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スポーツ 上原浩治のTrust Pitch! vol.23 自分自身を軸にする 上原浩治のTrust Pitch! ボストン・レッドソックス投手

スポーツ
 
 こんにちは。上原浩治です。3月18日の僕のブログなどで、ちょっとした怪我をしてしまったことに触れましたが、今は順調に調整しています。ご心配をかけてすみません。
 日本はすっかり春めいてきたでしょうか。
 春は出会いと別れのシーズンですが、新たな挑戦に意欲がわく季節でもありますよね。そんな時期だけに、新たに野球を始める人や、レベルアップをしたい人たちに、ぜひ「いい変化」をもたらしたいと思っています。その気持ちから、4月24日に『野球上達日記』(株式会社インターナショナルスポーツマーケティング)を出すことになりました。シアトル・マリナーズの岩隈久志選手、トロント・ブルージェイズの川﨑宗則選手と僕たち3人から、12のメッセージを毎月1つずつ紹介して、そのアドバイスを読みながら、日記形式で1年間、自分の野球ノートとして活用してもらえる内容になっています。けっこう包み隠さず書いていますし、岩隈君や川﨑君の野球哲学もわかっておもしろいものに仕上がっていると思います。
 僕自身は大学生の頃から、かれこれ20年以上日記をつけています。日記を書く目的は人それぞれだと思いますが、僕にとっては文章として書いて覚えるためのもの。そして、今やっているブログは応援してくださっているファンの方とのつながりという意味でも、とても大切なコミュニケーションツールになっています。
 
 

シーズン前の日本とメジャーの違い

 
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来るべきシーズンに向け、入念な調整を行う
 『野球上達日記』を出すのは、僕らの経験を知ることで、上達につながって野球がもっと楽しくなるならと思いましてね。野球教室もたくさん開催したいけど、身体は1つしかないので、この本がノートになり、少しでも多くの野球少年・少女にも伝えられたらと思ったんです。ただ、アドバイスをするにしても、肝心のアドバイザーである自分がしっかりプレーしていかないといけません。「まずはキャンプから」と、今年もしっかりメニューをこなしてきました。
 毎年のことですが、半分くらいは以前のメンバーがいて、あと半分が新しいメンバーという割合。新しいメンバーも参加してくる中で、基本的には楽しくやれましたね。まだシーズン前ですから、特に何かしらのプレッシャーがあるわけでもないし、チームメイトは、ゴルフをしたり釣りをしたりと、割とのんびり過ごすこともあったので、みんな明るかったですよ。もっともシーズンが始まったら雰囲気がまた変わってくるから、まだスタートラインというところですね。
 アメリカのキャンプは、自分がやることをやったら、帰っていいんです。もちろん全体練習や、連係プレーの練習をしたりもしますが、基本的には、完全な個人主義です。
 オープン戦に関しても、自分の登板が終わったら、帰っても大丈夫なんですよ。これは、メジャーと日本の大きな違いの1つですね。僕の場合は、登板後はトレーニングとケアの時間に当てていますけど。
 誤解のないように書いておきますが、キャンプは決して楽ではありません。基本的に休みは1日しかないので、雰囲気的にのんびりしてはいても、ハードな環境の中で自分なりにコンディションと気持ちを高めていかなくてはいけないため、しんどいところはあります。まあ練習なんてそういうもんですけどね。
 
 

アメリカの気候はある意味「修業」

 
 アメリカは各地で気候の違いが非常に激しいのも特徴の1つです。日本は全国的にそれほど寒暖差があるわけじゃないですけど、アメリカはとにかくその差が激しい。例えばキャンプ地であるフロリダは、日本から帰ってきた2月頃は気温がマイナスの日もありましたが、今はめちゃくちゃ暑くて、日中は30℃近くになります。また、同じアメリカでも、レンジャーズ時代にキャンプに行っていたアリゾナとも全く気候が違います。フロリダはジメジメしている感じですけど、アリゾナはカラッとしていて汗をかいてもすぐ乾く。試合をするにしても練習をするにしてもアリゾナはやりやすかった。食事するにもアリゾナのほうが良かったかな。
 悪環境への順応性を高めるという意味では、投げにくいフロリダのほうがいいかもしれません。シーズン中に投げることを考えたら天気だって変わるし、遠征先によって当然、気候だって変わる。いい環境で快適に野球をしていても、一年ずっと同じ環境ではないわけですからね。
 
 

シビアな世界で結果を出すために

 
 毎年のキャンプで、僕は主にその年に試していきたい球を投げて、シーズンを通してその球種が使えるかどうか判断するようにしています。まず自主トレで練習して、キャンプで段階を踏み、オープン戦で打者相手に試して磨きをかける。
 それはコーチや監督から言われたことをやるというものではありません。準備は人それぞれで、みんなが自分の考えや責任のもとで行っています。だから、シーズンが始まって結果が出るかどうかも本人次第。シビアな世界ですからね。他の人がどういう準備をしているかわからないのですが、僕は僕なりに準備して、年間を通してチームに貢献できるようにする。ただそれだけです。
 冒頭の本の話ではないですけど、いろんなことを試す。そして考える。誰かに言われるからやるのではなく、自分のために自分で考えて動く。自分自身を軸にする。全国の野球少年・少女たちにもそのことは伝えたいですね。
 自分の人生、自分の生活・・・それは、やっぱり自分の責任でしかないわけですからね。欲を言えば僕らのような野球選手だけでなく、世のビジネスパーソンの皆さんにも、子どもたちにとっていいお手本になるような仕事ぶりをしてほしいなと思います。
 
 この春から始まる、様々な「シーズン」。皆さんにとっても自分のことだけでなく、周囲にもいい影響を与えられるものにしてほしいですね。そしてレッドソックスの応援も、できればお願いしますよ!(笑)

 執筆者プロフィール 

上原浩治 Koji Uehara

ボルチモア・オリオールズ投手

 経 歴 

大阪府出身(出生は鹿児島県)。東海大学付属仰星高校から大阪体育大学に進学し、大学3年時に日本代表に選出。1997年に出場したインターコンチネンタルカップ決勝では、当時国際大会151連勝中だったキューバから先発勝利をあげ、注目された。ドラフトで読売ジャイアンツに1位指名(逆指名)を受け、1999年に入団。ルーキーイヤーに20勝投手となり、最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の4冠を獲得し、新人王と沢村賞も受賞。翌2000年は肉離れのため登録抹消となるなど、ケガに苦しむシーズンを送るも、2002年に再び17勝をあげ、優秀選手賞を受賞。2004年にはアテネオリンピック野球日本代表に選出され、銅メダル獲得に貢献。2006年のワールド・ベースボール・クラシックでも日本代表のエースとしてチームを優勝に導いた。2009年にボルチモア・オリオールズに入団。ベテラン投手の一人としてチームを牽引している。

 
 
 
 

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