イメージを越えた役柄に挑戦し
俳優として飛躍していきたい
俳優 勝地涼
5月2日からPARCO劇場にて上演されるPARCO劇場開場50周年シリーズ『夜叉ヶ池』。1913年に日本幻想文学の先駆者といわれる泉鏡花が発表し、今なお愛され続けている戯曲です。その『夜叉ヶ池』の主人公である萩原晃を演じるのが、俳優の勝地涼さん。「泉鏡花さんの書いた美しいセリフをしっかりと表現したい」と語る勝地さんにインタビューし、舞台の楽しさ、俳優業の魅力についてうかがいました。
セリフの美しさを伝えられるように
『夜叉ヶ池』というタイトルの重々しさや、泉鏡花の作品と聞くと、「難しい作品なのかな」というイメージを持つ方が多いかと思います。僕自身、最初は少し身構えて台本を読みました。すると、セリフの美しさに圧倒されたんです。その場の情景を説明するセリフも多いものの、ただの説明ではなく、イメージを大きく広げるような幻想的な美しさがあるんです。
ただ、まだまだ体にセリフが染み込んでいないと思っています。これからより多くの稽古をすることで、セリフの持つ美しさを自然と表現できるようにならなければいけません。今回の稽古では、今まで経験した舞台よりもみんなで台本を広げて本読みをする、いわゆるテーブル稽古に時間を費やしています。演出を務める森新太郎さんは、泉鏡花さんの研究者のような方なんです。稽古というよりも、授業を受けているような時間です。
僕が演じる萩原晃は、竜神と人間の約束を守るために鐘楼守を務める人物です。ユーモアのある男だと感じています。稽古を通じて、だんだんと晃の気持ちもわかるようになってきました。僕とは似たタイプではないのですが、なぜ彼が鐘をつくようになったのか、どういう正義感を持っているのかと考えると、「その気持ちはわからなくもないな」と思うんです。
僕は俳優という仕事に心血を注いでいて、子どももいます。だから、今は何があったとしても遠く離れた地に留まることはありません。でも、そういう状況じゃなかったら、晃のように故郷から離れた土地で、使命感を持って何かに取り組むこともあったかもしれないなと感じています。そういった晃の感情を、お客様に伝えられるように表現していきたいです。
僕が座長を務めるのは珍しいので、そういった部分も楽しんでもらえたら嬉しいです(笑)。脇役を演じることが多い中で、最近は「主役をやりたい」という気持ちを口に出すようにしていたんです。声に出して言うことで、夢は叶うんだなぁと実感しました。