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ゴールデンウィークの季節である。2015年はカレンダー通りなら5連休にとどまるが、思い切って間を埋めることができれば12連休となる。
社員にどう休みを取らせるかは重要な企業戦略の一つだ。さらに言えば、休日をどう過ごさせるかも大切である。心身を休めて英気を養わせるもよし、人としての成熟につながる活動をさせるのもよし。OFFの過ごし方はそのままONの成果につながる。
そこで注目したいのが東日本大震災以来、関心を持ち活動する人が増えているボランティアへの関わりだ。日本における本格的なボランティアの発祥は1995年に発生した阪神・淡路大震災と言われる。もちろんそれまでにも地域などで活動する例はあったが、官の力だけではもはやいかんともしがたい被害を前に、自発的に支援を行う大規模な「民」の動きが芽生えた。以降もその流れは引き継がれており、東日本大震災の関連では、全国各地から集まるボランティアが2015年現在も様々な局面で現地の大きな力となり、早期復興の手助けとなっている。
その昔は、日本にも、地域に根ざした相互扶助のシステムとして「結(ゆい)」や「講(こう)」と呼ばれるシステムがあり、災害時などには大きな力を発揮した。ただ近年は過疎化、高齢化に加え、災害の規模そのものが大きくなっているいっぽう、公的な援助組織である消防や警察の動員力は横ばいであり、地方自治の壁もある。市民の自発的なボランティア活動が不可欠な状況となっているのだ。
個人の善意から始まるボランティアだが、それだけでは力を発揮できない。社会が成立するために重要な要素だと認識するなら、その力を活かす環境整備が必須だ。内閣府が行ったアンケート調査「平成26年度市民の社会貢献に関する実態調査」ではボランティアをしたくてもできない理由として、「時間がない(53.4%)」「経済的負担が大きい(27.8%)」「情報がない(25.8%)」という回答がトップ3を占めている。それぞれの問題をひもといていくと、日本のボランティア活動に必要なものが見えてくる。
たとえば最大の障壁となっている「時間の不足」は、休みの取りにくさが大きな要因だ。厚生労働省が発表している「平成26年就労条件総合調査」を見ても、有給休暇の取得率は平均48.8%と半分にも満たない。
ボランティアに要するコスト面も重い課題だ。東日本大震災の被災地でボランティアをしたいと志しても、東京-南三陸町の移動にはもっとも安価な高速バスでも土日なら片道5000~6000円程度かかる。往復の旅費に食費や宿泊費を含めれば、2泊程度の活動でも2万~3万円程度の出費は覚悟せねばならない。体力とやる気はあっても資金力のない若年層にこれを負担しろというのでは、ボランティアは成立しない。
さらにボランティアを効率的に活かすには、情報発信や人員の割り振りやとりまとめ、金銭管理など事務方の仕事も意外に重要だ。
ボランティア活動においては欧米の先進性に見習うところが大きい。もともと隣人愛をうたうキリスト教精神をベースにフィランソロピー(博愛、慈善)の思想が根付いており、これがボランティア活動の精神的な支柱となっている。キリスト教会を中心に労働力のある人はボランティア活動を行い、資金力のある人はチャリティ活動に注力することが、ごく一般的な社会生活の一部なのだ。企業単位の取り組みも盛んだ。金融大手のゴールドマン・サックス社ではボランティア活動を行う社員に対して有給休暇をとらせるだけでなく、必要なコストまで負担している。
いっぽう日本にもキリスト教会のような役割を果たす組織がある。全国の自治体単位で組織される社会福祉協議会(略称「社協」)である。同団体はもともとボランティア活動を目的として行政の関与により明治時代に設立された。現在もボランティア活動のとりまとめを担う他、ボランティア保険の提供なども行っている。これは活動中の事故などにより被った物的・人的被害を補償してくれるもので、自治体によっては保険料を一部、あるいは全額負担するところもある。
背景にあるのはやはり地方における公的なマンパワーの不足だ。地域で活動し、これを補ってくれる市民の自発的なボランティア活動は、自治体にとって得がたい戦力となっている。