B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

フラット35新商品「【フラット35】リノベ」がスタート

 
glay-s1top.jpg
住宅金融支援機構は今月1日、「【フラット35】リノベ」の取り扱いをスタートした。【フラット35】リノベとは、長期固定金利住宅ローン【フラット35】の借入金利を一定期間引き下げる制度だ。利用者が中古住宅を購入して性能向上リフォームを行う場合、または、住宅事業者により性能向上リフォームが行われた中古住宅を購入する場合に、この制度を利用できる。
 
国土交通省が発表した「中古住宅流通、リフォーム 市場の現状」によると、消費者が中古住宅を購入しない理由として、「新築物件よりも問題が多そうだ」「後から欠陥が見つかると困る」などの理由がある。住宅金融支援機構としては、【フラット35】リノベを積極利用してもらうことで住宅ストックの質が向上し、消費者の中古住宅購入意欲が高まって中古住宅・リフォーム市場が活性化することを期待している。
 
 

中古住宅販売の様々な変化

 
国土交通省の調査には、中古住宅の購入について「思うような間取りにならない」「リフォームの自由度が低い」と感じてしまう消費者の声が紹介されているが、このようなデメリットを解消するサービスを提供し、成功している業者も存在する。
 
リノベーション、中古マンション再生流通事業のパイオニアとして知られる企業、インテリックスは、築 20 年前後の物件を買い取り、構造躯体だけ残して、配管や配線、間取り、内装を含めて再設計。全てを一新した後に販売する方法を展開している。また、ユニホーのように、マンション分譲などを手がけながら首都圏で団地の再生事業に乗り出した例もある。築年数の古い集合住宅を仕入れ、割安な価格で再販売するので経済力の劣る若年層でも住まいを購入しやすく、好みに合わせてリフォームも行える。
 
これらのモデルには、高度経済成長時代に入居した住民が高齢化し、物件も老朽化、近隣の商店街などで閉店が相次ぐといった「団地の空洞化」と、それに伴う問題を解決できる手法として期待が高まる。さらに、新築マンションの販売価格は、人件費の高騰などでなかなか下がらない現状があり、その影響で中古マンションの価格も上昇しつつある。インテリックスやユニホーの手法により、「安い価格でリフォーム可能な部屋が手に入る」となれば、消費者の購買意欲は高まるだろう。
 
また、先駆けること約1年前の2015年11月5日、ヤフーとソニー不動産はインターネットで中古マンションを売買できる「おうちダイレクト」のサービスをスタート。かなめとなるのは「不動産価格推定エンジン」だ。自宅マンションを登録すると、推定成約価格(システム推定価格)がわかるこのサービスは、両社が開発した人工知能システムを採用。売主は仲介業者に頼ることなく、自分の好きな価格でマンションを売り出すことが可能になる。さらに、従来の仲介販売は不動産会社が売主・買主の双方から仲介手数料を受け取る「両手取引」が慣例であったのに対し、「おうちダイレクト」では手数料は買主にのみ発生するため、売主が自分の物件を売却しやすくなっている。
 
 

中古住宅がビジネス拠点に

 
高齢化社会において注目が集まる介護事業の分野でも、中古住宅のニーズが高まっている。バリアフリー環境や生存確認など一定水準以上のサービスを提供する賃貸物件は、「サービス付き高齢者向け住宅」として認定を受けられるため、介護事業者に中古住宅を貸し出したり、介護事業者側が中古住宅を安く購入して事業の拠点としたりする方法も考えられる。
 
住居としてではなく、店舗として中古住宅を購入、リフォームを行うという発想もある。この場合、賃貸のテナントを利用するのとは違い、店舗を自分の資産として保有し続けられる点が大きなメリットだ。そうすれば将来、店舗を移転する際にも「空き店舗として賃貸に出す」などの選択肢が生まれる。
 
筆者自身も大阪郊外の農家を、不動産業者を通さず直接購入し、リノベーションした住宅をオフィス兼自宅としている 。交通の便は良くないものの、十分な広さのオフィスルームを確保でき、インターネットを使って地方在住のハンディを感じることなく仕事が進められている。これらに鑑みれば、中古物件を売却する側も、「住居は住居として販売する」という固定観念を捨て、柔軟な発想でマーケティングを行えるのではないか。
 
 

中古住宅関連市場の今後に期待

 
前掲の「中古住宅流通、リフォーム 市場の現状」には、消費者が中古住宅購入時に重視するポイントとして、「中古住宅の評判、口コミ、Q&Aなどが集約された Web サイト、データベース」「家電量販店やホームセンター、ドラッグストアなど身近な店舗でリフォーム販売・施工業者を紹介してくれる仕組み」がある。いずれも情報技術の革新でかなり実現できる要素だ。「おうちダイレクト」のようなサービスの登場を見ても、仲介業者の存在感が薄くなりつつある時代の流れが、今後、住宅購入に対する消費者の心理的な垣根を低くするのではないか。
 
また、中古住宅を所有する、ないし売る側を見ても、最近は“サラリーマン大家”という言葉が知られるようになり、一般の人による不動産投資も身近になった。高齢化が進めば必然的に、相続などの理由で、空き家となった実家や親の経営していたアパート・マンションの「大家」に急になってしまうケースもある。現在は大家のための確定申告や節税などのアドバイスを提供する会計事務所も増え、大家同士のネットワークづくりも以前より進んでいる。
 
日本では、地方の空き家が増え、空洞化した団地の問題もまだまだ解決されていない。そして、中古住宅・リフォーム市場の活性化は海外ほど進んでいない現状がある。まずは様々な施策を通じて中古住宅の魅力を高めてメリットを底上げし、ぜひ中古住宅を選びたいという人を増やすことが市場の活性化につながるだろう。「【フラット35】リノベ」がその促進剤になるよう期待したい
 
 
 
(ライター 河野陽炎)
 
(2016.10.5)

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事