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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

サッカーの隆盛と歩む男の
経験に裏打ちされた観察力

 
 
井原氏が言うように、自分ではできることでも、それを他人に説明するのは難しいものだ。しかし逆に考えれば、優れたプレイヤーは自分の強みを自覚するだけでなく、指導者が言わんとすることをしっかりと理解し、自分のプレーに反映できる選手のことなのではないか。
 
 

組織で力を発揮する選手とは

 
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 11人の選手が有機的に連動し、質の高い動きができるチームをつくるためには、単に技術の高い選手を集めればいいのかと言えば、そういうものでもないです。たとえばボールを操るテクニックに秀でた選手がいたとします。彼にボールを渡すと、誰も真似できないようなボール扱いをする。でも、それをチーム戦術の中で発揮できないようであれば、その選手はサッカーがうまいと言えるかは疑問ですよね? ましてや、彼のような選手を11人集めてもチームとして成立するかといえば、難しいはずです。 
 逆に、ボール扱いはさほどのレベルになくても、監督の要求を理解して実行し、チーム戦術の中に自分の個性を上乗せしてチーム力を引き上げる選手もいる。私はサッカーがうまいと評価されるのは、後者だと思います。現在海外で活躍している日本人選手は、日本人の長所である規律を重んじ、勤勉なプレーをすることが評価されている部分もありますよね。彼らは自分のストロングポイントと日本人としての特性を、チームの中で求められていることを理解したうえで発揮できているから評価されているのだし、結果にも現れている。自分のオリジナリティをチームに還元できているわけです。様々な個性を有する選手たちが監督の力でミックスされたものがチーム力として現れる。そして、その組織の中で突出したプレーをできる選手が、うまい選手と言えるのでしょうね。
 私は今、柏レイソルに所属して、現場スタッフの一員として仕事ができていることに楽しさを感じています。自分がプレーをしないと言っても、勝つことを目的に仕事していることに変わりはありません。そうであれば、現役時代と同じく、負けて嬉しいわけがないですよね。勝ちたいからこそ向上心を持って日々の仕事に取り組めるんですから。
 もともと、現役引退後も、ずっとサッカーの仕事に関わるつもりでした。私にはそれ以外のことはできないと思うし、何よりも、現役時代に非常にいい経験ができたので、それをサッカー界に還元したいと思っていましたし。引退直後にはサッカー解説者として少しだけメディアの仕事をしながら、外側からサッカーを見る機会も持てて、それもいい勉強になりました。
 
 
 
幼い頃から、レギュラーになるため、試合に勝つために数々の競争に勝ち抜く。その中で生き残るほんの一握りの選手だけがプロになり、日本を代表する選手になる。現役引退後も、競技をするのとは別の形でサッカーのプロとして成長を続けている井原氏。仮に指導者になったとすると、「井原が監督をやるなら、結果を出して当たり前」 と言われるような、プレッシャーと向き合うことになる。それでも井原氏は 「チャレンジしたい」 と迷うことなく口にする。
 
 

チャレンジしなければ何も残らない!

 
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 チャンスがあれば、監督の仕事はしてみたいです。でも、それまでに今の職務を全うしながら、とにかく経験値を蓄えないと。しかも、その経験でありノウハウが指導に結びつかなければ意味がない。一人の選手に相対する仕方、チームに向き合う姿勢、それぞれの場面で何をどう判断して、どういう行動に結びつけるのかは、いろいろな選択肢があります。それを、その場の状況に合わせて臨機応変に発揮できるようになるのが理想ですよね。もちろん、自分の中に確固たる信念があって、そのやり方を貫くことで成功する指導者もいるでしょうけど、私は、そういうやり方は自分には向かないと思うので。
 JリーグでJFA公認のS級ライセンスを持っている人はかなりの数にのぼります。まずはその中の人材と、監督のポストをめぐって競争があるわけです。ある意味では、現役時代より競争が激しいですよ。選手の時は自分との戦い、自分自身を乗り越えるための努力をしていたわけですけど、指導者の場合、まずはその立場になるだけでも、外部の要素がいろいろと絡んできますから。仮に私が監督になれたとしても、どれだけ実績を残せるかは未知数ですよね。現役時代やこれまでの間に、様々な監督の下でお世話になっていますが、あの仕事の過酷さは見ているだけでも、本当に大変だろうなと思いますし。
 でも、成功しようが失敗しようが、チャンレジしなかったら何も残らないんです。だからこそ、やると決めたならば、「俺は絶対にできる」 という自信を持ってやります。やらないで逃げるなんて選択はあり得ないですよ。だって、自分に負けるのも、勝負事に負けるのも嫌じゃないですか。将来の目標を見据えると、今の仕事はすごくありがたい経験になっています。だから、レイソルのために全力を尽くし、これからもチームに貢献していきます。
 
 
 
 
(インタビュー・文 佐藤学 / 写真 Nori)
 
 
 
 

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