日本を発信できる役者を目指して
2つ目は、その翌年にNHKの連続テレビ小説『ちりとてちん』に出演した際に演じた落語家、徒然亭草々の役です。その役を演じた時に、落語って一人語りで景色から登場人物と、何から何まで想像力を利用して話芸でつくるものだと肌で知って。それって究極のエンターテインメントだと感じたんです。それに、役を演じるうえでいろいろと勉強するうちに、やっぱり日本人の役者である以上は、日本についてもっと知っておく必要があるとも感じました。僕は以前から、海外の人に日本はどう思われているのかとか、日本について質問された時に、ちゃんと答えられるような人間になりたいと思っていて、海外留学に行ったこともあるんです。だから改めてこの作品と出合って、馬に乗れて日本舞踊もできる役者を目指して基本的な素養を身に付けたうえで、日本の文化や良さを発信できる人になりたいと思いました。それ以来、落語だけじゃなくて狂言や能、歌舞伎も見るようにしています。
苦労を乗り越えた経験は血となり肉となる
そういう、「一体どこからどうやって手をつけよう」という役や、「何でこの役が俺に来たんだろう」っていう役はたまにあって悩むんですけど、いっぽうで嬉しい気持ちもあるんです。それまでの自分の経験がアテにならない分、勉強したり演出家さんと話し合ったり試行錯誤する必要があって、それが全部、血となり肉となるわけですから。そうやって苦労や悩みを乗り越えながら、役を演じるのが好きです。