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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

相対的な視点と手法の転換が
環境問題への取り組みを変える

 
 
――企業は、現場での一手間に些少のコストをかけてもそちらのほうが収益性がいいということに気付いていない?
 
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 そう、気付いていないことがあります。だからそのあたりを周知して、「では具体的にどうやるのか?」 という情報なりプランなりを提供することを、私たちは営々とやってきたわけです。
 あとは、国の制度がいろいろできますから、ちゃんと前向きに取り組んでいけばよいと思います。ただ制度も法制化されて義務になるものもあれば、「指針」 程度で止まってしまうケースもあります。このあたりはやはり 「自主性」 が好きな日本としては致し方ないですね。じれったいところもありますが。
 企業というのは、環境の変化に対しては基本的に反対する性質がありますよね。京都議定書でいえば経団連さんが過去3年くらいそうでしたよね。今回、鳩山首相が25%を宣言して、麻生政権が公約した8%から非常に上げたわけですが、あれでヨーロッパなどにも日本の本気度が伝わったと思います。
 いままでは、温暖化対策の政策や指針づくりの主導権が経団連さんや重厚長大産業、省庁で言えば経済産業省の側にあったわけですね。でも、環境マターのことをするのに規制を受ける側の主体が目標を設定するというのも、おかしいですよね。これはグローバルな視点を持ってやはり環境省が決めればいいと思います。
 今回それをやったのが、“政治主導による” 25%宣言です。もともと日本は国民の意識は高いと思います。マニフェストの中でも25%削減目標は1、2を争う支持を得ていますよね。難しいのは、経済界でも意見は二つに割れています。環境配慮型の商品に強みを持つ側は日本の 「環境ブランド」 は強まってほしいし、社会が低炭素化すると競争力が強まる部分もある。欧州企業に対抗してCO2を削減して事業拡大を狙う商社なども推進側と言えます。逆側が重厚長大産業。当然ですが、特に世界中で電力と鉄鋼は反対派に回っています。自動車産業なんかは両者にまたがっている部分があり、一方で低炭素をPRし、一方で25%に“懸念”を示してきた。 その意味で、これは調整では済まされない。最後は政治判断しかない部分です。今回政治がリードして、半歩先のイメージを政治で出した意義は大きいと思います。一方ではどんどん低炭素商品をつくっていけばいいんだ、となりますし、一方にはやっぱり根本から見直さないといけないね、と方向性をつけたわけですので。
 
 
 

「25%宣言」の本当の意味と
カーボンオフセットの訴求力

 
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―― そこでお聞きしてみたいのは、これから商品の価値の在り方も変わってくるのではないかということです。たとえばフェアトレード商品です。消費者はそれを買い、企業は売ることで、社会をより良く変えていく動きに参加できる。参加できるということが、商品の価値と、消費者が払う対価の、ある有為な部分を占めている。これがフェアトレード商品です。そのような意味で、御社が新しく取り組まれているカーボンオフセットもフェアトレード商品に通じる面があるのではないか。つまり、新しい価値の形態を持っているのではないか。
 今回の鳩山首相は、自国の商品価値をフェアトレード的に上げたと見ることもできると思うんですね。少し乱暴な言い方をすれば、25%まで上げなくても、仮に15%でも格好は付いたかもしれない。それでも25を宣言し、各国に評価された。評価されることのほうが長期的に見て日本の国益に適うと、いわば算盤を弾いたようにも思えます。
 
 
 うーん、確かに、カーボンオフセットというのは、企業ブランドを上げるための商品が主です。その意味ではフェアトレード的な側面はあります。しかしそれは、ある面では得だからやっているんですよ。そのほうが消費者の意識に刺さりやすいから。または低コストで商品のPRができるから。いま、リサイクルワンではオフセットのお客様100社前後に導入を支援させていただいていますが、全部顧客は営利企業です。
 ただし、ゼロサムではないんです。どっちかという話ではないんです。「商売でやっているんですか?社会のことを考えてやっているんですか?」 と聞かれたらどっちもです。常に両方なんです。両者を分けることに意味はない。
 JALさんも、yahoo!の井上社長も、Audiさんも、儲けのためだけにカーボンオフセットを取り入れているかと言えばそうじゃない。では100%社会のためだけにやっているかと言えば決してそうではない。これは、日本で最も多くオフセット商品の導入支援をしてきた企業の代表として言わせていただきますけれども、彼らは常に企業の社会的責任をすごく真剣に考えています。でも同時に、収益にもなんとか結び付けなきゃいかんと真剣に思っているんです。片方だけの経営者は見たことがないです。
 
 yahoo!の井上社長は 「これは会社としての責務だ」 とおっしゃっておられました。日本一サーバを使っている企業なわけですが、サーバの電力を全部オフセットしました(※2008年度分)。すごいですよね。1億人のユーザーがいて、PVが1日に15億。それに反応する電力つまり炭素排出量を全部CO2オフセット(相殺)したわけです。ここまでくるともう、社会的責任を堂々と考えている企業なわけですよね。
 
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 鳩山首相が15%じゃなくて25%にしたというのは、確かに全体論としては高い意義はあるでしょう。でも、国の中で誰が得する損するという話は残りますよね。液晶関係やハイブリッド関係は賛成ですよ。鉄、化学、石油石炭、これは悲鳴です。
 日本の産業界は戦後ずっと、鉄鋼とか電力など重厚長大産業が握っていたわけですが、現在はそれも転換してきています。国における重要産業の位置づけも変わりましたよね。ハイブリッドやリチウムイオン電池などはおかげで国際的にも日本が強い。これをもっと引っぱり上げて全体を上げようというのが、25%という数字の、産業の場面における本当の意義なんじゃないでしょうか。アメリカと中国は議定書に調印していないのに日本だけ先んじなくても・・・というようなことを言うことがありますが、アメリカも中国もいずれは低炭素社会を目指してくる。そちらが、資源不足で人口がまだまだ増える世界として目指すべき方向だからです。現に、低炭素を否定してきたアメリカでは自動車産業の潮流を読み誤った。政府が変化への抵抗を続けると、国内産業の国際競争力が低下していってしまう。今から25%に照準を合わせた商品をつくり込んでおけば、日本の強い商品をアメリカや中国にどんどん輸出できる。そうすれば非常な国益になって戻ってくると思います。その機会を取り逃がすことのほうがよっぽど大問題です。
 まあ、政治は個別の商売はやりませんからね。ビッグピクチャーをどう描いてくれるか。その下で個別企業がどう技術を磨くか、ということだと思います。
 
 
 
 
 

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