I 理想の場所を求めて...ケースA
その後、相続税の評価上、居住用宅地については、8階建のビルのワンフロアーに住んでいても敷地全体が80%の減額対象になる改正のことを聞き、相続税負担額の余りにも巨大な違いに、再度赤坂の自己所有ビルの一室に引越し。ところが昨年平成22年の法改正で「居住用の部分と貸付用の部分があるマンションの敷地等については、それぞれの部分ごとに按分して軽減割合を計算する」と改正されてからは、さあ大変。
孫夫婦家族の教育も考え、一戸建てでかつ地価がそこそこ高い家探しです。小規模宅地の評価減の減額効果の余りにも大きな格差を取り戻すべく、家探しですが、まだまだ探せていません。
建物完成前に相続発生してしまったら更に悲劇。建物が完成すれば建物の固定資産評価額が相続税の評価のベースとなりますので、2億円の豪邸でも評価はせいぜい6千万円強。それが建物完成前で1億6千万円ほど支払った段階で相続発生となると、まだ建物完成前なので前払金としての1億6千万円の7掛けの1億1200万円の評価となってしまいます(建築中の家屋の評価)。・・・面積按分して軽減割合を計算することの不合理さは、読売新聞の 「論点」で指摘、それがきっかけで、テレビ朝日の 『ザ・スクープ(司会:鳥越俊太郎氏)』 の生番組 「検証!相続税地獄」にゲスト出演させていただいたのも、いい思い出となりました。
II 理想の場所を求めて...ケースB
しかし注意が必要です。老人ホームへの入所により空家となっている建物の敷地についての小規模宅地の評価減の特例を受けることができるかどうかが問題です。老人ホームが居住の用に供する(生活の拠点である)か否かの判断は、以下の4要件を満たすか否か、です。
従って、特別養護老人ホームにいる場合の、留守宅の土地は小規模宅地の評価減の対象として認められるでしょう。
港区の高級住宅街に住んでいる私の税務のクライアントは終身利用権付き老人ホームであったため、小規模宅地の評価減が受けられそうもありません。そのような買い物をするときは事前に相談していただきたいのです。しょうがないから、60歳近くなる息子夫妻を老人ホームに送り込むか、なんて、半分冗談ともつかない話をしています。
終身利用権を持たないことが、空家となっている自宅の小規模宅地の評価減の要件となっていますが、終身利用権の取得は単に死に場所の確保であって、居住用資産の取得と同列に考えるのはおかしいと思いませんか?
III 理想の場所を求めて...ケースC ―老後のエリートになるために―
さて、漫画 『サザエさん』 の時代の磯野家は息子夫婦と同居でした。こんな文化は、都会では今ほとんど残ってません。「娘夫婦と同居する。」 これはまだ残っている文化ですが、それでも2世帯住宅。長寿化で、介護を家族に期待したら、老々介護になってしまう。そこで、そこそこ、お金を持っている人たちは、最後は老人ホームに入る。 では老後のエリートになるためには、どうすればよいのか?
自立型の住居の場合と長期介護型の住居の場合とで入居費用が異なるようですが、伊豆半島のある長期介護型の住居の入居一時金は70歳‐79歳で5000万円。80歳以上3400万円。二人入居の場合は、1600万円を加算(配偶者のみ) だそうです。
執筆者プロフィール
渡辺俊之 Toshiyuki Watanabe
公認会計士・税理士
経 歴
早稲田大学商学部卒業後、監査法人に勤務。昭和50年に独立開業し、渡辺公認会計士事務所を設立。昭和59年に「優和公認会計士共同事務所」を設立発起し、平成6年、理事長に就任(その後、優和会計人グループとして発展し、現在70人が所属)。平成16年には、優和公認会計士共同事務所の仲間と共に「税理士法人優和」(事業所は全国5ヶ所)を設立し、理事長に就任。会計・税務業界の指導者的存在として知られている。東証1部、2部上場会社の社外監査役や地方公共団体の包括外部監査人なども歴任し、幅広く活躍している。
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