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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

 
 
2023年に女優の小林綾子さんとユニット「toa-toa」を組み、朗読と音楽、フリートークの舞台を行っている藤田さん。お互いのこれまでの経験を活かして、お二人が良いと思ったものを提供しているという。
 

やりたいことにチャレンジできる場

 
もともと、小林綾子ちゃんとは二人で何かやってみたいねとは話していたんです。そんなときに、シャンソニエ「PetitMOA(プチモア)」さんから「ココで何かやってくれないか」とお声がけいただきまして。良い機会だからと綾子ちゃんに相談したんですよ。私は朗読劇をやってみるのはどうかと考えていたのですが、綾子ちゃんは音楽をやってみたかったそうなんです。彼女は東北の復興支援のボランティアで歌声喫茶という企画に参加していて、大勢での合唱や演奏などを行っていますが、もっと音楽もやってみたい気持ちがあったそうです。
 
本業ではなかなかできない役や作品にチャレンジしたり、二人がやってみたいものを上演したりするというわがままなユニットがtoa-toa。私は皆様に、もっと彼女を知ってもらいたい、もっと見てもらいたいという気持ちがありまして。プロデューサーのような気持ちですね(笑)。だからフリートークでは、普段なかなか見られない彼女の一面も出たら良いなと思っています。
 
第一回の公演を行ったところ、「楽しかった」というお声をたくさんいただきました。プチモアは綾子ちゃんが普段出演しているような大きな舞台ではなく、マイクがなくてもお客さんと話せるような距離感です。その近さで、生の芝居を見られることに喜んでもらえたようですね。私たち二人がやってみたいことにチャレンジできて、お客さんも喜んでくれる空間です。
 
1月27日に行う第三回公演では、金子みすゞさんの半生を描いた朗読劇を行う予定。さまざまな文献をもとに、台本を作りました。私は『空のかあさま』という舞台で金子みすゞさんの役を演じたことがあり、綾子ちゃんもNHKで金子みすゞさんの特集を行った際に再現ドラマで金子みすゞさんを演じています。二人とも縁のある金子みすゞさんをテーマに、オリジナルの作品を作ってみようと思いました。
 
私たちはご縁があって金子みすゞさんのご息女の上村ふさえさんと交流がありました。残念なことに2022年に亡くなられましたが、ふさえさんの目線から見た金子みすゞさんという内容になる予定です。上演するテーマや伝えたいメッセージは、綾子ちゃんと二人でいろいろ調べながら考えています。とにかく、二人で良いと思ったものを皆さんにお見せしたいと思っています。
 
 
二人で企画から考え、舞台を作り上げているというtoa-toa。藤田さんが「自分たちが良いと思ったものをそのままお客さんにお見せしたい」と考えたのには、ある経験があったのだという。
 

良いと思ったものが通用するのか挑戦している

 
2022年に出演した舞台で出会った演出家の方が、とてもユニークな方だったんですよ。通常舞台の稽古は立ち稽古や通し稽古を重点的に行います。でも、そのときの演出家さんは席に座ったまま台本を読む、いわゆる本読みに時間をかける方。「お互いにきちんとコミュニケーションが取れていれば、ずっと本読みをしていても舞台は成り立つ」というお考えだったのです。私は本読みによってじっくりと役を掘り下げることができたので、とても楽しかったですね。
 
実際には立ち稽古も通し稽古も行いましたが、そのときにもほとんどダメ出しがなかったんです。そうなると、演者の私たちもだんだん不安になって「ここの演技どうでしたか?」と聞くんですよ。それに対してもずっと「良かったよ」と言ってくださる。本番のときにも、稽古と違うことをしてしまって「大丈夫でしたか?」と聞くと「良かったよ」と。事前の準備と違うことでも、作品が良ければ良いと言ってくださる方でした。
 
そのときに、「私たち演者は『演出家さんに褒めてもらいたい』『演出家さんにOKをもらいたい』という気持ちで演じていることがあるのではないか」と気付きました。
 
この経験を通して、演出家さんがいない場で、自分たちが良いと思ったものをそのまま提供してみたいと思い、toa-toaは二人だけで企画、演出を行うことにしました。ちょっと驕った考えなんですけどね(笑)。でも、どこまでできるのかチャレンジしているところです。今のところお客さんたちはとても満足していただけて、ほっとしています。