目の前の作品に全力で取り組み
女優として成長し続ける
女優 倉科カナ
2009年のNHK連続テレビ小説『ウェルかめ』のヒロインに抜擢されて以来、テレビドラマや映画、舞台など垣根を問わず活躍を続けている女優の倉科カナさん。5月11日からは世田谷パブリックシアターほか全国各地で上演される舞台、『お勢、断行』で主人公役を務める。江戸川乱歩が生み出した「稀代の悪女」と呼ばれるお勢を演じるにあたり、演出家の倉持裕氏をはじめ、キャストやスタッフと共に役柄を深めていきたいと語ってくれた。
独特な世界観に迷い込んでほしい
『お勢、断行』で私が演じるのは、「稀代の悪女」と呼ばれるお勢です。この作品は2017年に上演された舞台、『お勢登場』の次のシリーズとなります。『お勢登場』では、お勢は殺人を犯していますし、れっきとした悪人なんです。でも、お勢にはお勢なりの悪に対する美学のようなものがあります。
善と悪の境界線って、実はとても曖昧だと思うんです。この作品では、その善悪の天秤が揺れ動くさまを感じられるのではないでしょうか。登場するキャラクターたちは、お勢以外も悪人ばかりです。その中で、お勢はいつも退屈していて刺激を求めている印象ですね。観てくださる方が、お勢の悪に対する美学や、善悪の境目についてどのように感じるのか、私も想像がつかないんですよ。どのような反応をいただけるのか楽しみです。
演出の倉持裕さんと一緒に作品づくりをするのは、今回が二度目です。倉持さんはキャストの良さを最大限に生かしてくださる方なので、安心して飛び込んでいきたいと思っています。「こう演じなければダメ」と型にはめ込むのではなく、キャストの個性を役に投影して、昇華させてくれるんですよ。この方なら、良さを引き出してくれるという安心感があります。
倉持さんはキャストのことをしっかりと見てくださっていて、「こういうところが良かった」「こうしたらもっと良くなるんじゃない?」とたくさんのアドバイスをくださいます。スタッフの方々も素晴らしい方ばかりですし、プロデューサーさんも「ここはおもしろくないね」としっかりと意見してくださいます(笑)。一緒に演じるキャストの方々も、本当に尊敬している方ばかり。心強いみなさんに力をお借りして、この作品や役柄を深めていきたいですね。
江戸川乱歩が創り上げたお勢の世界観と、倉持さんの演出によって、今まで見たことのない世界観が構築されていると思います。劇場に来てくださる方は、その世界にトリップできるんじゃないでしょうか。江戸川乱歩らしい湿度のある、妖艶な世界に、ぜひ迷い込んでいただけたら嬉しいです。