やるしかないと突き進んできた
日の丸の重み
僕のような選手がプロになれたのは奇跡だと思っています。その奇跡が起きたからこそ、「目標はでかくしよう」と思ったんです。当時の浦和レッズには、日本代表にも選ばれていた福田正博さんが在籍していました。だから僕は、福田さんを目標にしていたんです。福田さんのような選手になれれば、僕も日本代表に選ばれるかもしれないと考えていました。そうして努力をしたら、本当に召集してもらえたんですよ。
日本代表としてピッチに立つのは、普段の試合とプレッシャーが違います。もちろんいつも「サポーターのために頑張らないといけない」と思っていました。でも、日の丸の重みはまた違います。日本中のサッカーファンのために戦わないといけないし、サッカー選手になりたい子どもたちの夢や目標になる存在でなければいけません。
僕は、ワールドカップ出場が懸かっているアジア最終予選のイラン代表戦に途中出場しました。延長戦の末、ゴールデンゴールを決めることができましたが、実はその前に3本もシュートを外しているんです。「なんでサッカーなんてやってしまったんだろう」とすら思いました。あのときゴールを決めていなければ、今の僕はなかったかもしれませんね。
試合に勝ち、ワールドカップ出場が決まったにも関わらず、試合後の控え室は静かでした。まるで負けたチームみたいでしたよ。ワールドカップに出場する喜びよりも、「これで日本に帰れる」という安堵感ほうが強かったんです。全員、負けたら日本に帰れないという覚悟で試合に臨んでいましたからね。
ホテルに戻ってから、岡田武史監督がお祝いのシャンパンを開けてくれたときも、みんな飲まないで部屋に戻ったくらいです(笑)。試合に勝った喜びを実感できたのは、次の日くらいからですね。「本当にワールドカップ行けるんだ」と嬉しさが湧き出てきました。