◆空き家対策特別措置法の完全施行
人口の東京一極集中が進み、地方では空き家問題が深刻化している。平成27年5月26日、空き家の持つリスクを持ち主の手で解消させるための制度である「空き家対策特別措置法」が完全施行された。2月26日に部分施行していた同法が完成した形だ。
空き家が放置されてきた理由の1つとして、たとえ空き家であっても土地の上に建物が存在することで、税法上は小規模住宅用地(200㎡以下の部分)、あるいは一般住宅用地(200㎡を超える部分)と区分され、固定資産税の納税額が抑えられていたことが挙げられる。しかし今後、特措法において「特定空き家」と認められる空き家は特例の適用から除外され、更地と同等の評価で固定資産税が課される。以後は、土地(更地評価)にかかる固定資産税に加えて、空き家に関する固定資産税も支払うことになるため、空き家を取り壊して更地としたほうが、税負担が軽減されるのだ。政府としては、「空き家」が何のケアもされず放置されることで生じる倒壊・火災・不審者の出入り・景観を損ねるといった問題をこれによって解決したい狙いがある。
国土交通省の調べによると、355の自治体が空き家対策条例を設けており(平成26年4月1日現在)、自治体が条例に基づいて行政代執行により空き家を取り壊すといった処置が行われたこともあった。今回の特措法の完全施行は、個人の持ち物である不動産は持ち主の手で処分させるという政府の姿勢を明確に示した形である。
地方だけではなく都心部にも空き家は増えている。人口が都心部に集中している現在は、地方の空き家問題の深刻さが目立つが、少子高齢化が進んでいる日本では、いずれ都心部の空き家問題の解決にも着手しなければならない。各地域が空き家問題にどう取り組み、どう解決するのか、その過程を追うことは、やがて他の地域にもやって来る同様の問題への解決策を占う意味もある。
◆住み慣れた実家が空き屋になった時
「特定空き家」の定義を確認すれば、それを放置することのデメリットが見えてくる。国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の概要」によると、特定空き家等とは
1.倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
2.著しく衛生上有害となるおそれのある状態
3.適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にある空家等
このような空き家が放置されることは、近隣住民や地域環境の安全・衛生、景観を保つために決して有益ではない。
とはいえ、親子が離れて住み、親が亡くなってからも子世代が実家に戻らないことで生じる「実家が空き家のまま放置される」という問題には、「思い出深い実家を取り壊したくない」という心情の問題も絡む。「実家を壊したくない」という子どもの思いに配慮しながら、空き家の管理が適切に行われる状態を保つための方策として、国土交通省は「『借主負担DIYの賃貸借』ガイドライン」を策定した。市区町村の「空き家バンク」運営に加えて、「一般社団法人 移住・交流促進機構」により、全国の自治体が発信する空き家バンク・住まいに関する情報が一覧できる「
ニッポン移住・交流ナビ」も運営され、空き家を壊さず賃貸物件として活用できる環境が整備されつつある。
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