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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
「報道ステーション」の一員となったことで、テレビ業界でコメンテーターとして仕事をするための基礎を教えてもらったと語る福田さん。詳しくお聞きすると、想像以上に多くのことに配慮しながらコメントをしなければいけないのだとわかった。
 
 

どういった層に伝えるのか意識する

 
「報道ステーション」では、ほかにも多くのことを学びました。その一つが、コメントする際は結論から喋る必要があるということ。番組内で僕のコメントに与えられている時間は限られています。その中で結論をはっきりさせておかないと、視聴者に誤解を招くことがあるんですよ。起承転結をつけて結論を最後に言う場合も、どれくらいの時間が与えられているのかしっかり把握し、ちゃんと結論を言い切る時間を残しておかないといけません。そのための、段取りの重要さを知りましたね。
 
また、どの番組においても、視聴者がサッカーに対してどれだけの知識があるのかは意識しています。例えば、「オフサイド」というルールがあります。そのルール名を言っただけで見ている方は理解できるのか、それともルールの内容を説明する必要があるのか。そういった前提がどのラインにあるのか把握する必要があります。基本的には、専門用語は使わないようにしていますね。
 
ただ、サッカー専門チャンネルで解説を行うこともあります。そういった番組を見ているのはコアなファンです。その場合は、むしろ専門用語は使ったほうが良いですよね。どういった層に向けて放送しているのか、どれくらいコアなコメントをするべきなのか、そのバランス感覚が大切だと思っています。
 
スポーツに対する基礎知識は、時代によっても変化しています。僕が現役の頃は、サッカーはまだまだマイナーなスポーツでした。でも、今では多くの方に認知されているでしょう。どれだけの人に知られているのか、ということもコメントを残すうえでは意識しなければいけません。
 
 
常に試行錯誤しながら仕事に取り組んでいる福田さん。そのモチベーションはどこにあるのだろうか。
 
 

仲間と共鳴する感覚があった

 
僕にとってのモチベーションは、サッカーが好きという以外にありません。サッカーの奥深い魅力を、より多くの方にお伝えしたいんです。サッカーの試合観戦は、ボールの行方を追いかけて見ることが多いですよね。そして、ボールを持った選手が良いプレーをすると盛り上がる。でも実は、ボールを受け取る前のプレーが素晴らしいことも多いんです。
 
知識が深まると、そういったプレーを楽しむこともできます。サッカーの試合は90分間。その中で1人の選手が試合でボールに触れている時間は2~3分と言われています。だから、ボールを持っていないときのプレーも楽しめたほうが良いですよね。そういった観戦の仕方を提案していきたいと思っています。
 
実際に試合を観に行ってほしいとも思いますね。スタジアムで観戦することでしかわからないプレーもありますから。現役時代に、何度か「自分のイメージどおりにゴールを決められた」と思ったことがあります。そのときは、チームメイトや駆けつけてくれたサポーターの方々と共鳴しているような感覚になるんです。言葉にすると安っぽくなってしまって、その感覚の素晴らしさをうまく伝えられないんですけどね。
 
ただ言えるのは、どれだけつらいことがあっても、その感覚をまた味わいたいと思ってサッカーを続けていたということ。これは、仲間と共に戦うチームスポーツでないと経験できない感覚だと思います。引退してからは、そういった感覚を得たことはありませんからね。あの痺れるような空間は、ピッチにしかないのでしょう。