第1回「前期は黒字だったが今期は赤字という会社様へ。税金が戻ってきます!」
皆さんこんにちは、マネーコンシェルジュ税理士法人の代表をしています、税理士の今村と申します。このコーナーでは、企業経営をしていくうえで必要となる税金や融資などの知識を、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。また、単なる節税法指南に留まらず、企業経営と税の関わりや、そもそも税金とは何ぞやといった理念的な内容についても踏み込んでみたいと考えています。末永いお付合いをよろしくお願いします。
さて、税金というと「払うもの」というのが一般的なイメージだと思いますが、今回はその税金が「戻ってくる制度」のご紹介です。
税金が戻ってきます!
昨年後半から、金融危機に端を発する大不況が日本にも押し寄せてきました。企業業績は軒並み急降下となっています。前期は黒字だったけども、今期は大幅な赤字になりそうだという企業は多いのではないでしょうか。
従来の税制では、こういう場合、今期の赤字を来期以後に繰越して、来期以後の黒字と相殺するという方法しか原則ありませんでした。ちなみに、来期以後に損失を繰越しできる期間は7年間です。つまり、たとえ前期と今期の利益を通算してプラスマイナス0であったとしても、前期の税金は支払ったままで戻ってくることはありませんでした。
そこで景気対策も兼ねて、平成21年度税制改正において、今まで設立5年以内の会社など特殊な場合しか認められていなかった「青色欠損金の繰戻し還付制度」が中小法人等に限って全面解禁されることになりました。
「青色欠損金の繰戻し還付制度」とは、前期は黒字であったがその後経営が悪化して今期に赤字に陥った場合に、前期に納税済みである法人税の還付を受けることができる制度のことです。繰戻し還付の仕組みを図解すると以下のようになります。
自社は対象になるの?いつから?
資金繰りアップにもつながる「青色欠損金の繰戻し還付制度」ですが、どんな会社が対象になるのかが気になるところです。
具体的には、「中小法人等(注)」が対象になるとされていて、「資本金1億円以下の法人」や「協同組合」などが該当します。
注)対象となる中小法人等
- 普通法人のうち各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるものまたは資本もしくは出資を有しないもの(保険業法に規定する相互会社等を除く)
- 公益法人等
- 協同組合等
- 人格のない社団等
では、いつからこの「青色欠損金の繰戻し還付制度」を活用できるかというと、「平成21年2月1日以後に終了する事業年度」からとなっています(下図)。ということは、既に適用が始まっているということです。適用忘れのないようにしましょう。
注意点もあります
前期に支払った税金(法人税)が戻ってくると聞くと、素晴らしい制度のように思いますが、実は注意点があります。
それは、この「青色欠損金の繰戻し還付制度」は、決算のときに法人税と同時に発生する「法人事業税」は対象にならないという点と、「法人住民税」については、翌期以降納付すべき法人税割から控除されることになるという点です。
つまり、前期の決算時に支払った法人税、法人事業税、法人住民税のすべてが戻ってくるわけではないということです。繰戻し還付を行なって戻ってくるのは、法人税部分だけとなりますので、お間違いのないようにしてください。
執筆者プロフィール
今村仁 Imamura Hitoshi
マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員
経 歴
京都府京都市出身 立命館大学経営学部企業会計コース卒 会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。その後2003年今村仁税理士事務所開業、2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。税理士・宅地建物取引主任者・CFP等ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広くサポート。大阪・京都・神戸・滋賀・奈良・東京・横浜を中心に活動。マネーコンシェルジュ税理士法人(旧今村仁税理士事務所)
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