川上　日本の補聴器普及率は非常に少ないんですね･･･。父の場合もそうでしたけど、装着してみれば便利なものだとわかっているのに、その一歩が踏み出せないんですよね。
 
鶴田　おっしゃるとおりです。以前、私が補聴器メーカーに勤めていた頃、販売店のイベントを手伝いに行ったことがありました。そこへ、老夫婦とその娘さんがいらして、ご主人に補聴器を勧めていたんです。でも、長年亭主関白を貫いてきた方らしく、「いらない」と言ったらテコでも動かなかったんですよ。実際に試聴して、聞こえやすくなることは自覚していらっしゃったにも関わらずです。そこで私は「補聴器をつけることで、ご家族みなさんに喜んでもらえると思いますよ」と申し上げたんですよ。
 
川上　まさに昔ながらの頑固そうなご主人ですね。反応はいかがでしたか？
 
鶴田　その時は購入せずに帰られてしまいました。でも後日、販売店から「あのご主人がお一人で買いに来てくださいましたよ」と連絡があったんです。
 
川上　素敵なエピソードですね。そのご主人からすれば、いくら亭主関白と言えども、ご家族と会話ができないのは寂しかったのかもしれませんし、自分が補聴器を着けることで家族孝行になるのならと思っていただけたのかもしれませんね。