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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

成功を続けられる周囲との関係性を
スピードスケート界の女神が語る

 
 
岡崎選手はいわゆる “団塊ジュニア” の世代である。競技者人口も多い。釧路星園高校時代、ハイレベルな選手の層が非常に厚い戦国時代さながらの世代にあって、インターハイで最高4位という記録を打ち立てた。しかし、アスリートたるもの、狙うはやはり頂上だろう。そうしたライバルとの戦いの中で、嫉妬や焦りはなかったのだろうか。
 
 

マイナスの感情に支配されない

 
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 たとえば島崎さんについては、高校時代からしのぎを削り合っているような関係ならば、彼女から 「学ぼう」 などとは思わなかったかもしれません。でも、もともとスタートラインが全然違うわけですから、へっちゃらです(笑)。 高校のときに初めて名前を聞いた時点で彼女のほうが上にいっていたので、嫉妬とか焦りとかのマイナス感情はなくて、「高校生なのにすごいな」 と素直にリスペクトしていたんですよ。
 だから自分ではこう思っています。「ライバルがいたから自分がどうこうなったわけではなくて、ライバルはライバルで競争はするけれども、自分の幹は自分で育てていくものだ」 と。もちろん、ライバルは目標にできるから、好敵手を見つけることはすごく大事です。目標になる選手がいれば、それが 「よし、やろう!」 と発奮材料になります。私の場合、同じ人間で同年代だったら、その発奮具合をいい方向に使っていけばいいんだと思えたんですね。「彼女がこうするなら、わたしはこういう方法をとってみよう」 とか、自然に自分なりの個性や強みを生かしていく考えになってきた。ライバルって、そうさせてくれる存在だと思うんですよね。
 だから、ライバルといっても、別に敵対する必要はないわけで、彼女たちのいいところをうまく取り入れて、自分が追いかける目標にするよう持っていくのが理想的だと思います。そのためには自分の幹がないと、いたずらに焦ってしまったり、不安になってしまうだけ。「わたしはこうするよ」 という、自分の内面への語りかけが必要です。
 
 
選手としてのキャリアが長くなり、結果を残していれば、ライバルの質も違ってくる。それまでは先輩や同世代を目標にしていたのが、次第に自分自身が次世代の選手たちから目標とされる存在に代わってくる。スピードスケート界でも次々と新星が現れ、彼女たちは「岡崎朋美」が目標だと語った。その視線に脅威を感じることはあったのだろうか。
 
 

次世代の選手の目標になる

 
 脅威というほど恐ろしい感覚ではないですが、記録ひとつ見ても 「この子、きたな」と自分に近づいてくる足音の大きさを感じることはありますよ。年齢も上なので、プライドみたいな心情ももちろんありますから、彼女たちに負けないように持っていかなくてはいけないとは思っています。
 でも、最近はちょっと困ったことがひとつ。年齢の差です(笑)。 氷の上に立てば年は関係ない。それは事実です。でも、年が近い後輩なら 「ライバルです」 と言えますが、今の私の年齢だと、親子くらい年が離れた選手がいっぱい出てきているので、その子たちに 「あなたたちは私のライバルよ」 と言うのも、ちょっと大人げないというか・・・・・(笑)。 彼女たちを軽んじているのではないんですよ。ただ、あまりに敵意むき出しにしちゃうと、「岡崎朋美、大人げないぞ!」 って言われちゃうといけませんからね(笑)。
 
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2010年2月、バンクーバーオリンピックで滑走する岡崎選手。
ですから、「ライバルは自分自身」と言いますか。きれいなことを言いたいのではなくて、自分にしかできない滑り方を追い求めるほうがメンタル面でもバランスがとりやすいんです。私は現在39歳ですから、年齢的に体力がこれから向上することは難しい。けれども、得られるものはまだたくさんあります。極めたいテクニックもあるし、どうすればもっと体や神経を効果的に使ったスケーティングができるかも追求したい。追い求めるものが 「ライバルの存在」 や 「ライバルの記録」 から 「自分がどこまでできるかの可能性」 に切り替わってきているんですね。まさに自分との闘いです。
 これは周囲に対する貢献の意味もあるんです。求めるものが切り替わってくる年齢までスケートをやってこられたわけですから。39歳の女性アスリートがどういうポテンシャルの高め方をするか。私のやり方が今後のスピードスケート界にとって一つの判断材料になるようになってほしい気持ちがありますね。スケートという競技は、若い世代で終わる人が多かった競技なんです。でも、今の私のように30代後半でもできることを証明するだけでも、先駆者になれるのかなと思っているんです。これも一つの私の幹ですね。
 
 
岡崎選手は、バンクーバーオリンピック終了後、赤ちゃんを授かった。この記事が世に出るころにはすでに出産も終え、一人の母親となっている。結婚し、幸せな家庭に恵まれ、その環境に後押しされて活躍すること。それは現代女性にとっては理想的な形だろう。そのような環境を、彼女はどのように作り上げてきたのだろうか。
 
 

甘え上手になることが大事

 
 女性に生まれたからには、結婚して子どもも生まれて、好きなスケートをやってというのが私にとっては理想でした。でも、子育てをしながら仕事をするのはすごく大変なこと。このインタビューを読んでくださっている企業家の皆さんの中に女性の方がいらっしゃったら、もしかしたら同様のことを感じておられるかもしれません。
 私が思うに、その大変な環境を大変じゃなくすように持っていくためには、助けてくれる人を周りにたくさん作ることが大事です。「自分だけで何もかもやるんだ」と考えずに、「甘えるところは甘えちゃって、助けてもらおう」 というように気楽にやればいいと思うんです。「ヘルプミー」 を気軽に言ってしまえる場所を作るというか。臨機応変に対応できる環境が、一番理想なのではないですかね。
 
 
 
 

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