日本の所得税の仕組み
これらの所得は各計算方法で算出され、すべてを合算し、その合算された所得からお支払いする所得税が決定します。
日本では所得が多くなるほど税率が上がる累進課税制度が導入されています。つまり、所得が増えるほど所得税の負担も増える仕組みです。
2018年現在は、5%⇒10%⇒20%⇒23%⇒33%⇒40%⇒45%と、所得に応じて税率が上がっていきます。
この所得が増えれば税率も上がるという話は、多くの方が知る事実でしょう。それであれば、退職金をたくさんもらったとしても、結局は所得税を多く払うのでは? と疑問に思う方もいらっしゃると思います。確かにその通りです。しかし、退職金を受け取った時の所得(退職所得)は他の所得と比べると、かなりの優遇措置が設けられています。
退職所得の優遇措置
しかし、退職所得は違います。退職所得は「総合課税」でなく、「分離課税」のため、一から計算できる分、税率が必要以上に高くなることを防いでくれるのです。
2つ目の優遇措置は、「退職所得控除」が大きい点です。退職所得を計算する際、収入から退職所得控除を引くことができ、これがなかなかの大きな力となってくれます。この退職所得控除は勤続年数によって決まり、計算方法は以下の通りです。
例1)勤続年数が20年以下の場合
40万円×勤続年数
※80万円に満たない場合は80万円として計算
例2)勤続年数が20年超の場合
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
――つまり、勤続年数が30年と仮定した場合の退職所得控除は800万円+70万円×(30年-20年)=1500万円となり、この金額を収入から差し引くことができるのです。
そして3つ目の大きな優遇措置、それは収入から退職所得控除を差し引いて出た金額をさらに半分にできることです。具体的な例でご説明します。
例)勤続30年、退職金2000万円(源泉徴収前)の方の場合
(2000万円-1500万円)×1/2=250万円
――この250万円がこの方の退職所得となります。
計算式は割愛しますが、250万円の退職所得にかかる税金は15万5702円となります。2000万円を受け取り、支払う所得税が15万5702円という数字をみれば、退職所得がいかに優遇されているかがおわかりいただけると思います。
上記の優遇措置を受けるためには、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」という書類を提出、もしくは確定申告をする必要がありますが、今回のコラムの趣旨と離れるため、詳しいことは割愛します。
前回は法人側、今回は個人側の退職金のメリットを挙げました。人生100歳時代と呼ばれる現代社会で、老後のセカンドライフ資金の準備は必要不可欠です。会社員と異なり、中小企業の経営者の方は自ら退職金を積み立てなければなりません。まだ退職金積立をしていない方は、前回と今回のコラムが、その第一歩としてきっかけになれば大変光栄です。
※ 記事は2018年7月時点の税法上に基づく見解です。
vol.7 生命保険を活用した節税対策と退職金積立(その2)
著者プロフィール
八木 照浩 Yagi Akihiro
Ever Side 八木照浩保険代理店FP事務所 代表
経 歴
慶應義塾大学経済学部で国際金融論を専攻。卒業後は国内の生命保険会社で企業保険や個人保険の営業、法人リスクコンサルティングを行う。総合保険代理店に転職し、複数の生命保険会社の商品を手掛け、ノウハウを蓄積する。その後、培った知識と経験を活かすため独立を決意。生命保険に特化した総合保険代理店FP事務所Ever Sideを開業した。日本FP協会東京支部会員。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®(日本FP協会)、トータル・ライフ・コンサルタント(生保協会認定FP)、相続アドバイザー、コンプライアンス・オフィサー。
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