B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

コロナ禍のオフィスづくりをどう考えるべきか vol.3 オフィスづくりの本質は“人”にある

ビジネス コロナ禍のオフィスづくりをどう考えるべきか vol.3 オフィスづくりの本質は“人”にある コロナ禍のオフィスづくりをどう考えるべきか 株式会社翔栄クリエイト 執行役員・ビジネスクリエイション事業部 事業部長 河口英二

ビジネス
健康、環境、経済など、分野をまたいで多角的に事業を展開する株式会社翔栄クリエイト。同社のビジネスクリエイション事業部の河口英二部長は今年2月末、『経営者のための経営するオフィス』を出版した。同事業部が推進するオフィス空間の有効な活用法について触れた同著と、20年の実績を有する同社の空間コンサルティングの効果について、お話をうかったインタビューの第3回目。
 
――それではここで、書籍にはない事例も紹介していただけますか?
 
わかりました。校舎のリノベーションを考えていらっしゃった専門学校のお話をしましょう。九州美容専門学校という、生徒思いの先生が多い、とても温かい美容師さんの学校がありまして、こちらが少子化の流れもあり、生徒を増やしていきたい! とお考えでいらっしゃいました。
 
glay-s1top.jpg 職員室のビフォーアフター。ガラス張りにしてコミュニケーションを密にした
職員室のビフォーアフター。
ガラス張りにしてコミュニケーションを密にした
一般的に学校の改装は、内装をきれいにすることを目的にしているケースが多いですが、私は、それでは生徒を増やすには限界があると思っています。例えば病院に行くとき、ボロボロでも名医がいる病院と、院内はおしゃれだけど腕の良くない医者が対応する病院のどちらがいいですかとなったら、前者を選びますよね。要するに、空間は中身には勝てないんですよ。だからこそ、大事なのは本質です。こちらの学校の場合は、もともとの生徒思いの先生が多いので、今まで以上に、“生徒思い”を行動に表しやすく、またそれが生徒にストレートに伝わるようにすることがミッションと考えました。
 
校舎の中を見させていただく中で、職員室すぐ横の廊下を生徒が登下校時に歩いているのに、職員室の中が、生徒からは見えないことがとても気になりました。それを見て、私はもったいないと思ったんです。もし壁がなかったら、廊下を行き来する生徒と「〇〇さん、おはよう」とか「また明日ね」とかコミュニケーションができるじゃないですか。
 
ですから私は、職員室の壁を取っ払ったほうがいいと提案しました。校長先生もそれ聞いて「そうですね、やるべきですよね」と言ってくれて、先生たちにその提案をしていただいたんです。すると猛反発だったそうです・・・。
 
――先生たちからしてみたら、職員室の中身が筒抜けなのは、違和感があったんでしょうね。
 
glay-s1top.jpg 教室のビフォーアフター。リノベーションで内装も一新
教室のビフォーアフター。リノベーションで内装も一新
ええ。職員室は唯一心を休められる場、そこが生徒から見られてしまう事を想像したら、反発心が大きくなったようですね。校長先生より、あらためて、壁を取り払う理由、もっともっと生徒に対して開かれた学校にしていきたい! という想いを伝えた所、先生方も、生徒と向き合う“本来すべきスタンス”をイメージしていただけたようで、職員室をガラス張りにすることになりました。
 
学校全体をリニューアルしてから約1年半で、良い意味での変化が続いたと聞いています。ガラス張りを不安に感じていた先生方も、今では全員がその空間を大好きになっているそうです。ガラス越しにお互いの存在を自然に感じられるし、姿が見えることで良い意味で生徒も先生の休憩中は気を使えるようになるなど、お互いの距離が近くなった。また、生徒の募集は広報部、教えるのは先生という、ややセクショナリズムがあった職場が、今では広報部も授業の内容に興味を持ち、先生も生徒募集のPRポイントを考えるなど、学校の魅力をどう伝えればいいかを一緒に考えるようになったそうです。以前の先生方は、校内の変化を拒む雰囲気があった。しかし、今では生徒にとってより良い学校になるために変えていけることを、全員で考えるようになったようですね。
 
それらが、学校見学に来た学生たちに伝わったのだと思いますが、当初コロナの影響もあり、新入生50名で見込んでいたのが、願書受付開始1週間で100名を超え、これは15年ぶりとのことです。
 
――まさに本質的な部分が変わったからこそ、学校の業績が向上したという例ですね。
 
ええ。リノベーションした空間の評判もいいですし、それ以上に、先生たち自身が変わったってことですね。当社の空間づくりは、そういう可能性を秘めています。この学校のようにオフィスではなく、クリニックや店舗でもそれは可能です。要するに、“人”が介在する場であれば、この空間づくりは有効で、そこで働く人だけでなく、訪れた人にも、影響するということです。
 
――ただ、御社による空間づくりの提案は、社員の人たちにとってみればそんなにいい話じゃないのかもしれないかもしれないですね。
 
そうなんですよ。書籍の事例の1個目に出ていたアクロスロード株式会社さんの例はそれに近くて、社員の方々に事前に「どんなミーティングスペースがいいですか」と聞いたら、「個室が良い!」と言っていたでしょう。
 
やはり個室でミーティングしたほうが、周りを気にしなくていいですし、それを望みますよね。しかし、書籍にあるように、オープンスペースで、発言が少ないほうが、自分の発言がいかに少ないかが可視化され、それが周りにも伝わってしまう。そんな社員の方々が望まないような空間をつくらせていただいたわけです。しかし、それがきっかけで、社員の発言が増え、みんなが集まる社風に変わっていき、結果的には、以前より社員にとって魅力に感じる会社になったと思います。
 
社員が望むのは利便性の向上で、その意味では目先のメリットはありませんが、それを乗り越えると社員にとっても良い結果となるような空間。これは経営者の方でないと、理解がしづらいと思います。ですから、トップダウンで、社員にその意図を説明しながら進めていくことが大事なんですね。最終的にみんなが会社に集まるような社風に変わったので良かったです。
 
――御社の空間づくりがうまく進むと、働く人のモチベーションがあがって定着率のアップにもつながりそうですし、新たな人材の採用などにもつながる可能性もありますよね。
 
そうなんですよね。さきほどの九州美容専門学校では、学校が大きく変化することで、最悪辞めてしまう先生もでてしまうかもしれないと思っていました。しかし、誰一人として辞めることなく、新たな先生の採用も進んでいると聞いています。働いている方にとって以前より魅力的になれば、定着率も当然上がります。採用も同じで、面接などで訪れた見学者が、訪問先で働いている人たちのイキイキした姿を見たら、気持ちが動くと思うんです。
 
――第2回で触れた「システム1」、感情に働きかけるわけですね。
 
そうです。ところが、多くの会社は見学者にどうせなら内装がきれいな所を見てもらおうと、来客スペースやリフレッシュスペースを見せていることが多いのです。見学者は、内装が見たいのではなく、どんな会社かが見たいのに、お金がかかった内装を見せてもしかたないですよね。和気あいあいと仕事をしていたり、活気にあふれる会議をしていたり、その会社の一番いいところ、一番見学者が魅力に感じてもらえそうな、そんなシーンを見てもらう。それを目の当たりにすることで、見学者の感情も動き、「あ~、ここで働きたいな~」となる。オフィスづくりというのは結局、人なんです。そこが本質なんですね。
 
――採用される側の人の心にも訴えかけられるオフィスということですね。それでは、最終回となる次回は、コロナ禍におけるオフィスづくりについてお聞きします。
 
 
~vol.4に続く~
 
コロナ禍のオフィスづくりをどう考えるべきか
~『経営者のための経営するオフィス』著者、翔栄クリエイト・河口事業部長に聞く~
vol.3 オフィスづくりの本質は“人”にある
 
(取材2021年4月)

 著者プロフィール  

河口 英二 Kawaguchi Eiji

株式会社翔栄クリエイト 執行役員・ビジネスクリエイション事業部 事業部長

 経 歴  

1970年愛知県生まれ。人材サービス会社にてアウトソーシング事業で経験を積んだ後、2009 年、事業コンセプトに共感し、株式会社翔栄クリエイトに入社。同年、執行役員および「行動科学に基づく空間創り」を行うビジネスクリエイション事業部事業部長へ就任する。以降、10年以上にわたり空間クリエイト事業で数々のプロジェクトに携わり、企業の業績向上支援となる空間づくりを手がける。数々のセミナーにも登壇、講演数は 450 回を超えるほか、YouTube配信なども展開中。

 翔栄クリエイト河口の空間創りチャンネル 

https://www.youtube.com/channel/UC3eOjbw-VQMdf9-QKKl6RQA

 株式会社翔栄クリエイトビジネスクリエイション事業部 

https://syouei.net/

 書籍情報 

経営者のための経営するオフィス
著者 河口英二
出版社:株式会社ファーストプレス
出版日:2021 年 2 月 22 日
価格:¥1500 (税抜き)

assocbutt_or_amz._V371070157_.png

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事