最新刊 『決断の真実』 を企画編集者が語る
何になるかではなくて、何をするかが大事だ。私はお笑い芸人と政治家になって、
人々を幸せにしたかった。――
( 『決断の真実』 序章より )
多数の著書を持つ東国原英夫氏だが、一つの出版社から複数の著書を出したことはない。唯一の例外が創英社/三省堂書店だ。2008年の『決断力。』に続く2冊目の『決断の真実』。著者との信頼関係の上に成り立った企画を、同社編集2部部長・齋藤勝美氏が語る。
「2008年の『決断力。』は、「メッセージコンテンツ」 シリーズの第一弾として刊行、東国原さんに “現代のパブリック・アスリート” を見出しての企画でした。今回の『決断の真実』は “自叙伝的”メッセージ の『決断力。』に対しての各論で、「あのとき何が起きていたか。何をどんな意図で話し、行動したか」 等、決断の舞台裏に迫るもの。政治家として存在感を増していった各トピック(東京都知事選出馬等)での、“今だからこそ語れる真実(リアルメッセージ)や本当の姿” が書かれています」
東国原氏が宮崎県知事を任期満了退任したのが2011年1月。『決断の真実』の企画は、それに先立つ2010年、任期満了退任による不出馬が表明される以前のタイミングで持ち込まれた。しかしその時点ではもちろん2011年4月の東京都知事選出馬の表明はしていない。その後、都知事選出馬を決意し、出馬会見の準備を進めていた中、3月11日に突然、「出馬の可能性はない」 と言っていた現職の石原都知事が出馬表明。東国原氏は、その報を、上越新幹線の車中で聞いたという。「よっしゃ!」 奮い立ったそのとき――車中が大きく揺れ、東日本大震災が発生。当初予定していた14日の会見は延期、震災報道真っ只中での告示直前の出馬会見、テレビ等で取り上げるメディア戦略が使えず、東国原氏は一敗地にまみれた――。その激動する状況の緊迫感も、『決断の真実』は一文一文リアルに伝えてくれる。
齋藤氏は、『決断力。』と『決断の真実』から見えてくる東国原氏のメッセージについてこう語る。
「東国原さんは、自分にしかできないこと、自分ならできることを常に考えています。著書の中に、人の何倍も空気を読める東国原さんが、あえて世の風潮と反対の主張をするシーンがあります。宮崎県知事在任中に、全国的な公共事業削減キャンペーンの真っ只中で、「必要なものは必要なんです」 と東九州自動車道の必要性を説いたのは、その典型だと思います。その時のバランス感覚は本当に素晴らしい。ご自身の信条とスタイルに照らして、「渦中での身の処し方」 や 「ピンチからの立ち直り方」 を常に客観視しています。この点は『決断力。』にある 「58の自己啓発的なメッセージ」でもしっかり伝えていると思います。最終的には、そういった要素が、「今求められている魅力的なリーダー像」 につながるのではないでしょうか。今回の都知事選で東国原さんが基礎票がないにも関わらず170万票も集めたのは、今、時代がどんなリーダーを求めているかの現われだと思います」
『決断の真実』には、“政治家・東国原英夫” の様々な決断の舞台裏が赤裸々に明かされている。そこからは、私たち一般の人々が自ら決断し、行動を起こすべき課題が透けて見えてくる。「震災からの復興」 という、高度経済成長以来の “大きな物語” がこれから発動しようとする中で刊行された本書は、私たちが自立して 「決断の仕方」 を考える際に、良質のヒントを与えてくれるのではないだろうか。
(取材・文 編集部)