりました。体制もしっかりと組んでくれるので、安心して仕事に向き合うこともできますし、スタッフが望むキャリア形成を会社がサポートしてくれているのを強く感じています。
スタッフの事情に寄り添った制度を
秋山 以前から実施している「ママインターン(社会人インターン)」は、今後さらに注力したいと思っています。おもに育休中の女性を対象に、弊社スタッフのアシスタント業務やテキストライティングに携わっていただいており、この1年で、約15名のインターンの方にご参画いただきました。期間は3ヶ月~半年ほど。ご参加いただいた方からは「転職活動をするうえで参考になった」「この経験を自社業務に生かしたい」「起業する決心がついた」などの感想をいただいています。インターン卒業直前には、僭越ながら私が1時間ほどメンタリングを行っておりまして、今後のキャリアについて考えるお手伝いをしています。
また、現在東京と島根の2拠点勤務をしているスタッフがいます。これは、スタッフの事情に合わせて、7年ほど前、新たに始めた取り組みです。スタッフがご家庭の事情で実家に帰らなければいけなくなってしまい、「それなら2拠点ワークで働けばよいのではないか」とこの取り組みをスタートさせました。以降、基本的には地元でリモートワークをしてもらい、月1回、1週間ほど東京に滞在し出社するという働き方を継続してもらっています。
弊社の制度のほとんどは、スタッフの事情に合わせてつくられたものです。大企業ではこういった取り組みは難しいかもしれません。しかし、弊社のように社員一人ひとりとコミュニケーションを取れる規模であれば、困ったことに都度対応していくことが可能です。「できない」「前例がない」「大変そう」と後ろ向きに考えるのではなく、とりあえずやってみることが大切だと思っています。やってみてダメだったら、その都度、修正していけばいい。難しく考えず柔軟な思考で、今後もスタッフが働きやすいように臨機応変に対応していきたいです。
1977年生まれ。大学を卒業後、編集プロダクションに入社。その後出版社に転職し、ファミリー向け月刊PC誌『HomePC』の編集部に配属。2002年に独立。雑誌やWebサイト、広告キャンペーンなどの企画制作業務等を手がける。2007年、業務の拡大化に伴い法人化し、(株)Playceを設立した。WOMANʼs VALUE AWARDにて第三回準優秀賞を受賞したほか、Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2022の従業員100名以下の部にて、企業総合部門9位、経営トップ実行力ランキング1位を獲得している。
株式会社Playce ホームページ
https://playce.co.jp/