「人の心を動かしてことプロ」だと語る坪井さん。しかしサッカー選手としてプレーし始めた当時は、まだそう考えられていなかったと言う。
考え続けることが大切
僕は22歳のときにプロサッカー選手になりました。当時は、ピッチの上で結果を出せばみなさんに喜んでもらえると思っていましたね。結果がすべてだと考えていたところもあります。順調に試合に出させていただいていたので、驕りもあったかもしれません。
その考えが変わったのは、挫折を経験したからです。なかなか試合に出られなくなったり、日本代表に招集していただいても活躍の機会がなかったり。つらい経験をしたときに、「なぜダメだったのだろう」「プロサッカー選手はどうあるべきなんだろう」と考えたんです。
物事がうまくいっているときに、何も考えずに流れに身を任せていると、いつか壁にぶつかります。僕がサッカーを通じて学んだのは、考え続けなければいけないということ。よく「前を向いて進み続けなさい」という言葉を聞きますよね。でも、僕は一度立ち止まって良いと思うんです。大事なのは、自分の中でどの選択がベストなのかしっかりと考えること。それはサッカー選手に限らず、どの仕事でも同じではないでしょうか。
僕が40歳まで現役でプレーできていたのも、考えることをやめなかったことが一つの要因だと思っています。年齢を重ねると、誰しも体は衰えるもの。その中で、自分が今まで培ってきた経験をもとにどうすれば良いのか考え続けることが大切なんです。体力やスピードが落ちていく中でそれを補ってくれたのは、その場その場でどうすれば良いのか考え、判断をくだす早さだったと思います。
坪井さんに長くサッカー選手として活躍するのに必要なものを聞くと、「考え続けること」のほかに「プラス思考であること」が重要だと教えてくれた。
マイナスな要素でもプラスに変換する
何事もプラスに捉えることはすごく大切です。もちろん僕も「やりたくないな」「めんどうだな」と感じることはたくさんありました。でも、そう思ったものほどチャレンジするべきだと考えているんです。嫌だと感じるものの中にこそ、自分が成長できるヒントやチャンスが隠れていると思いますね。
プロサッカー選手としてプレーしていると、プレッシャーも多くあります。サポーターの方々の期待に応えないといけないですからね。緊張もするでしょう。でも、緊張をしているということは、それだけ集中しているということ。考え方をプラスに変換すれば、緊張している場でも楽しめるようになりますよ。
僕がそういう風に考えるようになったのは、さまざまな失敗があったからです。例えば、日本代表として2006年のFIFAワールドカップに出場した際は、あまりの緊張で試合の記憶がほとんど残っていません。試合に臨むためのメンタルコントロールがうまくできていなかったんだと思います。だからこそ、マイナス要素をプラスに変換することが必要だと感じるようになったんです。できるなら、今のメンタルでワールドカップに出たかったですね(笑)。
今でも緊張することはたくさんあります。今日も写真撮影をするときは緊張しましたしね(笑)。それだけ仕事に対して真剣に取り組んでいるんだとプラスに捉えて楽しんでいます。この先、たくさん失敗することもあるでしょう。ただの失敗で終わらないように、何か学びを得て、プラスに変えていきたいですね。