「自分はアメリカ的な視点になろう」と決めた
6月下旬の東海岸商業視察セミナー
日本は基本的に平等だと思われている。思っているのは他でもない、日本人自身だ。だから、今現在弱い立場で苦しんでいる人が目の前にいても、できないお前が悪い、努力が足りない、好きなことをやれ、這い上がれ、なんてことを誰にでも平気で言う。「社会が平等なんだから個人で差が出るのは本人の努力が足りないせい」という論理をみんなで信じている。
そして経営者たちは、この短絡的な論理が社会通念になっている限り、「できない人を育てる」とか「弱い人たちのことも考える」という、力のある人が当然感じるはずの責務を免責される。そして責務を逃れることで出たに過ぎない利益を金融機関や株主に見せて褒められて、70になったら雇われ社長を引退して一丁あがりだ。民族が同じで、誰でも日本語が話せて、受けてきた教育もほぼ共通という前提だからこうなる。実態はもはや違うのに。
これがアメリカだと、国に移住したばかりの人もいるし、そういう人は英語を話せないし、教育だってバラバラだ。つまり、本人の能力と関係なく弱い立場になる人が一定数いる、という前提がみんなに共有されている。事実として社会は不平等なものだとわかっている。
するとどうなるか。強い人たちが弱い人たちのこともちゃんと考えるようになるんだよね。
Amazon GOへの市民の目線と
Amazonのフォロー対応
AmazonGOは日本では無人店の先駆けとして、ITを駆使した新時代の店舗として好意的にとらえられている。でも、Amazonの母国であるアメリカでは、あまりいい雰囲気ではとらえられていない。現地でガイドさんと話していてその理由がわかった。一般の市民たちは「そこまでして労働者階級から働く場所を奪って、どうするんだ?」と思っているんだよ。
AmazonGOが最近になって追加で現金でも支払いができるようになったけど、Amazonがあれをやった理由も似た文脈で理解できる。ご存じのとおりアメリカはカード社会だ。買い物の9割はクレジットカードで支払いをする。一方で、カード利用歴がなかったり、そもそもクレジットカードをつくれなかったりする貧困層の人たちがいる。
そういうときアメリカは、その人たちを無視するのではなく、その人たちも市民ですよね、という立場をとる。またその人たちの側からも、「俺たちだって市民だぞ!」という主張が上がる。だからAmazonは当初キャッシュレス店舗だったAmazonGOに現金決済のシステムを入れたんだ。これが「強い人が弱い人のことも考える」というアメリカらしさを感じたことの一つだ。
現場で働く人たちが
めちゃカッコよくなっていた!
特に印象的だったのがDean & DeLuca(ディーン・アンド・デルーカ)だ。日本にも展開している食品スーパーで、発祥の地のニューヨークで新しいタイプの店を出したと聞いたから見に行った。そしたら・・・考えたよねぇ、惣菜専門の店なんだけど、惣菜コーナーの壁をガラス張りにして、厨房を外の客が丸見えで見られるようにしていた。中のスタッフはみんな清潔なユニフォームをピシッと着て、テキパキと調理をこなしている。バイキングのセルフスタイルが当たり前の時代にあえて客の注文を聞くコーナーを設けてスタッフを配置している。やってることは言われた品をコミュニケーションを交わしながら容器に盛り付けて渡すだけなんだけど、その手際がなんともいえず洗練されていて、めちゃカッコいい。
なんだろう、なにが彼らを変えたんだろう、としばらく考えて気付いた。テクノロジーを活かして仕組み的に考える“科学する姿勢”が、日本の企業とはやっぱり違うんだよね。
日本では労働集約型ビジネスの現場管理に科学を取り入れるときは「見張り」を目的にする。性悪説に立った、企業が労働者を監視するための視線の使い方だ。それに対してアメリカは、労働者が現場で働く場を設け、しかもテンションを上げて働けるようにするために科学を使う。つまり、視線は視線でも、機械(=監視カメラ)の冷たい視線ではなく、人間(=オーディエンス)のホットな視線を使う。
ガラス張りにすることでお客さんはスタッフの動きをエンターテインメントとして鑑賞できる。それがカッコよければSNSで動画が拡散されてファンが付くことだってある。SNSだから当然彼ら自身もそれを見ている。グーグルマップやフェイスブックページで直に評価されれば素直に嬉しい。もっと頑張ろうという気になる。その結果、今まで厨房の奥で「どうせ俺らは労働者だ、誰も俺らのことなんか気にかけちゃいない」と思っていた人たちが、働く喜びを感じるようになった。彼らの労働の価値をテクノロジーが表に引っ張り出したんだよ。だからあんなにカッコよく変われたんだ。
人間を喜ばせられるのは人間
トップがそれをわかっているか
アメリカが偉いのは、企業経営者のような強い立場の人たちが人間の労働の価値をリスペクトして、人間が働く場所をちゃんと創出しているところだと思う。また市民の側も、野球でいえばカッコイイ主役はあくまでも選手であって、球団オーナーが主役なわけじゃないとハッキリさせているところが偉い。昔日本の某球団のオーナーが「選手ごときが」という発言をしたけれど、あんなに人間の価値をさげすんだ言葉はないと思う。アメリカであれを言ったらどんな経営者も社会的制裁で終わりですよ。
6月17日のブログで書いた通り、日本は何でもかんでも無人化に進んでいるからこそ、私は性善説にもとづき、テクノロジーを使って、労働集約型ビジネスを極めていくつもりだ。人を喜ばせることができるのは人。その環境をつくるのがトップの責任だ。力がない人を自己責任論で切り捨てる社会に未来はない。アメリカの変化を肌で感じて、あらためてそう思います。
■7月25日 第37回おおさか勝人塾
事務局/経営コンサルティングアソシエーション
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■7月26日 第16回とうほく勝人塾
事務局/やまはる
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■8月7日 第73回とちぎ勝人塾
事務局/日本販売促進研究所
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■8月21日 第1回おかざき勝人塾
事務局/岡崎商工会議所
■8月23日 日経トップリーダー「社長力アップ講座」
事務局/日経BP
https://www.nikkeibp.co.jp/seminar/atcl/vs/nv_190823/
■8月26日 第31回わかやま勝人塾
事務局/藤原農機
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第12回「ニコニコチャンネル ニッポン勝人塾」(7/22 15:00 – 16:00)の告知
個別支援等々佐藤勝人への問合せは
https://jspl.co.jp/contact/
vol.33 変わるアメリカ、変わらない日本
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ代表取締役副社長/日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師/商業経営者育成「勝人塾」塾長
経 歴
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に「地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法」(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。
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