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コラム 一職業会計人の "軒昂奉仕" vol.12 埋蔵金はなぜできるのか? 一職業会計人の "軒昂奉仕" 公認会計士・税理士

コラム
(3)支部会計
 全国的な活動をしている公益法人は、様々な形の支部を有しています。完全に同一法人の支部として機能し、会計的にもすべての支部を結合して一体で決算を行っている法人は、案外少ないのかもしれません。たとえば、事業計画や事業予算の立案も支部が行い、人事権や財産処分権そして監査権限も支部が持っているような、いわば各支部が半ば独立した形態をとっている法人。連合会形式でそれぞれの支部は完全に別人格にされている法人。支部と言っているものの、実態は全く別の組織の一部として活動している法人・・・etc。支部の実態は実に多様です (その多様性については拙稿 「公益法人等における支部会計の現状と問題点」 参照)。
そして、支部の下に更に分会があるケースも多いのです。このような法人にも、決算書に表れない、すなわち渡し切りになっているお金 (たとえば支部交付金等) が存在するケースを見かけます。そしてそのお金が残ってしまうのです。
公益法人制度改革を受け、全組織の結合計算書を作るところが増加していますが、本部の計算書にオンバランスしていない資金が結構あるものです。本部の下の支部の、またその下の分会までいったら、どのくらいの埋蔵金があるんでしょう?
まあ多くの組織がそうかもしれませんが、オンバランスしていても、活動が不活発であればあるほど本部から交付された資金が留保されていき、結構な資金が滞留しているんです。これらも埋蔵金と言って差し支えないでしょう。
 
(4)研究会
 公益法人はその公益性ゆえに、学術団体の活動のお世話をしたり、業界団体の活動のお手伝いをさせられたりしています。また、学者グループの研究活動の資金等の管理もする羽目になっています。これらは、直接的に法人の会計と関係ない場合は 「人格なき社団」 の活動として税務署へ届け出られ、運営されているケースもあります。従って、実態としては公益法人の活動資金ではなく、この 「人格なき社団」 の活動資金と言えます。これも場合によってはかなりの金額になっています。
使われている以上は埋蔵金とは言えませんが、その団体等のお金はその法人が決算上も受け入れるべきものなのか、別人格のものとすべきなのか、判別の難しいものがあるのも事実です。
 
 

5、霞が関埋蔵金

 
 霞が関埋蔵金という言葉がクローズアップされて久しいですね。まあこれは国の一般会計とは別の特別会計 (企業特別会計1・保険事業特別会計7・公共事業特別会計1・行政的事業特別会計4・資金運用特別会計2・その他特別会計3・平成22年度合計18) があり、そのうち資金特別会計の中に、財政融資資金特別会計 (財融特会) と外国資金特別会計 (外為特会) とがあります。この中に、埋蔵金と称される多額の資金が眠っていると言われているんです。
最近の新聞でも、基礎年金の国庫負担率50%を維持するための財源として、鉄建機構の剰余金外国為替資金特別会計の剰余金クローズアップされたばかりです (産経ニュース記事及び参院議員浜田まさよし氏サイトより)。
特別会計は国が特定の事業を営む場合、あるいは特定の資金を保有してその運用を行う場合、その他特定の歳入をもって特定の支出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律をもって特別会計を設けることができるんです。
外国為替資金特別会計の場合、ここ6年ほど為替介入もなく、また決算上の不足を補足するための使用実績は昭和34年度、35年度の2回だけということから、20兆円といわれる金額が 「埋蔵されている!」 と目についてしまうわけですね。
公益法人の特別会計のところでも触れたように、埋蔵金問題の根源は特別会計にあると考えています。そしてそのまた根源は、予算準拠主義にもとづく予算内決算にあります。(本誌22年2月号3月号参照
 
 

6、本当の埋蔵金(業者預け金)

 
 地方公共団体の会計にまつわる新聞報道によると、地方公共団体等が物品やサービスを購入する際、使いきれない予算を消化するために 「預け金」 と称して納入業者へ資金を留保していた事件が多発しています。業者預け金でGoogle検索しただけで、数えきれないくらいの事件報道がなされています。そうです! 諸悪の根源は予算準拠主義に基づく予算内決算にあるのです。
新公益法人会計では、予算書は内部管理事項とされ、財務諸表の体系からは外れました。そして予算準拠主義にもとづく予算内決算の考え方にも変化が見えはじめました。この新しい考え方にもとづいた会計処理規定の雛型も作成中で、私が編集代表をしている、加除式の3部作 『一般・公益 社団・財団法人の実務 ―法務・会計・税務―』(新日本法規出版・編集代表渡辺俊之) の追録版において発表する予定です(現在原稿執筆中・平成23年3月頃出版予定)。
 
 

7、徳川埋蔵金伝説

 
 江戸城無血開城の時代にさかのぼる徳川埋蔵金伝説は、テレビ放映をきっかけに有名になりました。幕府再興の軍資金を隠匿しているはずだとして小栗上野介が疑われたりしています。当時財政難に喘いでいた明治新政府としては、幕府御用金を資金源としたかったようで、そこから埋蔵金探しが始まり、いまだにそれを信じて探している人がいるというから驚きです。
埋蔵された額はおよそ360万から400万両と言われていますが、この額の根拠は、勝海舟の日記に 「軍用金として360万両有るが、これは常備兵を養う為の金で使うわけにいかない」 と記載されていたところからだそうです。
 
 
 とまあ、いろいろな埋蔵金を見てきて思うこと・・・。
 
「人間の欲望にはキリがない」。これにつきますね。誰でも万が一の時には備えておきたいんです。余分なお金が突然入ってくると、派手に使いまくる人もいますが、別の財布にしまっておきたいというのも人情です。
また、使途や目的を特定された資金(例えば特別会計や、特定目的引当資産等) については、当然に他に流用できませんし、取り崩しにも制約がありますから、結果として溜めこまれてしまう。そして徐々にいわゆる埋蔵金と言われても仕方がないお金ができてしまう。
ですから眠ったままの、鉄建機構の剰余金や外国為替資金特別会計の剰余金が20兆円もあることが解ると、事業仕分等の影響もあるんでしょうが、「他の目的には使わせない!!」 と言い張っても、「こっちに使わせろ!」 と、当然なります。一般企業はお金に色は付けていません。「お金に色は付けないほうが良い!!!」 これが私の、公会計や公益法人会計に長年関与してきた職業会計人としての偽わらざる心境です。
 
 
 
 
 

 執筆者プロフィール 

渡辺俊之 Toshiyuki Watanabe

公認会計士・税理士

 経 歴 

早稲田大学商学部卒業後、監査法人に勤務。昭和50年に独立開業し、渡辺公認会計士事務所を設立。昭和59年に「優和公認会計士共同事務所」を設立発起し、平成6年、理事長に就任(その後、優和会計人グループとして発展し、現在70人が所属)。平成16年には、優和公認会計士共同事務所の仲間と共に「税理士法人優和」(事業所は全国5ヶ所)を設立し、理事長に就任。会計・税務業界の指導者的存在として知られている。東証1部、2部上場会社の社外監査役や地方公共団体の包括外部監査人なども歴任し、幅広く活躍している。

 オフィシャルホームページ 

http://www.watanabe-cpa.com/

 

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