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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

テニスの女王がたどりついた境地
視野を広く持てば、遊戯三昧

 
 
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 私の負けず嫌いはどうやら生粋のものらしくて、これは笑い話かもしれないんですが、遊びの中でも負けるのは嫌でした。たとえば友達とトランプをして遊んで、負けるとするじゃないですか。負けたといっても子供の遊びの中の話ですから、笑って終わらせればいいのですが、どうもそういうわけにはいかない(笑)。 びっくりされるかもしれませんが、負けが込んできて泣くまい泣くまいとすればするほど、体が反応してたんですよ。プルプル体を震わせながら耐えていると蕁麻疹が出てきてしまったりしましたね(笑)。
 両親は負けず嫌いなところはそんなにないから、どちらかというと祖父母からの隔世遺伝なのかも。でも、この性格で育ったことを今では良かったと思っています。「まあいいや」 で済ませられる性格であれば、きっとトップには立てていなかったでしょう。
 
 
「負けたくない」 という気持ちが人一倍強かった彼女は、やがて 「勝利」 という結果に挑むかのようにテニスに没頭していく。その道は最終的に、シングルスでは世界8位に、ダブルスでは1位にランキングされるという実績につながった。シングルスとダブルスの両方でトップ10に入るという偉大な業績を残した杉山氏だからこそ聞いてみたいことがある。ペアで戦うダブルスと一人で戦うシングルスとは、どこが違い、どこが共通なのだろうか?
 
 

シングルスでもチームに支えられている

 
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 ダブルスとシングルスは、同じテニスコートを使う競技でも、まるで違うスポーツと言っていいと思います。ダブルスのほうは、まずとても展開が速い。それに、ペアを組みますから、一人の調子がよくても、パートナーが落ちている状態だとやはり勝てません。二人のエネルギー量のバランスがうまくとれていることが重要なんですね。
 シングルスの場合は、コーチと作戦を話し合いながらコートへ立ちますが、試合の流れに対応していくのは自分一人です。相手と対峙しているときは自分一人で気持ちを鼓舞していかなくてはいけない。
 こう説明すると、ダブルスはチームプレーでシングルスは個人競技のように思われるかもしれませんが、実はシングルスもれっきとしたチームプレーなんですよ。試合形式の性質上、確かにコートに立つのは選手一人ですが、その選手のパフォーマンスをベストな状態に引き上げてくれるサポートスタッフが必ずいます。コーチ、マネージャー、マッサージスタッフ、フィッティングスタッフ・・・ 一人で遠征に行くことは絶対にないわけで、常に選手は誰かにサポートされているんですね。チームのサポートという後ろ盾があるからこそ、思い切って試合に集中できる。そこには必ず信頼関係がありました。
 だから、私はダブルスのパートナーには、信頼関係を優先してペアを組むことが多かったです。プレーのコンビネーションが合うこともすごく大事ではありますが、その前に人間としてフィーリングが合うかどうか。お互いにリスペクトしあうことができれば、一つの結果に向けて同じエネルギー量を注いでいけますよね。それが上辺だけの繋がりでないなら、相手の良さを出すための意見交換もできるし、本音が言い合える。どうせペアを組むなら、それくらい深い環境を作りたかったんです。
 
 
勝利へのストイックな姿勢が印象的な杉山氏も、「勝ち」 という結果を自分一人で導いてきたわけではなかった。目の前の敵を打ち破るために大事なものがある。それが、本心を言い合えるパートナーやチームメイトだ。彼らの存在が杉山氏の実力を何倍にも引き上げてきたことは間違いない。
チームでの戦いは個々に役割が存在する。役割をベストな状態でこなしていくことが、チーム全体の勝利、すなわちプレーヤーの成績に結びついていく。ここにビジネスと共通のヒントが見え隠れする。
 
 

言うべきを言い合うことの重要性

 
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 テニスは常に結果が明快です。毎ポイントごとに勝ち負けがはっきりしていて、引き分けがないスポーツです。シビアではあるけれどわかりやすいんですよ。だからこそ結果が負けと出れば、どうして負けたのか、どこに問題があったのかをしっかりと話し合うことが重要だと考えていました。
 それに加えて、関係する人とは、言いたいことは言い合うコミュニケーションを日頃から意識していました。たとえば練習や試合が終わると、疲れを残さないためにマッサージスタッフにケアをしてもらいます。体のコンディションによってはいつもどおりのマッサージでは疲れが取れないときもある。そのときに私が何も言わなかったら、彼らのパフォーマンスを下げることになりかねないんですね。マッサージスタッフとしては、私からのレスポンスがないので、パフォーマーとして問題のないマッサージができていると思う。すると、そこに溝が生まれてしまいます。だから私は、そういうときこそ自分の意思をはっきり伝えるようにしていました。「今日はまだ疲れが取れきらないから、もう少しやってくれる?」 とか。隠しごとをしない関係は本当に大事だと思います。
 
 
 
 

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