B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

 
 最近のコラムでは、税法の改正点などかなり専門的な内容となっていましたので、今回は少し視点を変えて、「中小企業経営者と税金(2つのスタンス)」と題してお伝えします。
 
 

■中小企業経営者と税金(2つのスタンス)

 
 会社を起こしたり、親から事業を引き継いだりした中小企業経営者は、どこかで税金と真正面から向き合い、税金とのスタンスを決めないといけない時期がやってきます。
 よくあるその時期というのは、会社が儲かってきたときです。「利益予想に対して税金はこれぐらい発生する」と、現実に目の前に数字を置いたときに、経営者の目つきが変わることがあります。サラリーマンで税に対する意識を高めることは至難の業ですが、中小企業経営者の場合、特に会社が儲かってきたときには、税金に対して考えざるを得ません。
 
 一般的に、中小企業経営者にとって税金とのスタンスは2つあると思います。1つは「節税重視型」、もう一方は「純資産重視型」です。
 
 

■節税重視型とは?

 
 比較的小規模の零細企業に多いのが、この節税重視型です。節税重視型では、経営者個人と会社のトータルで払う税金が最も少なくなるようにします。利益額の大きな会社では限界がありますが、一般的には、会社の利益をそのまま経営者関連の役員報酬として支給し、会社での納税を限りなく0円に近づけていきます。これは、個人と会社との実効税率差を考えてのことで、基本的に個人で税金を払うことになります。
 この経営者関連の役員報酬を多額に設定(適切な範囲内)した場合、会社では資金不足になることがありますが、その場合には役員借入金として、個人現金を会社に戻すことになります。
 10人以下の零細企業で、経営者=会社というようなケースで多くみられる手法です。
 
 

■純資産重視型

 
 純資産とは、貸借対照表の右下に位置し、その構成要素としては、中小企業の場合おおまかには「資本金」と「繰越利益剰余金」です。資本金は増資や減資などの特殊事情がない限り変更がないでしょうから、重要なのは繰越利益剰余金です。
 この繰越利益剰余金とは、その名のとおり、過去から繰り越された利益の蓄積で、損益計算書で黒字ならプラス、赤字ならマイナスとして集計されます。図にあるように、損益計算書における税引後当期純利益が貸借対照表の繰越利益剰余金に加減算されていきます。
 
 純資産重視型とは、ようするに、会社のこの純資産を大きくしていくことを第一とするやり方です。この場合、過度な節税対策は実行せず、経営者関連の役員給与についても必要な分だけにとどめることになります。結果、損益計算者において多くの黒字が計上され、それに見合った納税が会社に発生します。経営者個人の税金はそれほど多額になりません。
 ある程度の規模になった会社や、経営者個人=会社の枠から一歩踏み出した準パブリックカンパニーを目指す会社に多くみられる手法です。
ちなみに、純資産重視型をとると金融機関など外部の評価は上がることが多いです。
 
 

■状況に応じて臨機応変に

 
 では、どちらが正しいのかというと、一概にはいえません。家族経営でこれ以上大きくする必要もないというのであれば、「節税重視型」を継続されても良いと思います。逆に、会社を大きくして、なるべく経営者がいなくても会社が回るようにしたいというのであれば、やはり「純資産重視型」がオススメです。
 また、節税重視型か純資産重視型かというのは、決めたらそれをずっと継続していかないといけないということでもありません。また、極端にどちらか一方というのではなくて、折衷案的に決めるのが良いときもあります。例えば、創業期は経営が不安定でしょうから、やはり経営者個人と会社をあわせたところで手元現金の最大化を図りつつ、徐々に純資産重視型に移行していくというのはよくあるパターンです。
 節税重視型の場合は経営者個人にお金が残り、純資産重視型の場合は会社にお金が残ります。中小企業経営はどこまでいっても不安定要素が残りますので、大切なのは、それらのお金を無駄遣いせずきちんと残しておくことだと思います。
 
 今日のこの話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
 
100801_b0004_ex0001.jpg
 
 
 

 執筆者プロフィール 

今村仁 Imamura Hitoshi

マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員

 経 歴 

京都府京都市出身。立命館大学経営学部企業会計コース卒 会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。その後2003年今村仁税理士事務所開業、2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。税理士・宅地建物取引主任者・CFP等ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広くサポート。大阪・京都・神戸・滋賀・奈良・東京・横浜を中心に活動。マネーコンシェルジュ税理士法人(旧今村仁税理士事務所)

 オフィシャルホームページ 

http://www.money-c.com/

 
 
 
 

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事