B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS


第6回 将来の借入を予約できる新制度、ご存知ですか?


 
 ここまで税金の話が続きましたので、今回は「資金調達」関係の話をします。
 昨年のリーマンショック以後、多くの業界で売上が低迷する事態に陥っているのではないでしょうか。中には、「何とか前期は黒字決算に持ち込めたけれど、今期は間違いなく大幅赤字となりそうだ」という会社もあるでしょう。
 そこで、そういった「今期決算が心配」という会社の資金調達について、大事なポイントをお伝えします。
 
 
■黒字のうちに借りておく
 現在の大不況では、どの企業でも「今期決算の見通しが予想以上に悪い」「大口取引先が無くなりそうだ」「債務超過に陥るかもしれない」といった事態は起こりえます。
 こんなときはぜひ、「黒字のうちに借りておく」という鉄則を覚えておいてください。「黒字のうちに」というのは、今赤字でも「去年の黒字決算書が使えるうちに」という意味です。
 金融機関は、毎月の試算表も見ますが、何より「決算書」を重視します。ということは、たとえば、昨年黒字で今期赤字が予想されるというときには、昨年の黒字決算書が使える今期中に金融機関に融資依頼をしておくのです。もちろん、現時点での試算表の提示も求められるでしょうが、融資を実行してくれる可能性は十分にあります。決算の3ケ月以上前であれば、昨年の決算書が使える時期だと思われますので、該当する会社は急いで対応してください。
 また、この方法は、昨年が小幅な赤字で今期が大赤字というケースにも、同様に応用できます。
 
 
■予約保証制度の創設
 今期決算の予想が悪く今後の資金調達が心配な会社にさらに有効な対策が、中小企業向けの資金調達手段として新設された「予約保証制度」の活用です。
予約保証制度とは、将来に発生するかもしれない資金ニーズに対し中小企業が予め融資保証枠を確保できるようにする新制度です。例えば、「今すぐ借入する必要はないのだけど、今後はどうなるかわからない」というような会社が、現時点で借入枠を予約することができるのです。これは、黒字倒産が増えている現状を国が憂えてできた制度でもあります。
 借入保証枠を予約したからといって、実際そのときになって資金ニーズが発生しなければ、もちろん借入をする必要はありません。また、予約をした限りは、(倒産間際であるなどの特殊な事情がない限り)借入はほぼ100%可能となるようです。さらには、借入保証枠の予約をしたからといって、借入を実際したわけではないですから、借入に伴う費用は発生しません。
091101_b0006_ex01.jpg

図 予約保証制度(中小企業庁HPより 
http://www.meti.go.jp/press/20081107008/20081107008.pdf)

 では、デメリットはないのでしょうか。あるとしたら、予約にもとづいて実際に借入をしたときに通常の保証料率(1%前後)に上乗せで保証料率がかかる点です(図参照)。ただ、上乗せ保証料率は0.3%程度だそうですので、あまり大きなデメリットとは言えないかもしれません。
 この「予約保証制度」は、昨2008年11月21日に施行されましたが、多くの中小企業がその存在を知らないようです。保証料率の上乗せのデメリットもありますので全ての企業に対し有効とはならないでしょうが、今後の中小企業における資金調達メニューの1つに加えておくべきものと思われます。
 
 
 
 
 

 執筆者プロフィール 

今村仁 Imamura Hitoshi

マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員

 経 歴 

京都府京都市出身 立命館大学経営学部企業会計コース卒 会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。その後2003年今村仁税理士事務所開業、2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。税理士・宅地建物取引主任者・CFP等ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広くサポート。大阪・京都・神戸・滋賀・奈良・東京・横浜を中心に活動。マネーコンシェルジュ税理士法人(旧今村仁税理士事務所)

 オフィシャルホームページ 

http://www.money-c.com/

 

KEYWORD

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事