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第10回 移民ビジネスのススメ (後編)
~先行国の失敗に学んだ日本モデルを~

 
 
 
 ここまでの二回は、世界有数の移民大国であり、移民ビジネスで成功しているオーストラリアを先行例として、日本に移民ビジネスを勧める趣旨で書いてきました。すでにおわかりのように、移民ビジネスはある意味で諸刃の剣です。実際にオーストラリアでもあちこちに綻びが出始めているのは見てきたとおりです。その根本的な原因は一体何だったか? それを正しく理解することで、日本はより良い移民ビジネスを展開できると思います。
 
 

政府の無計画な移民受け入れ

 
 数年前まで、いわゆるリーマンショック以前のオーストラリアは、オーストラリア史上最高とも言える好景気に沸いていました。日本風に言えばバブルの状態が続いていました。株価は天井知らずの上昇カーブを描き、10%が当たり前だったオーストラリアの失業率が4%台まで下がったのもこの時期でした。また為替も、日本円に対し最高値を記録しました。この時期が、2000年に開催されたシドニーオリンピックから始まった好景気の頂点だったと言えます。中国などの台頭の影響で世界的に資源ブームが起こり、豊富な天然資源を持つオーストラリアには海外からどんどん資金が流れ込みました。鉱山関係の企業に引っ張られて、銀行、運輸業界もその恩恵を受けました。好景気になれば人手が足りなくなるのは、古今東西変わらない話。ましてやオーストラリアは国土が日本の20倍もありながら、人口はせいぜい東京都と同じくらいです。とてもではないですが、国内だけの労働者だけでは、企業の求める人材を質・量ともに確保できませんでした。
 
 そこでオーストラリアは、人手不足解消の手段を海外からの移民に求めました。しかも、当時政府が定めた移民基準の一つに、「オーストラリアの学位を取得すれば優先的に永住権を発給する」 という項目がありました。これは労働力を呼び込むという政策目的からすると不可解です。職歴を十分に保持している人間よりも、オーストラリアの学校を修了している人間を優先するというのは、企業の現場からは理解しがたい発想です。背景には、永住権取得目的でオーストラリアの学校に通学させ、莫大な授業料を留学生に落とすようにさせるため、教育産業から何らかの圧力があったとの噂もあります。
 さらにおかしな点は、大学、大学院等の高等教育機関を修了している人に優先的に永住権を発給するのはわかるとして、日本の専門学校にあたる水準の教育機関を修了した人も、政府が指定する職業に関連していれば永住権の申請・取得が可能でした。専門学校が大学、大学院よりも一概に下だとは言えませんが、専門学校は比較的簡単に入学が可能で、その際に求められる英語力も、大学等に比べると低く設定されています。中には、永住権取得目的の学生を集めるために、入学と卒業のハードルを思いっきり下げる専門学校もありました。いずれにしても当時のオーストラリアは、教育産業を含む産業界から求められるままに、労働力確保を名目に、移民政策を積極的に推進しました。
 
 しかし、景気は生き物であり、水物でもある。リーマンショックの余波はオーストラリア経済にも大ダメージを与え、バブルは終了。企業は生き残りをかけて、人材整理の大鉈を振り、結果、失業率は急上昇。ここで失業率アップに貢献したのは何を隠そう、政府が積極的に受け入れた移民たちでした。英語がネイティブで、職歴がある、現地の人間でさえ就職が困難な時期に、英語力の劣る学校を出たての職歴のない人間が、仕事を見つけられるはずがないからです。
 また、無計画な移民政策は民族間の対立を生み出し、治安の低下を招きました。オーストラリアは各種の手厚い補償を行っている国ですが、移民者に対する補償の増加が国庫を圧迫している事実もあります。これらの事柄から、移民大国オーストラリアが移民受け入れを渋りだしたのには、母国の人間の雇用確保、治安の安定、財政健全化などの狙いが考えられます。
 
 
 

日本の移民政策と移民ビジネスのあり方

 
 日本がオーストラリアと同様に移民の受け入れを表明したら、恐らく数万人規模の応募があると予想されます。この人たちを対象とすれば、未来永劫錬金術の如くお金を生み出す、ドル箱になる可能性が高いです。
 ただ、移民大国として実績のあるオーストラリアでさえ、様々な問題に直面しています。リスクは極力下げ、最大限の利益を生み出すために、日本型の移民政策を構築する必要があります。「移民」 という言葉自体、まだまだ日本人にとっては得体の知れない響きで、多くの人がアレルギーを持つと考えられますが、それは恐らく一時的なことで、膨大な利益が生み出されるとわかれば、考えに変化が出るかもしれません。となるとその利益を求めて教育界だけではなく、経済界からも、強烈なプレッシャーを受ける可能性があります。目先の利益に囚われてこれを鵜呑みにしてしまうと、オーストラリア同様の問題に直面してしまいます。
 
 日本国籍を取得すれば、移民は健康保険や教育費、国からの保障などを受け取る権利を有します。日本に在住していると気が付かないことですが、日本の医療システムは世界最高峰です。高い医療費を支払えば最高の医療を受けられるのは万国共通ですが、日本の場合には比較的安い金額で、そこそこ高い医療を受けられる。費用対効果から考えて、ここまで国民負担の少ない国は世界中を見渡しても限られています。様々な国の人たちに話を聞くと、これが目当てで日本国籍を取得しようと考える人も多く、歯止めなしに受け入れていると国の医療費負担も馬鹿になりません。
 そう考えたとき、永住権から日本国籍への変更をすぐに許可するのではなく、5年程度何ら問題なく日本で生活を送り、就労し、税金をある一定以上納めた人に限り国籍変更を認めるといった、段階を追った審査を行うべきだと思います。また、日本に帰化した人間が、その後日本に家族を呼び寄せたり、配偶者にビザを発給するのにも制限を設け、一定の段階を経てから日本国籍者と同等の権利を得るようにすべきです。そうしないと、財政を圧迫する可能性があります。
 移民政策を実行し、移民ビジネスで巨額の利益を上げても、保障などで出費してしまっては本末転倒。移民が引き起こすリスクばかり高まり、移民ビジネスを行うメリットがなくなってしまいます。
 
 
 
 他国の失敗例を参考に、欠点を補い、改良するのは日本人の最も得意とするところ。近い将来日本にも移民ビジネスのモデルが定着し、日本経済の起爆剤になることを信じています。


 
 次回は日本人の長所である勤勉さが活かせる業種について書いていきます。
 
 
  南半球でビジネスを考える ~オーストラリア在住・日本人経営コンサルタント奮闘記~
第10回 移民ビジネスのススメ(後編) ~先行国の失敗に学んだ日本モデルを~

 執筆者プロフィール  

永井政光 Masamitsu Nagai

NM AUSTRALIA PTY TLD代表 / 経営コンサルタント

 経 歴 

高校卒業と同時に渡米、その後オランダに滞在し、現在はオーストラリア在住。永住権を取得し、2002年にNM AUSTRALIA PTY TLDとして独立。海外進出企業への支援、経営及び人材コンサルティングを中心に活動中。定期的に日本にも訪れ、各地で中小企業向けの海外進出セミナーなどを行っている。

 オフィシャルホームページ  

http://www.nmaust.com/

 ブログ  

http://ameblo.jp/nm-australia/

 
 
 
 

 

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