そして、支部の下に更に分会があるケースも多いのです。このような法人にも、決算書に表れない、すなわち渡し切りになっているお金 (たとえば支部交付金等) が存在するケースを見かけます。そしてそのお金が残ってしまうのです。
公益法人制度改革を受け、全組織の結合計算書を作るところが増加していますが、本部の計算書にオンバランスしていない資金が結構あるものです。本部の下の支部の、またその下の分会までいったら、どのくらいの埋蔵金があるんでしょう?
まあ多くの組織がそうかもしれませんが、オンバランスしていても、活動が不活発であればあるほど本部から交付された資金が留保されていき、結構な資金が滞留しているんです。これらも埋蔵金と言って差し支えないでしょう。
使われている以上は埋蔵金とは言えませんが、その団体等のお金はその法人が決算上も受け入れるべきものなのか、別人格のものとすべきなのか、判別の難しいものがあるのも事実です。
5、霞が関埋蔵金
最近の新聞でも、基礎年金の国庫負担率50%を維持するための財源として、鉄建機構の剰余金や外国為替資金特別会計の剰余金がクローズアップされたばかりです (産経ニュース記事及び参院議員浜田まさよし氏サイトより)。
特別会計は国が特定の事業を営む場合、あるいは特定の資金を保有してその運用を行う場合、その他特定の歳入をもって特定の支出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律をもって特別会計を設けることができるんです。
外国為替資金特別会計の場合、ここ6年ほど為替介入もなく、また決算上の不足を補足するための使用実績は昭和34年度、35年度の2回だけということから、20兆円といわれる金額が 「埋蔵されている!」 と目についてしまうわけですね。
公益法人の特別会計のところでも触れたように、埋蔵金問題の根源は特別会計にあると考えています。そしてそのまた根源は、予算準拠主義にもとづく予算内決算にあります。(本誌22年2月号・3月号参照)
6、本当の埋蔵金(業者預け金)
新公益法人会計では、予算書は内部管理事項とされ、財務諸表の体系からは外れました。そして予算準拠主義にもとづく予算内決算の考え方にも変化が見えはじめました。この新しい考え方にもとづいた会計処理規定の雛型も作成中で、私が編集代表をしている、加除式の3部作 『一般・公益 社団・財団法人の実務 ―法務・会計・税務―』(新日本法規出版・編集代表渡辺俊之) の追録版において発表する予定です(現在原稿執筆中・平成23年3月頃出版予定)。
7、徳川埋蔵金伝説
埋蔵された額はおよそ360万から400万両と言われていますが、この額の根拠は、勝海舟の日記に 「軍用金として360万両有るが、これは常備兵を養う為の金で使うわけにいかない」 と記載されていたところからだそうです。
また、使途や目的を特定された資金(例えば特別会計や、特定目的引当資産等) については、当然に他に流用できませんし、取り崩しにも制約がありますから、結果として溜めこまれてしまう。そして徐々にいわゆる埋蔵金と言われても仕方がないお金ができてしまう。
ですから眠ったままの、鉄建機構の剰余金や外国為替資金特別会計の剰余金が20兆円もあることが解ると、事業仕分等の影響もあるんでしょうが、「他の目的には使わせない!!」 と言い張っても、「こっちに使わせろ!」 と、当然なります。一般企業はお金に色は付けていません。「お金に色は付けないほうが良い!!!」 これが私の、公会計や公益法人会計に長年関与してきた職業会計人としての偽わらざる心境です。
執筆者プロフィール
渡辺俊之 Toshiyuki Watanabe
公認会計士・税理士
経 歴
早稲田大学商学部卒業後、監査法人に勤務。昭和50年に独立開業し、渡辺公認会計士事務所を設立。昭和59年に「優和公認会計士共同事務所」を設立発起し、平成6年、理事長に就任(その後、優和会計人グループとして発展し、現在70人が所属)。平成16年には、優和公認会計士共同事務所の仲間と共に「税理士法人優和」(事業所は全国5ヶ所)を設立し、理事長に就任。会計・税務業界の指導者的存在として知られている。東証1部、2部上場会社の社外監査役や地方公共団体の包括外部監査人なども歴任し、幅広く活躍している。
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