アメリカのシリコンバレーから帰国し、鮮魚の仲買人に。この珍しい経歴を活かして事業を行っているのはGuntz(ガンツ)株式会社の代表取締役である諏訪孝弥氏だ。同社は魚の仕入れ業務を自動化する、独自のシステムを開発。飲食店の従業員が市場を歩き回らなくても、新鮮な魚を買い付けられる環境を構築した。しかし、諏訪社長は「効率化よりも本当に大切なのは人とのつながり」であると語る。その思いをじっくりとうかがった。
シリコンバレーから帰国し仲買人の修業へ
諏訪 私は、小学校から高校生までサッカーに熱中していました。高校では強豪校に進み、規律あるサッカー部で上下関係やチームワークを学びました。一方で、子どもの頃から父のパソコンでオンラインゲームをして遊んでいて、ITにも興味を持つようになりました。そして、高校卒業後はシンガポールへ留学しました。語学学校で1年かけて英語を学び、シンガポールの大学に入学したんです。
鶴久 海外に留学なさっていたんですね。その後はどうなさったんですか?
諏訪 いずれはIT業界で働きたいという夢を抱き、シリコンバレーに憧れていたのもあって、アメリカに渡りました。そして、シリコンバレーのコミュニティカレッジに入学しました。そこで、実際にITの進化を体験した時、日本のITが圧倒的に遅れていることがよくわかりました。それと同時に、海外の魚料理があまりおいしくないことも実感しました。アメリカで出店している日本料理店の板前さんや店員さんにも話を聞いたところ、みんな「良い仕入先がない」と嘆いていました。そこで私は、外国の人たちにもおいしい日本の魚を味わってほしいと考え、帰国して築地市場で仲買人の修業を始めたんです。