B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS


俺の借金全部でなんぼや? ― 複式簿記って素晴らしい― その1

 
 

はじめに

先日、地元のカラオケスナックで歌っていたら、「俺の借金全部でなんぼや」 という唄に出あいました。「面白いな!」 と感じると同時に、またまた職業意識が頭をよぎり、私の永遠のテーマ  「複式簿記って、素晴らしい!」  に、頭の中が飛躍していってしまった次第・・・。
   そこで、さっそくインターネットで検索してみました ⇒ http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B31374
 
  この唄は作詞:三上寛氏、作曲:上田正樹 / 有山じゅんじ氏、唄:有山じゅんじと上田正樹氏となっています。プロモーションビデオを見ると、悠揚せまらない歌いっぷりに 「これが借金の唄かいな!?」 と思わず関西弁でつっこみたくなるのはさておき、友人に会うたびに金を借り、いくらか返し、儲け、いくらか払い、また借り、使いこみ、いくらか回収し・・・ とやっているうちに、歌っている俺( 「じゅん正樹」 と仮に命名) も、自分がはたしていくら儲けて、いくら損をして、結局借金がなんぼ残っているのか、わからなくなってしまったのでしょう。
 
 

1、複式簿記の決算のやり方

 
(1) 取引の仕訳
 さてここで、私の意識が飛んでいった会計の世界、「複式簿記」の登場です。簿記の概念を使えば、いくら損をして、借金がいくら残っているかはすぐに判ります。
   複式簿記では一つの取引を、取引の原因と結果の観点から借方(左側) と貸方(右側) に振り分け、それぞれ同一金額を記録してゆくことになります。これを仕訳と言います。今流行りの 「事業仕分」 とは文字が違いますよ。
   では、「俺の借金全部でなんぼや」 の唄を複式簿記の仕訳に落としてみましょう。俺こと 「じゅん正樹」 の財産状況と、いくら損をしたかが判ってきます。 
 
【仕訳1】 お好み焼き屋のゆうちゃんから、5千円借りてきて、
  現金 5000 /  借入金(ゆうちゃん)  5000
 
【仕訳2】 全部パチンコで負けてもたから、乾物屋の中西に8千円借りた
  パチンコ遊興費  8000 /  現金 5000
  現金 8000 /  借入金(中西) 8000
 
【仕訳3】 ゆうちゃんに3千円返して、2千円競馬をやったら、19,000円勝ってしもうた。
  借入金(ゆうちゃん) 3000 /  現金 3000
  競馬遊興費  2000 /  現金 2000
  現金  19000 /  雑収入(競馬) 19000
 
【仕訳4】 6千円乾物屋の中西に返して、残りで飲みにいったら、3,600円足れへんかった。
  借入金(乾物屋中西)  6000 /  現金  6000
  交際費  19600 /  現金  16000
       未払金(飲み屋つけ)  3600
 
【仕訳5】 明日払うわ!言うて帰りに車代千円借りた。
  旅費交通費(タクシー代) /  借入金(飲み屋) 1000
 
【仕訳6】 おかまの五郎ちゃんと朝までポーカーやる。結局5千円負けてしまった。
  遊興費(ポーカー代) 5000 /  未払金
(くんちょう&おかまの五郎) 
5000
 
【仕訳7】 有山に6千円貸した中から返してくれと言ったら、3200円返してくれた。
  現金 3200 /  貸付金(有山) 3200
 
 
(2) 貸借平均の原理
 複式簿記では、一つの取引を原因と結果の二つの側面から見ますので、必ず 「借方」 (左側) と 「貸方」 (右側) には同じ金額を記載します。これを 「貸借平均の原理」 と言いますが、ここが複式簿記の素晴らしいところなんです。いわゆる複式簿記の持つ機能の一つ 「自己検証能力」 です。
   一つの取引を二つの側面から、借方と貸方に同じ金額を記載しますから、仕訳取引の総額の左側(借方) と右側(貸方) は必ず一致します。これを損益計算書 (損益計算) に関わる取引と貸借対照表 (財産計算) に区分しますが、取引総額の借方 (左側) と貸方 (右側) の合計は一致していますので、二つに区分けした損益取引と財産取引の差額概念である、利益(又は損失) は、貸借対照表並びに損益計算書ともに、必ず一致します。
 
(3) 総勘定元帳の作成
   上記の仕訳を各勘定科目ごとにT勘定(総勘定元帳) に集計してみましょう。総勘定元帳とは、すべての仕訳(取引) を勘定科目ごとに記帳していく帳簿です。
 
(以前、有山に貸してあった貸付金は、元入金6000で処理してあります)
 101101_b0012_ex01.jpg
 
 101101_b0012_ex02.jpg
 
 101101_b0012_ex03.jpg
 
 
101101_b0012_ex04.jpg
 
(4) 決算書の作成
   これらの勘定科目を、貸借対照表に関わるものと損益計算書に関わるものとに区分して、表を作成してみましょう。上記T勘定のうち、「残高勘定へ」 の部分については貸借対照表へ、「損益勘定へ」 の部分については損益計算書に分けます。
   このようにしてできあがった貸借対照表と損益計算書の利益(又は損失) の額は、必ず一致します。




「じゅん正樹」 の決算書

101101_b0012_ex05.jpg

 

 

   地元のカラオケスナックで聞いた 「俺の借金全部でなんぼや」 という問いかけに、やっと答えが出ました。じゅん正樹さん、あなたの借金は5千円、飲み屋のツケとポーカーの負け代の未払いが8600円、従って負債総額は13600円であることを、私、公認会計士渡辺俊之が決算いたしました。

   ・・・じゅん正樹氏からのさらなる問いかけはありませんでしたが、彼は結局いくら損したのでしょう?上記損益計算書を見ればお分かりのとおり、13600円の損失です。損失分がそっくり借金として残ったわけです。
 
 
 
 

 

KEYWORD

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事