会社を成功させた中小企業の経営者の方であれば、無事に退職金を受け取り、大きな財を築いていらっしゃるかもしれません。そうなると、考えなければならないのは相続の問題です。せっかく築いた財産は、お子様などにしっかりと遺したいと思うのが当然でしょう。そして、相続の対策を考えるときには、必ずと言っていいほど生命保険が活用されます。そこで、今回のコラムでは相続にスポットをあて、どのように生命保険が活用されるかを考えていきたいと思います。
生命保険の非課税枠の活用
それでは、生命保険を活用する相続の対策としてはどのようなものがあるでしょうか。まず考えられる方法は、現金を一括で保険に換えるという方法です。つまり、1000万円の現金で1000万円の一時払終身保険を買うということです。それでは全く意味がないのでは?と思われるかもしれませんが、生命保険では、法定相続人×500万円までは非課税という制度があります。よって先の例で考えると、1000万円を現金で相続した場合は課税対象、1000万円を生命保険で受け取った場合は非課税と、同じ1000万円でも手元に残る金額は大きく変わってきます。
生前贈与で相続税を減らす
また贈与の場合、相続税の基礎控除額と似た考え方で、受け取る側1人あたりにつき毎年110万円の非課税枠があります。つまりお子様が3人いたら、毎年330万円まで非課税でお子様に資産を渡すことができ、これを数年にわたり繰り返すことで、相続にかかる税金を少しずつ減らすことができるのです。
(※計画された毎年の贈与は一括贈与とみなされ、一括して贈与税がかかってしまう場合があるため注意が必要です。毎年贈与契約書をきちんと取り交わす、申告して少額でも贈与税を払っておくなどの対応が必要なので、贈与による対策をする際は税理士に事前に相談したほうが良いでしょう。)
相続の課税対象が億を超えるような方の場合は相続税率が40%以上になるため、非課税枠にかかわらず、贈与税率がそれ未満で済む金額─例えば、課税対象200万円以下であれば10%で贈与をすれば、それだけで十分に相続税の節税につながります。そして、さらに生命保険を活用することでもう一工夫することが可能です。その詳細は次回のコラムでご紹介したいと思います。
※ 記事は2018年11月現在時点の税法上に基づく見解です。
vol.8 相続で活躍する生命保険
著者プロフィール
八木 照浩 Yagi Akihiro
Ever Side 八木照浩保険代理店FP事務所 代表
経 歴
慶應義塾大学経済学部で国際金融論を専攻。卒業後は国内の生命保険会社で企業保険や個人保険の営業、法人リスクコンサルティングを行う。総合保険代理店に転職し、複数の生命保険会社の商品を手掛け、ノウハウを蓄積する。その後、培った知識と経験を活かすため独立を決意。生命保険に特化した総合保険代理店FP事務所Ever Sideを開業した。日本FP協会東京支部会員。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®(日本FP協会)、トータル・ライフ・コンサルタント(生保協会認定FP)、相続アドバイザー、コンプライアンス・オフィサー。
オフィシャルサイト