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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
『イン・ザ・ハイツ』で演技に挑戦することになったMicroさん。演じることを通じて、プライベートでも大切なことに気が付いたという。
 

心を柔らかくしてセリフを受け止める

 
演技で難しいと感じたのは、相手のセリフをちゃんと受け止めてからリアクションすることです。僕は普段誰かと話していても、会話の途中から「次にこんな話をしよう」と頭の中で展開してしまうんです。でも、舞台上では相手の言葉で自分の心が動いたことを表現しなければいけません。それをなんとか実践しようとする中で、これは普段の会話から気を付けないといけないなと思いましたね。すぐに、「もっとおもしろい話をしよう」と頭の中で考え始めてしまうんですよ(笑)。
 
人の話を最後までしっかりと聞くこと。心を柔らかくして会話や芝居に臨むことを学びました。最初の頃は手探りだったこともあり、前のめりになっていたのでなかなか難しかったですよ。今思うと、ちゃんと相手のセリフを聞いていたのか疑問になることもありました。ただセリフを言い終わるのを待っているだけになっていたこともあったかもしれません。大事なのは、どう受け止めるかなんですよ。
 
最初に『イン・ザ・ハイツ』への出演のお話をいただいたときは、ラップとダンスが求められているのならば、という気持ちで挑戦を決めました。実際にやってみてとても難しいと感じたのは、無音の中でセリフを言ったり、歌い始めたりすることです。それが僕にとっては恐怖なんですよ。普段Def Techとしてステージに立っているときは、MCで喋るときにも必ずギターの音などを鳴らしています。その音楽のテンポに合わせて喋ることが、僕にとって当たり前だったんです。指針となるものがない状態で声を出すことに恐怖を感じましたね。
 
無音の中で声を出すことの恐怖は、今でもなかなか拭えません。でも、それ以上にチームで作品をつくりあげる楽しさがあるんですよ。舞台の楽しみは、演じながら共演者のみんなとコミュニケーションを取ることです。例えば、セリフを言っているときにミスがあったとします。そういうときに誰かが自然と助けてくれることが何度もありました。
 
Def Techとしての活動は、相方であるShen(シェン)との阿吽の呼吸で成り立っています。何かを言うわけでもなく、お互いの求めていることがわかるんです。でも、舞台作品はより多くの人とつくり上げていくものなので、それが新鮮で楽しいですね。関わる出演者やスタッフの方々、誰か一人でも欠けたら根幹から崩れてしまうような繊細さがあると感じています。
 
 
インタビューの中で、「何歳になっても『イン・ザ・ハイツ』に関わっていきたい」と語ってくれたMicroさん。どういったところにそれほどの魅力を感じているのかもお聞きした。
 

一生飽きない作品

 
劇場に観に来てくださる方は、誰しも“自分事”としてストーリーに没入できると思います。それが『イン・ザ・ハイツ』の魅力の一つだと思うんです。例えば、『ロミオとジュリエット』はとても素晴らしくておもしろい作品だけど、自分に起こりえる話ではないですよね。『イン・ザ・ハイツ』は、登場人物全員に共感できるんですよ。自分もハイツにいてもおかしくないと思えてくるんですよね。
 
客席にいながら、まるで自分もそこにいるような感覚が得られると思います。もちろんウスナビたちとは国籍が違うし、住む環境も違う。でも、そういったボーダーをなくしてくれる作品です。『イン・ザ・ハイツ』には特別なパワーを持った人が出てくるわけではないし、推理劇のように殺人事件が起こるわけでもありません。だからこそ、自分と近い距離で楽しんでもらえると思っています。
 
今後年齢を重ねていく中で、ずっと『イン・ザ・ハイツ』に関わっていけたら幸せですね。ウスナビ役じゃなくても良いです! キャストじゃなくても、一緒に作品をつくり上げるチームの一員になりたい。それくらい、大好きな作品なんですよ。映画を観て、より『イン・ザ・ハイツ』を楽しめたように、何度観ても飽きない物語です。僕は一生飽きることはないと確信しています。