57歳のときにNHKの役職定年制度によりフリーアナウンサーとなった宮本さん。初めて民放に出演した際は打ち合わせ量の少なさに驚いたという。「NHKは打ち合わせしすぎる、民放はしなさすぎる」と笑いながら語る宮本さんに、今後の活動についてもお聞きした。
日本語の番人として
NHKの番組は、打ち合わせの際に大量の資料を渡されます。打ち合わせの回数も多いですよ。民放に初めて出演したときに知ったのが、資料は自分で準備しなければいけないということ。そして打ち合わせの回数も少なく、本番一発でやり切るというのも珍しくありません。
フリーになって初めて出演した番組は、エジプトのクフ王の墓を探しに行くものでした。そのときの台本が、表紙を含めてA4用紙7枚だったんです(笑)。3時間番組なのに、これでできるのか? と不安になりましたね。でも、できるんですよ。あれは本当に驚きました。演者、プロデューサー、スタッフがそれぞれ実力を発揮できれば、番組はしっかり出来上がるんだという気付きがありました。
ただ、私がこれまでの51年間の中で得た教訓は、人を信じず、最後は自分で何とかするしかないということです。番組をつくるには全員の信頼感が必要ですし、私ももちろんみなさんを信頼しています。それとは別に、最後は自分で何とかするという気持ちを持っておくべきなんですよ。
今後は、アナウンサー以外の仕事にも挑戦していきたいです。実は、ずっと胸に秘めていた目標がありまして。私が長年尊敬申し上げている、吉永小百合さんの映画に出演することです。吉永さんには何度もお会いしているものの、面と向かって「ご一緒させてください」と言うのは憚られますから、この記事を見て気付いてくれたら嬉しいですね(笑)。
もう一つ、『NHK大河ドラマ』にも出演したいと思っています。以前、ナレーションとして出演したことはあるんです。ナレーションを担当したことのある人が、役者として出るというのもおもしろいと思いますね。私は高校生の頃、スポーツ少年団で馬術を習っていました。ですから、騎乗する武将の役もできますよ。いつでも準備万端なので、ぜひ挑戦させてもらえたら嬉しいですね。
アナウンサーとしては、“日本語の番人”としての矜持を持っています。私は「めっちゃ」「とか」「ほう」などの言葉は使いません。例えば、「趣味とかありますか?」と聞くことがあると思います。このときの「とか」は必要ないんですよ。大正時代までは「新しい」を「あらたしい」と言っていたように、言葉は時代とともに変化していくものなので難しい部分もあります。間違いだと決めることもできませんからね。ただ、日本語の番人として、現在の理想的な日本語を発信していきたいと思っています。
(インタビュー・文 中野夢菜/写真 Nori/ヘアメイク 佐藤恭子(山田かつら))
(取材:2024年9月)