前回は平成22年度税制改正より、「グループ税制の創設」についてお届けしましたが、今回は 「扶養控除の縮小(増税)」 についてお伝えします。
■子ども手当と高校実質無償化
政権交代によってこの4月から子ども手当が始まりました(従来の児童手当は廃止)。実際の支給は、6月より順次行なわれることになっています。中学校を卒業するまでの子ども1人につき、平成22年度で支給額は月額1万3千円。支給月は、6月・10月・2月です。また、合わせて高校の実質無償化もこの4月からスタートしました。これらは少子化対策という背景もあり、ヨーロッパ特にフランスの施策が参考になっているようです。
■扶養控除の縮小(増税)
平成22年度税制改正では、扶養控除の縮小が明記されています。扶養控除とは、例えば、子どもや両親などを大黒柱である夫が扶養している場合に、夫の給与にかかわる税金を軽減してくれる制度です。
今回の扶養控除の縮小は具体的には、大きく2つの内容となっています。
1つは、年少扶養親族である 「16歳未満の扶養親族に対する扶養控除の廃止」 です。これによって、扶養控除の対象は16歳以上の扶養親族とされました。38万円(住民税33万円) あった扶養控除額が、改正後は0円となります。これは、主に中学生以下の扶養家族をもつ方にとって結果的に増税となりますので、先ほどの子ども手当の支給にともなった改正だと想定されます。
もう1つの改正は、「16歳以上19歳未満の人の扶養控除の上乗せ部分25万円(住民税12万円)の廃止」 です。これにより、16歳以上19歳未満の人の扶養控除が通常の38万円(住民税33万円) に減額となりました。さらに特定扶養控除の対象となる特定扶養親族の範囲が16歳以上22歳未満から19歳以上23歳未満とされました。こちらの控除額は38万円+25万円=63万円(住民税33万円+12万円=45万円) のままです。
これは、主に高校生の扶養家族をもつ方にとって結果的に増税となりますので、先ほどの高校実質無償化にともなった改正だと想定されます。
■実質負担は減るが
タイムラグへの対応が必要
2009年末の税制改正論議の中では、財源の問題もあって、「配偶者控除の見直し」 や 「扶養控除全般の見直し」 なども論点になりました。しかし、最終結果としては、上記2つの改正にとどまりました。つまり、配偶者控除や23歳以上69歳未満の扶養控除38万円(住民税33万円)、70歳以上の老人扶養控除48万円(住民税38万円)は、今までどおりです。(詳しくは図をご覧ください)。
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経営者に限らず、B-plus読者の皆さんは扶養親族を持つ世代の方々が多いでしょう。今回の改正は皆さんにどう影響するでしょうか。ポイントは 「実質負担がどうなるのか(家計への影響)」 と、「いつからそうなるのか」 の2つです。
実質負担に関しては、「子ども手当支給と高校実質無償化」+「扶養控除の縮小」の結果、子どもを持つほとんどの家庭で実質負担は減ります。これは大きな安心材料でしょう。
では、いつから減るか。この点については注意が必要です。
子ども手当の支給と高校実質無償化は既に開始されていますが、扶養控除の縮小は、所得税については平成23年度分から、住民税については平成24年度分以後から適用されます。つまり、高校生以下の扶養家族を持つ給与所得者であれば、来年の1月以後の給与から縮小分だけ手取りが減るということです。これは意外にご存知ない方もおられますので、ぜひ覚えておいてください。
大事なのは、子ども手当の支給や高校の実質無償化が先行実施されて、控除縮小=増税が後から来ますので、そのことをきちんと事前に理解してタイムラグへの対策を立てておくことでしょう。
また、この扶養控除の縮小は従業員全般に影響することですから、経営者にとっては事前に社内で周知しておくことも重要です。例えば、高校生以下の扶養家族を持つ従業員向けに、簡単な来年の給与シミュレーションをしてあげるなどが良いのではないでしょうか。
今日のこの話が経営者の皆様のお役に立つことができれば幸いです。
執筆者プロフィール
今村仁 Imamura Hitoshi
マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員
経 歴
京都府京都市出身。立命館大学経営学部企業会計コース卒 会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。その後2003年今村仁税理士事務所開業、2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。税理士・宅地建物取引主任者・CFP等ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広くサポート。大阪・京都・神戸・滋賀・奈良・東京・横浜を中心に活動。マネーコンシェルジュ税理士法人(旧今村仁税理士事務所)
オフィシャルホームページ
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