B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
芸能界で生きていく術を与えてくれた萩本さんの教えの中で、小堺さんがおもしろいなと思ったのは、「自分ができる自信がないことを振られたら、他人よりも先に一番にやれ」というものだそうだ。そこにはどんな真意があるのか、聞いてみた。
 

自信がなくても振られたらすぐに応える

 
例えば、カラオケで一番に歌うことになったときに、歌が苦手だから逃げてしまうと、後になるほど周囲の期待が高まってしまいますよね。だから、振られたらすぐにそれに応えるようにする。お笑いも同じで、常にそういう心構えでいると、どんなときにもアドリブでスッと対応できるようになるんです。
 
そういう教えで育ってきたので、僕は約束事があって行うお笑いよりも、共演者とその場の掛け合いでつくり上げていく笑いが好きですね。萩本さんと坂上二郎さんのコント55号ほどではないけれど、関根さんと僕のコンビはそこに近いところまで行けたんじゃないかと思っています。打ち合わせなしで掛け合いができていましたから。そのほうが事前に決めごとをつくるよりも楽ですしね(笑)。
 
 
取材中に印象的だったのは、小堺さんが自分の苦労話をほとんどせず、「運がよかった。人に恵まれていた」と繰り返していたことだった。そんな小堺さんに最後は、好きな仕事をするためのアドバイスをいただいた。
 

チャレンジすれば後悔も少ない

 
ブロニー・ウェアという方の『死ぬ瞬間の5つの後悔』という本によると、病気などで助かる見込みが少なくなった患者さんの多くが、「もっと好きなことやればよかった」と後悔するそうです。世の中で好きな仕事ができている人って、全体の何割くらいいるんでしょうか。日本では終身雇用制も崩壊し、将来の設計が立てづらい世の中ですから、やりたくない仕事でもやらなければならないという状況の方もいると思います。でもやっぱり、本当にやりたいことに強い思いがある人は、チャレンジすると思うんですよ。
 
glay-s1top.jpg
チャレンジして道が開けるかどうかはわかりません。でも、挑戦した結果であれば、やらないよりは後悔の気持ちは少なくなるんじゃないでしょうか。僕の場合は他人が送ったハガキによってこの世界に入ってますから、相当他人まかせです(笑)。でもその後は、「3年間は頑張ろう」という決意でやってきたからこそ今がある、とも言えるんじゃないかな。
 
僕は基本的に好きなことをできているから、恵まれていると思います。しかも、それでみんなに笑って喜んでもらえるんですよ。いい舞台ができるとね、観客の皆さんも、とてもいい顔をしてくれるんです。そんな舞台でのカーテンコールは、すごく嬉しい瞬間ですね。そういったリアクションや笑顔をいただけるのが、この仕事のやりがいであり、楽しみです。
 
今度、若い人たちと一緒に舞台公演をします。僕が一番年上なので、みんなと一緒に楽しみながらも、萩本さんたちに教わったようなことを伝えていけたらいいですね。今後はそうやって、若手の人たちにこれまでの経験を伝えていくような活動にも力を入れていきたいです!
 
(インタビュー 中野夢菜/文 佐藤学/写真 Nori/ヘアメイク 武本萌/スタイリスト 森永ゆか)
 
 
glay-s1top.jpg
小堺一機 (こさかい かずき)
1956年生まれ 千葉県出身
 
1977年5月、TBS『ぎんざNOW』の「素人コメディアン道場」の17代目チャンピオンに輝き、芸能界デビュー。大学卒業後の1979年4月、「勝アカデミー」の一期生として入学し、1980年3月に卒業した後、浅井企画に所属する。1982年、テレビ朝日の『欽ちゃんのどこまでやるの!』で、関根勤氏とコンビを組んだ「クロ子とグレ子」で人気を博し、1984年からはフジテレビのトークバラエティ『ライオンのいただきます』以降、2016年の『ライオンのごきげんよう』放映終了まで、31年以上、お昼の顔として司会を務めた。現在もドラマバラエティ、ラジオ、舞台など幅広いフィールドで活躍を続けている。
 
12月4日(日)有楽町よみうりホールにて関根勤氏と共に
「コサキン40周年DEワァオ!」イベント開催。

詳しくは、TBSラジオイベントページで。
https://www.tbsradio.jp/event/58967/
 
 
(取材:2022年8月)