前編 必要なのは個々人の悩みを知ること
また、近年特に注目されているのが、女性が働きやすく、活躍のできる環境であること。「真の女性活躍とは何か」を考え、推進するWOMANʼs VALUE AWARDにて第三回準優秀賞を受賞したほか、女性リーダー、プロフェッショナルを続々と輩出している企業と、自ら道を切り拓き自分らしく働く女性を讃えるForbes JAPAN WOMEN AWARD 2022の従業員100名以下の部にて、企業総合部門9位、経営トップ実行力ランキング1位を獲得しています。その取り組みの一端について、秋山由香代表取締役と、スタッフの関香里さんにお聞きしました。
スタッフが増えるにしたがいルールを整えていった
そうやって、いただいた案件を手がける中で、「もしかしてフリーでもやっていけるかもしれない」「独立はまだ先の話だと思っていたけれど、よいチャンスなのでは」と思ったんです。その後、5年ほどフリーで活動を続け、縁あって自分の書籍を出版させてもらうことができ、たまたま結婚する機会にも恵まれました。それで、今後どうするのかと考えたときに、10年後、20年後に、自分がフリーという形で、今と同じように一人で仕事をしているイメージができなかったんですよね。一人では手がけられる仕事量や規模にも限界があり、いつか頭打ちになってしまうのではないかなという考えもありました。
そこで、フリーで活動している友人に声をかけて、ユニットを組んで仕事をすることにしたんです。そうして、30歳のときに弊社を設立しました。ただ、その当時はまだ会社というよりも、フリーライターの集団という感じでしたね。就業規則もなく、就業時間も決まっていませんでした。
――もともとフリーでお仕事をされていた方々だからこそ、自立して各々の仕事を行うことが可能だったのですね。
秋山 そうですね。だんだんと仕事が増えてきて、初めて求人媒体を使ってスタッフを募集するぐらいのタイミングで、出社時間やルールを決めました。その後も毎年スタッフが増え、そのたびに必要なルールを整備していったんです。きちんと就業規則をつくったのは設立5~7年目頃ですね。弊社はもともと女性スタッフばかりだったので、特に意識することなく自然と女性が働きやすい環境やルールがつくられていったように思います。
――女性の活躍を意識されていたわけではなく、スタッフの方々の働きやすい環境を整えた結果、外部から評価を受けるほどの職場になっていったのですね。では、関さんは御社に入社する際、どういったことに着目されたのでしょう。
実際に働いてみて感じたのは、圧倒的な風通しの良さです。ホームページに書かれていた通り、ていねいなものづくりをしているのはもちろん、人に対してもていねいで柔らかい方ばかりでした。
――他社でもぜひ取り入れたら良いと思う取り組みはありますか。
関 他社で働く友人の話を聞くと、社長や上司と話す機会が圧倒的に少ないように感じています。弊社では、毎年人事考課が2回行われ、そのタイミングで必ず上司や秋山との面談が行われるんです。自分に足りないスキルをフィードバックしてもらえますし、成長した部分も伝えてもらえるので、良いコミュニケーションになっていると感じています。また、私は秋山と席が近いので、出社のタイミングが合うと、仕事のことだけでなくプライベートのこともよく話しています(笑)。
仕事の面でいえば、案件によってマネジメント層の方がメンバーを調整しているので、毎回同じ人と組むことが少ないように思います。チームの垣根を越えて組んでいる人もいますし、秋山と一緒に仕事をしている社員も多くいます。こうしたことも風通しのよさにつながっているのだと感じますね。ぜひ、多くの企業で取り入れてもらいたいです。
産育休に対して必要な取り組みとは
秋山 子持ちのスタッフが多く、復帰後の働き方がイメージしやすいというのが一つの要因なのではないかと思っています。スタッフたちも産育休後に復職するのは自然なことという認識を持っているんじゃないかなと。私が意識しているのは、復職後の計画をあまり具体的に立てすぎないことでしょうか。
お子さんは、一人ひとり性格が違いますし、子育ての悩みも十人十色です。働き方についての希望も、理想とするワークライフバランスも各々で異なります。事前にあまり綿密な復職計画を立ててしまうと、かえってうまくいかなかったり、プレッシャーになってしまったりすることも少なくありません。ですからいつも「やってみて考えよう」「やりながらチューニングしていこう」と話しています。
――秋山社長ご自身も出産を経験されています。どういった取り組みが必要だと感じられましたか。
もちろんその視点や制度はなくてはならないものですが、産育休を支えるスタッフに業務負荷がかかるのも事実です。そこに対する不公平感や負担感を極力抑えることが重要だと感じています。出産はおめでたいことですから、業務負荷がかかったとしても、なかなか主張できずに悩みを抱えてしまうスタッフもいると思うんです。そのような瞬間、状況、気持ちをキャッチアップして、ママだけでなくすべての社員に寄り添う気持ちを持つことが大事だと思っています。
弊社では、業務を管理するマネジメント層が、なるべく業務負荷が偏らないようにスケジュールや人員配置などをコントロールしています。納期などの都合でどうしてもコントロールが難しいというときは、案件が落ち着いたタイミングでまとまった休暇を取るように提案・調整するなど、できる限りフォローするようにしているんです。大切なのは、制度をつくることや「制度があるから利用してね」というスタンスで待つことではなく、こちらからスタッフたちと細やかなコミュニケーションを取り、個々の悩みを聞いて解決していくこと。私たちもまだまだ到底できているとは言えず、至らない点だらけですが、ルールに縛られない柔軟な発想で、よりよい働き方を模索していきたいなと思っています。
関 実際に産育休を取られた方がいても、私自身はそれほど業務量が増えたとは感じていません。マネジメント層の方が、無理のないように仕事を振り分けてくださっているのだと想像しています。
――現場のスタッフさんが意識されないほど、取り組みが自然と行われているのですね。次回は、産育休からの復職後の取り組みについても詳しくお聞きします。
1977年生まれ。大学を卒業後、編集プロダクションに入社。その後出版社に転職し、ファミリー向け月刊PC誌『HomePC』の編集部に配属。2002年に独立。雑誌やWebサイト、広告キャンペーンなどの企画制作業務等を手がける。2007年、業務の拡大化に伴い法人化し、(株)Playceを設立した。WOMANʼs VALUE AWARDにて第三回準優秀賞を受賞したほか、Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2022の従業員100名以下の部にて、企業総合部門9位、経営トップ実行力ランキング1位を獲得している。
株式会社Playce ホームページ
https://playce.co.jp/