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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

サッカーの隆盛と歩む男の
経験に裏打ちされた観察力

 
 
井原氏は、「人との接し方には、『こうすれば大丈夫』 という正解はない」 と語る。だからこそ、日常の中で各人の行動や癖を把握し、その人の個性を自分なりに感じ取って、「どういう行動を選択すべきかを考えて行動してきた」 のだ。いずれにしても、個性がバラバラではチームは成り立たない。そこで、所属チームと日本代表の、どちらのキャプテンを務めるのが難しかったかを聞いてみた。
 
 

関わる人間全てに一体感が生まれるのが理想

 
 個性がまとまり、チームが一つになる難しさという意味では、所属チームのほうが大変で、日本代表の時はそれほどでもなかったですよ。そのぶん、代表の試合で背負うプレッシャーは所属チームでのそれとは全く質が異なる、筆舌に尽くしがたいものですけど(笑)。代表は、所属チームを牽引する実力者の集まる場ですから、普通の選手たちとはちょっと意識が違うんです。それに、代表に召集されることは選手にとって大変光栄で得がたい経験。だから、集まった時点でチームとしてみんなが同じ方向を向いているんですよ。全員が行動を共にする時間もクラブチームほどには長くないですから、たとえ試合に出られなかったとしても、「今度は使ってもらえるように、また所属チームで頑張ろう!」 という気になる。所属チームに戻れば、試合に出られなかった悔しい気持ちをある程度はリセットできますしね。
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 でも、選手だけがチームとしてまとまっていればいいのかと考えると、それは違いますよね。現場の人間だけが団結していて、それを管理している会社側と理念が共有されていなければ、同じ方向を向いているとは言えないでしょう?
 私が所属する柏レイソルを例にすると、チームが成長して勝利を得るためには、現場の選手、監督、スタッフだけでなく、クラブチーム全体が同じ方向を見ていなければダメなんです。試合で戦うのは選手ですけど、彼らが最高のパフォーマンスを発揮できるようにお膳立てする人たちが裏方にはたくさんいるわけですから。彼らも一体となった組織こそが、真の常勝軍団として勝利し続けられるんです。細かいことを言えば、クラブハウスの食堂で働く人、掃除をしてくれている人もチームの一員ということですね。
 柏レイソルに関わる方々には、そういう気持ちがあることを私は感じていますし、そういう方々の熱意や応援してくれる気持ちが選手や我々に伝わるからこそ、いい結果が出せるんですよ。柏レイソルを応援してくれている、サポーターの皆さんがその最たる例です。彼らの後押しがあってこそ、チームは力を得られる。だから、サッカーというスポーツがさらにホームタウンに根付いて、地域ぐるみで柏レイソルを勝利に導こうという熱気が今以上に高まれば、さらに強いクラブになるでしょうね。
 
 
 
日本サッカーは、1993年のJリーグの発足以降、急激なレベルアップを遂げている。井原氏は現役時代、日本サッカーリーグからJリーグ、代表ではW杯予選を突破できずにいた時代から悲願の本大会出場を叶えるまでと、日本サッカーの成長を現場で体感、牽引してきた人物の一人だ。そんな井原氏の目には、今の若い選手らはどのように映っているのだろうか。
 
 

育成レベルのアップが日本の成長の証

 
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 私が現役だった頃と比べると、最近の選手の技術レベルはかなり高くなっていますよ。フィジカル的には同じ日本人ですから、さほどの変化はないですけどね。日本のサッカーが進歩したのは、トレーニングや指導法の水準が上がったことが大きいと思います。つまり、指導者を育てる指導。このレベルが上がったのだと。さらにそうした指導の下で、若い頃から世界中のチームと対戦できる環境ができてきたことも大きい。現在は小学生のチームですら海外遠征をしますからね。私が子供の頃はそんなことは考えられなかった(笑)。それに、世界中の一流プレイヤーのテクニックをいつでも映像で見られる環境があります。お手本になるプレーをいつでも見られる。これも技術向上にはすごく役立っているはずです。
 指導者のレベルが上がったり、世界のサッカーに触れる環境が増えたりしたのは、Jリーグができ、日本代表がW杯に出場できるようになって、サッカーに興味を持ってくれる人口が増えたからなんでしょうね。だから、自分自身がそういう歴史をつくってきた一員であることに対しては誇りもありますし、かけがえのない経験ができたと思います。そうやって考えると、恵まれた現役生活でしたし、戻れるものなら、今からでも現役に戻りたいくらいです(笑)。
 現役の頃は、キャプテンとしての役割があったとは言え、自分が力を発揮するために何をするべきかを優先していればよかった。そして、積み重ねてきたものを発揮できるか否かは、自分自身にかかっていた。今は、選手らに指示を出して、監督が要求しているプレーを体現できるように教え込まなければいけない。これは本当に難しいことで、日々勉強の毎日です。なかなかうまく伝えられず、もどかしさを感じることもあります。自分がプレーするのであれば、イメージした動きを体現するためにどうすればいいかは自分でよくわかる。しかし、そのイメージを人に伝えるというのは、簡単なことではないんですよね。
 
 
 
 

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