年間100万人の死亡者がいるとして、平均200万円の葬式費用(日本消費者協会調査) がかかるとすると、総額2兆円の経済効果を生んでいることになります。これらの需要の財源は葬儀に参列する方がご霊前として供えるお香典で大半が賄われます。お香典だけでは賄いきれませんが、葬儀を出す側が生み出す経済効果としては2兆円ということになります。
なお、
特定サービス産業実態調査|(経済産業省) によると、冠婚葬祭業の葬祭の売上総額は5038億円、取扱件数349,755件(調査企業の事業所数1418 従業者数17775人) となっていますので、一件当たり葬儀費用は144万円であることが分かります。調査に協力した会社のデータですので全容は不明ですが、最低で5000億円、マックスで2兆円の市場なのかもしれません。
(2)相続税はどのくらいかかり、申告手数料はいくらか?
平成20年分の被相続人数は約114万人で、そのうち、相続税の課税対象となった被相続人は約4万8千人です。被相続人全体に占める割合(課税割合) は4.2%となっています。相続財産の種類別内訳や被相続人数の推移等々、興味深い統計やグラフは
国税庁のホームページに載っています。ぜひリンク先からご覧ください。遺族が相続税を納めているのは亡くなった方が24人いるとして1人の割合ですから、多くの方には無縁かもしれませんが、相続税の申告手数料はどの位なのかは、気になるのかもしれません。
税理士会では、独占禁止法上問題となるところから、会としての報酬規定は存在していません(
「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」のリンク先参照)。しかし、そうはいっても、目安は知りたいと思います。上記の問題がなかった頃の報酬規定を参考までに掲げておきましょう。別な見方で、課税財産のおおよそ1%という考え方もありますが、これですと、参考に掲げた表(
PDF表示の報酬規定) よりは高めに算出されるかもしれません。いずれにしても、おおよその金額ですね。
4、葬式行事に参加する人々の支出総額と経済効果
今までの話は、人が死ぬと、いったい幾らくらいのお金がかかるのだろうかとの問題-Aのケースでした。さてそれでは、Bのケース、故人の関係者側の家計に及ぼす影響額の問題です。これは、わずか1日か2日間の超短期間で動員される葬儀参列者が支出する金額の総額はいくらかという問題でもあります。お香典の支出額に、参列のための往復の交通費・香典袋代を合せた金額でしょうか? この合計金額に平均参列人数を掛ければ、一回当たりの参列者側の支出総額が判明します。すると1年間の支出総額は、
葬儀行事の経済効果A1=(1年間の死亡人数B)×(葬儀一回当たり平均参列人数C)×(平均香典額D+交通費等付随費用)E)+(遺族側の香典で賄えない追加支出F)
上記は参列する側から把握しようとした経済効果です。葬儀を出す側が生み出す経済効果としては、マックスで年間2兆円と先述しましたが、これに参列側固有の支出経費を加えます。参列者が負担するお香典は葬儀を出す側の葬儀費用に充当されるため、ここでは加算しません。
これを算式にすると、
葬儀行事の経済効果A2=(1年間の死亡人数B)×(一回当たり平均葬式費用F)+(交通費及び香典袋等付随費用E)×(葬儀一回当たり平均参列人数C)
ところで、上記A1、A2の算式で把握困難な数字があります。C の葬儀一回当たり平均参列人数はどのような統計データからも探せません。個別の葬儀については、葬儀社の方が遺族の方に年賀状等の受取枚数やらをヒヤリングしながら会葬御礼状の印刷枚数を決定しているようです。港区で創業140年の葬儀社・牧野総本店さんからお話をうかがったところ、最近は身内のみで行われる場合が増え、せいぜい参列者は20人、多くて30人くらいだとのこと。正式に通知を出して葬儀をする場合でも、100人も来ないそうです。増上寺等の大寺院で行う1000人規模の葬儀は、年に数回もないとのことでした。そこで、当てにならない、私の全く個人的判断で、平均葬儀参列人数を70人と仮定して、葬儀行事の経済効果A2の算式を計算することとします。
B=1年間の葬儀回数(死亡人数の9掛けと仮定)平成20年114万人×0.9=1,026,000回
F=一回当たり平均葬式費用 (財団法人日本消費者協会報告×0.9) 1,800,000円
E=交通費及び香典袋等付随費用 1000円と仮定
C=葬儀一回当たり平均参列人数 上記の判断から 70人
葬儀行事の経済効果A2=1、026、000人×1,800,000円+1000円×70人=1,846,800,070,000円
年間平均動員人数は71,820,000人(1、026、000人×70人)ということになります。すなわち年間1兆8千万円の経済的波及効果があるということになります。
すごいと思いませんか? 死亡してから2日間(48時間)後には、7千万人以上の人たちが動員され、2兆円近いお金が動いているのです。上記計算では、一回の葬儀の平均動員数を70人としましたが、ちなみに有名人のベストセブンについてはネット上で下記の記載がありました。
1位 X-JAPANのHIDE |
(享年33歳) |
50,000人 |
1998.5 |
2位 美空ひばり |
(同52歳) |
42,000人 |
1989.7 |
3位 吉田茂 |
(同89歳) |
40,000人 |
1967.1 |
4位 尾崎豊 |
(同26歳) |
37,500人 |
1992.4 |
5位 渥美清 |
(同68歳) |
35,000人 |
1996.8 |
6位 黒澤明 |
(同88歳) |
35,000人 |
1998.9 |
7位 石原裕次郎 |
(同52歳) |
33,500人 |
1987.8 |
連続三回も葬儀に参列すると、つい余計なことを考えてしまいました。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。貴重なお時間を割いていただいたことで失われた経済効果を考えると、申し訳のしようもございません。
執筆者プロフィール
渡辺俊之 Toshiyuki Watanabe
公認会計士・税理士
経 歴
早稲田大学商学部卒業後、監査法人に勤務。昭和50年に独立開業し、渡辺公認会計士事務所を設立。昭和59年に「優和公認会計士共同事務所」を設立発起し、平成6年、理事長に就任(その後、優和会計人グループとして発展し、現在70人が所属)。平成16年には、優和公認会計士共同事務所の仲間と共に「税理士法人優和」(事業所は全国5ヶ所)を設立し、理事長に就任。会計・税務業界の指導者的存在として知られている。東証1部、2部上場会社の社外監査役や地方公共団体の包括外部監査人なども歴任し、幅広く活躍している。主な編著書に『一般・公益 社団・財団法人の実務 ―法務・会計・税務―』(新日本法規出版)がある。
オフィシャルホームページ
http://www.watanabe-cpa.com/