「日本版 ISAの創設(平成22年度税制改正)」
前回に引き続き、「平成22年度税制改正項目」 より、今回は 「日本版 ISA の創設」 についてお伝えします。
■ 日本版 ISAとは?
貯蓄から投資へのお金の流れを促進するため金融庁が要望してきた 「日本版ISA」 が、「平成22年度税制改正項目」 に盛り込まれました。
日本版 ISAとは、「少額の上場株式等投資のための非課税措置」 といって、年間一定金額までの証券投資の利子配当や譲渡益を非課税とする証券優遇税制のことです。ISAとは、Individual Savings Accounts の頭文字をとった略称で、個人貯蓄口座のこと。イギリスで既に導入されている ISAを模して作られたため、通称、「日本版 ISA」 と呼ばれます。
実施時期は2012年からですが、事前手続きは2011年から始まります。ちなみに、2012年には、上場株式等の配当等及び譲渡益に対する税率が現行の10%から本則の20%に変更される予定ですので、それに合わせた措置となっています。
■ 最大300万円10年間実質無税化
日本版 ISA の非課税口座を開設できるのは、その年1月1日において満20歳以上の居住者等です。2012年から2014年までの3年間にわたって、1人につき年間1口座 (毎年異なる金融機関でもOK ) を開設できます。この非課税口座には、年間100万円を上限に、非課税口座設定日から12月31日まで、その口座設定をした金融商品取引業者等を通じて新たに取得した上場株式等のみを受け入れることができます。厳密には、「非課税口座を開設した年から10年内に支払を受ける配当等や譲渡益に対して非課税」 となります。つまり、この日本版 ISAでは、3年間で最大300万円分の上場株式等について、10年間は実質無税化されることになります。無税化については、国税である所得税だけではなく、地方税である住民税も足並みをそろえて同様に取り扱われます。ただし、譲渡の場合の損失金額については、所得税及び住民税においてないものとみなされますので、注意が必要です。
■ 事前手続きは2011年から
この優遇措置を受けるには、事前に税務署に申請して 「非課税口座開設確認書」 の交付を受けなければなりませんが、これは一般投資家に事務負担が極力かからないように、金融商品取引業者等を通じて簡易に行なえるように制度設計するようです。
また、手続きの時期は、非課税口座を開設しようとする年の前年10月1日からその開設年の9月30日までとなっていますので、早くて2011年10月1日から手続きスタートとなります。
■ とはいえ、あくまで株式投資です
ここまで日本版 ISA の説明をしてきましたが、この制度はあくまでリスクのともなう株式投資が前提であるということを忘れないでください。税の優遇措置があるとはいえ、株式投資は余裕資金で行なうのが原則です。国としては貯蓄から投資へという流れを加速させたいようですが、経済産業省が6月に発表した 「産業構造ビジョン2010」 によると、もはや日本の家計の貯蓄率は既にアメリカを下回り、先進国の最低水準となっています。国の施策に安易に乗っかるのではなくて、国民それぞれがそれぞれの指針でお金の使い方を考えるべきだと思いますので、税理士の観点からは、そのことを最後に付け加えておきます。
今日のこの話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
執筆者プロフィール
今村仁 Imamura Hitoshi
マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員
経 歴
京都府京都市出身。立命館大学経営学部企業会計コース卒 会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。その後2003年今村仁税理士事務所開業、2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。税理士・宅地建物取引主任者・CFP等ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広くサポート。大阪・京都・神戸・滋賀・奈良・東京・横浜を中心に活動。マネーコンシェルジュ税理士法人(旧今村仁税理士事務所)
オフィシャルホームページ
http://www.money-c.com/