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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

“魅せる格闘技”の申し子が語る
おのれを体現していくための哲学

 
 

桜庭和志がレストラン経営者だったら

 
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自分を信じて継続する力――桜庭選手の言葉を総合すると、孤独な戦いの中で強い自分を保つための秘訣は、そこにあるように思えた。
「仮に」 という前提で桜庭に聞いてみたかったことがあった。「仮に、あなたが格闘家ではなく実業家だったとしても、同じ考え方で取り組むと思いますか?」 目の前の桜庭は少し考えて、「経営者に当てはまるかどうかはわからないんですけど・・・」 と、言葉を選びながら続ける。


「やはり、いいことに関しては継続することは大事なんじゃないですかね。たとえばぼくがレストランをやるとしたらどうするか。メインのものはきっちり置いておいて、あとはおまけとして考えて、様子を見ながらやるとか・・・・・・。単純ですけど、美味しいものは残して、美味しくないものは外して別のメニューを入れるかな。メインの美味しいものは自信を持って出し続ける。そういう考え方をすると思いますよ。ただし、自信満々というのはいけないと思いますけどね」

プロの格闘家は体が資本だ。毎日、きちんとトレーニングを重ねていなければ途端に体が重くなり、思うように動かなくなる。だから毎日体を動かし続けて、コンディションも崩さず、次の試合の準備は万全だったとしよう。対戦前に自信を持たなくていいとはどういうことか?

「自信だけがメンタルを支配してしまうようになると危険ですね。格闘技の試合は自信満々でいけばいくほど、やられてしまうことが多いんです。これはビジネスの世界でも同じかもしれませんが、自信がありすぎて隙ができちゃうんですよね。どこかに危機感を持っていないといけない。危機感を持ったうえで継続する。それが大事なんだとぼくは思っているんですよ」
 
 

宿敵が教えてくれた真実

 
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ワークウェアブランド「Jawin」のイメージビジュアルもつとめる
今年、桜庭選手は41歳になった。不惑を迎え、都内に自分のジムを設立してからは若手にアドバイスをする機会も多くなってきた。だからこそ、強く意識していることがある。たとえば若手が 「(練習が) きつい」 と口にすると、桜庭選手はおどけた口調で指摘する。「練習がきついのは当たり前です、それでも一生懸命やるのが大人ですよね」。このとき彼は決して真剣さを前面に出すことはない。必ずユーモアを装うのである。
かつて桜庭選手は、自分の状況に嫌気がさしたときがあった。しかし練習は継続しなくてはならない。そこで手を差し伸べてくれたのが、宿敵・シウバ選手が所属するシュートボクセ・アカデミーの会長、フジマール・フェデリコ氏だった。2005年6月に開催された 『PRIDE GRANDPRIX 2005』 の直後、フジマール氏が弟子のライバルにあたる桜庭に 「ブラジルで練習するといい」 と招いてくれたという。
「昨日の敵は今日の友」 という言葉があるが、フジマール氏も、当のライバルであるシウバ選手も、桜庭選手を一人の格闘家としてリスペクトして迎え、細やかな気遣いを見せてくれたという。

「飛行機でブラジルについたとき、フジマールが空港まで迎えに来てくれて、言ってくれたんです。『私はブラジルのお父さんだから、何でも言ってくれ』 と。シウバにしても、ぼくは敵なんですけど、とにかく気を遣ってくれる。試合前の会見の日も、裏で(会見場の控室で) 顔を合わせたときに、『ブラジルへ来たらどうだ?』 って誘ってくれた。実際に、ブラジル人の気質はぼくにすごく合っていて、練習ではすごく集中しているけど騒ぐところでは騒ぐ。なんだかね、部活みたいなノリなんですよ。フジマールやシウバがぼくのことをちゃんと見てくれたうえでその環境に誘ってくれたことが分かって、嬉しくて、ありがたかった」

彼が若手を指導するときに必ずユーモアを織り交ぜるのは、その経験があるからだろう。見ている人は見ている。それでいい。
 
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格闘家は常に一人でリングに上がる。そのときに、リングの上で支えてくれるものは何か。地道な練習を積み重ね、本番で出すべきものを出していく強さ。勝利をもぎとり、観客の心をももぎとっていく熱いマインド。その姿から何かを感じとってくれる観客、ライバルたち、そして周囲の支えだ。
それら自分を取り巻くすべての要素に感応し、自らの身体で表現しつづけていくことこそ、格闘家・桜庭和志の不退転の哲学というわけだ。
 
 

(インタビュー・文 新田哲嗣 / 写真 スズキ シンノスケ)

 
 
 
  桜庭和志オフィシャルサイト  

  総合格闘技ジム  
Laughter7
〒140-0013東京都品川区南大井6-3-8 ガーデニア大森 2F
http://www.laughter7.com/
 
 
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