B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
  ラジオを通じて様々な人にインタビューをしてきたカビラさん。その際に心がけていることとは? インタビューにおいては、どのようなスキルが重要視されるのだろうか。

 

“聞き出すプロセス”こそが商品

 
好奇心を持つことですね。これは仕事でも、仕事じゃなくても同じで、相手に対する興味がないと会話を成立させることは難しい。だって、話をするときに、毎回興味があるように演じるなんて無理ですから。興味を持つと、自然と5W1Hが気になり始めます。「どこで何をしたんだろう?」「それはなぜ?」というふうに。そして僕の場合は、その「どこで何をしたんだろう?」を聞き出すプロセスが商品となるわけです。
 
glay-s1top.jpg
例えば、ラジオを聴いていて、質疑応答が淡々と繰り返されていたらつまらないですよね? だから、ナビゲーターは正しい情報を聞き出すのは当然のこと、インタビューをしている状況を、いかにおもしろくするかを考えないといけないんです。聞き出すプロセスが番組であり、商品ですからね。そのプロセスをおもしろくするというのにも様々な方法があると思います。ラジオの場合、映像はもちろんありません。僕はそれを“制限”ではなく“自由”だと捉えているんです。その自由によって、プロセスをおもしろくできると思っています。
 
視覚というのは、僕たちが五感の中で最も情報を得る部分です。テレビを見ていると、出演されている方が男性なのか女性なのか。どんな服装なのか、どんな面持ちなのか。そういったことが一瞬でわかりますよね。それは、逆に言うと視覚に“囚われている”状態だと思うんです。ラジオの場合、リスナーは聞こえてくる声から想像するしかありません。声のトーン、高低でどれくらいのご年齢か想像する。会話しているときの声色で「すごく盛り上がってるじゃん!」とか「実はあまり楽しんでないな」と感じるなど、想像の幅が全然違うんですよ。
 
音声だけだと、想像の自由がある。きっと、1人として同じイメージを持つ人はいないでしょう。テレビの場合は、映像を見た瞬間、全員に同じ情報が提供されるんです。よく「テレビとラジオの違いは?」と聞かれるけど、まさにここが違いかな。だから、ラジオに出演しているときは、リスナーの方々にどれだけイメージを膨らませてもらえるか、心を砕かないといけないんです。それがラジオの醍醐味でもありますね。
 
 
常に状況が変化する収録現場。特に生放送の場合は大きなプレッシャーがかかることが想像できる。そんな現場を数え切れないほど経験してきたカビラさん。緊張とは無縁に思えたが、実はそうではないと言う。プレッシャーや緊張を乗り越えるために、普段実践している方法を教えてもらった。
 
 

まずは自分が楽しむ

 
僕は、放送の現場では普段から緊張する(笑)。今、担当させてもらっているラジオ番組では、よく海外の方にお話を聞くんですよ。そうすると、その方が喋っているときに、ほぼ同時に通訳をしなくちゃいけない。でも、英語でしゃべっている声と、僕の訳している日本語がかぶってしまったら聞き取りにくいでしょう? だから、本人の耳には声がかぶらないように、手元にあるマイクのスイッチを自分で操作しながら、通訳をするんです。これはとてもドキドキしますし、緊張する。でも、それが楽しい。相手の口調を真似してみたりね。少し盛ってるときもあるけど、それは演出の範囲内、自由ということで(笑)。
 
緊張しているときは、自分を俯瞰して見ることを意識しています。「今、カビラは緊張しています」と、あえて頭の中で言ってみる。「緊張しているなぁ。よーし、やるぞ」って考えるんです。ここで、「緊張している、どうしよう」で終わってしまっては解決できません。「緊張しているけど、よし、やるぞ」と思うことですね。自分が緊張している状況も、楽しむようにしています。番組をつくっている人が楽しんでいないと、リスナーさんに楽しみが伝わらないですからね。
 
あと大切なのは、自分を良く見せようとしないこと。ラジオの場合、インタビューしようとしたときに電話回線がつながらなかったり、つながっても途中で切れてしまったりすることがあります。そんなときに、無理やりかっこ良くまとめようとしてはダメですね。リスナーの方々にはすぐに見破られてしまいますよ。これは、トラブルが起きたときだけではなくて、常に気を付けていなければいけないことです。例えば、何かについて説明するときも、「僕は詳しく知っている」と思ってはいけない。ラジオを聴いてくださっている方は本当に大勢います。だから、どんなテーマに関しても、必ず僕より詳しい方がいるんですよ。