選手の特性を見極め
一人ひとりに合った指導を
プロ野球コーチ 阿波野秀幸
2023年シーズンから、読売ジャイアンツの一軍投手チーフコーチに就任する阿波野秀幸さん。大学を経てドラフト会議で読売ジャイアンツ、横浜大洋ホエールズ(現、横浜DeNAベイスターズ)、近鉄バファローズ(現、オリックス・バファローズ)の3球団から指名を受け、近鉄バファローズに入団した。その後、ドラフト指名を受けた3球団すべてに所属し、すべての球団で日本シリーズに出場。横浜在籍時には、日本一を達成している。そんな阿波野さんにインタビューし、野球に対する思いをお聞きした。
選手の特性に合わせた指導を
僕はこれまでにも巨人や横浜で投手コーチを務めさせていただいた経験があります。投手コーチの役割は、ピッチャーの運用と育成ですね。先発や中継ぎなどのピッチャーとしての役割を決めていくんです。コーチもセクションごとに多くの人がいますので、バッテリーコーチやブルペンコーチと相談する必要があります。そして、最終的な決定を監督と私で行うんです。
また、選手たちはチームメイトといえど、ベンチを争うライバルでもあります。誰がより優れた選手なのかも判断していかなければいけません。さまざまな決定を行う中で大事にしているのは、適材適所を心がけることです。僕が現役だった頃は、9回まで完投できる選手や、より速い球を投げられる選手が優秀だとされていました。でも、今ではその前提も変化してきているんです。
現在の日本野球は、投手分業制が定着しつつあります。必ずしも9回投げ切る必要はないんです。そのため、選手の人選は大変ですよ。一軍の登録選手は70名ほどいます。その中で、およそ半分がピッチャーなんです。また、試合に帯同できるのは13名ほど。選手としても、競争が大変な世界ですよね。
僕は指導者になってから、視野を広くもたないといけないと実感しました。選手それぞれの特性を把握していないと、適した役割を与えてあげられません。彼らが一番実力を発揮できるようにしなければいけないんです。指導も、一人ひとりに合った方法じゃなきゃ伝わらないこともあります。選手の成長には、より良い環境が大切です。それをつくってあげるのも、コーチの仕事ですね。
コーチとしてやってはいけないのは、自分のコピーをつくろうとすることです。自分が現役時代に採り入れていた方法を、選手に押し付けてはいけません。また、自分はできたのに何でできないんだと思ってしまうことも危険です。それぞれの特性に合わせた方法を探らなければいけないんですよ。
僕は、解説者として活動させていただいていた時期もあります。そのときには、野球に関わらずさまざまなスポーツ選手の方にお話を聞かせてもらいました。例えば、野球とサッカーは全然違うスポーツですよね。でも、サッカー選手の方が採り入れていたトレーニング方法が合う選手もいるんですよ。