「徒然泣き!人生」 一職業会計人の“軒昂奉仕” vol.8
4、お中元が宅配で届いたら、会計士は何を考えるか?
お中元の季節も過ぎ去りましたが、自宅で宅配業者からお中元の品を受け取るたびに考えていることがあるんです。百貨店等から送り主 (買い手) の依頼で送られてくるこのお中元の品の売上計上時期はどの時点が正しいのだろうかと?
ケース1 送り主(買い手)が百貨店等から購入した日
ケース2 送り主(買い手)が指定する受取人(お中元の品を貰う側)へ、百貨店等が運送業者に発送依頼した日
ケース3 お中元をいただく受取人が実際に受領した日
現在の慣行では、事務手続きやシステム管理上の問題からケース1で売上計上している事例が多いと考えられます。でもそれでいいのだろうか?
国際会計基準
IAS18によると、収益認識要件として 「物品の所有に伴う重要なリスク及び経済的価値が買手に移転すること」 を求めていますが(第14項)、百貨店等は送り主からの対価の受領時点では、物品は受取人に引き渡されていません。運送業者が運搬途中で事故に逢い、引渡予定物品が破損してしまうことも考えられます。従ってお中元をいただく私の立場からすると 「物品の所有に伴う重要なリスク及び経済的価値が買手に移転」 していないことになります。
読者の多くは、そんなことどうでもいいでしょ?とお考えかもしれません。でも決算日である3月31日に10億円の買い物をし、配送業者のお届け予定日が4月2日であったと仮定します。運送途上で事故に遭い、10億円の貴重な品物が全損し、同一物が実際にお客の手元に届いたのが4月20日になったとしたら、この3月期の売上は10億円過大となります。この品物の粗利益が2億円で、この会社のこの期の利益が1億円だとしたら、実質は赤字1億円だったことになります。利益が出ていると思って株を買ってしまった上場会社等の株主はいい迷惑ですよね。
ポイントカードやマイレージ、遊園地の年間入場料、富山の薬売り等の話は、紙幅の関係で来月号までお待ちください。会計って、ホント、ややこしいんです。
プロフィール
渡辺俊之 Toshiyuki Watanabe
公認会計士・税理士
経 歴
早稲田大学商学部卒業後、監査法人に勤務。昭和50年に独立開業し、渡辺公認会計士事務所を設立。昭和59年に「優和公認会計士共同事務所」を設立発起し、平成6年、理事長に就任(その後、優和会計人グループとして発展し、現在70人が所属)。平成16年には、優和公認会計士共同事務所の仲間と共に「税理士法人優和」(事業所は全国5ヶ所)を設立し、理事長に就任。会計・税務業界の指導者的存在として知られている。東証1部、2部上場会社の社外監査役や地方公共団体の包括外部監査人なども歴任し、幅広く活躍している。
オフィシャルホームページ
http://www.watanabe-cpa.com/