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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

勝ちに貪欲なアスリートの
闘うためのモチベーション

 
 
ポジティブに考えるようになった上原投手。「好きなことをやってお金がもらえている」という建設的な開き直りがあったからこそ、純粋に上を目指すことだけに集中できたのだという。そして、努力に対する結果として勝利がついてきた。勝利の美酒に酔う。しかし、その美酒に酩酊して我を見失う人は少なくないが――。
 

環境に流されない

 
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 試合で勝ったときの気持ちは、野球をしている人じゃないとわからないかもしれませんね。一つ勝ち星がつく嬉しさは言葉では言い表せませんから。僕なんかは、次の日の新聞を早く読みたくて、試合終了の直後から 「早く朝がこないかな」 と考えていますよ(笑)。
 人って、結局は褒められて伸びるものなんだと思います。褒められると素直に嬉しいし、やっていてよかったと思える。認めてくれる人がいるから、また次も認めてもらいたいと思える。褒められて伸びない人なんて、いないんじゃないかな。
 でも、褒められすぎてチヤホヤされて、勘違いしてしまう人も中にはいる。天狗になっちゃうといいますか。最初の一年は結果を出すために努力をしても、そこで結果が出て、今まで接点のなかった人たちが周囲に集まるようになると、つい自分を過信してしまうんですよ。そこで二年目、三年目と沈んでクビになる。そうならないよう、自分というものをしっかり持つ必要は自覚していました。チームの成績に引っ張られないという意味でも、同じことが言えます。つまり、環境に流されないよう、自分の中でバランス感覚を保たないといけないわけです。
 
 
 
確かに、環境は人の行動やモチベーションに大きく作用する。チームが負け越しているときは、悪いムードが集団の中に蔓延しがちだ。それに引っ張られてしまうと、自身の実力が発揮できない精神状態になるだろうし、何より肝心の成績も落としかねない。そのようなとき、上原選手はどのように対処してきたのだろうか?
 
 

個々の気持ちが集団の在り方を決める

 
 チームの流れが悪いときは、悪い流れに乗らないようにすることを必ず考えます。そして、自分がそのムードを変えるよう努めますね。そのためには、まわりに流されない、強い意志を持っておくことが大事。
 僕はメジャーでは、どちらかといえば弱いとされるチームに入っています。今のチームは、悪く言えば選手が負けに慣れてしまっているというか、優勝したい気持ちが感じられないときがあります。当日はちょっと落ち込んでいるけれど、負けても、それほど切羽詰らないと言いますかね。切り替えが早いという意味ではいいんですが、“勝利への飢え”は薄いかもしれません。日本ではジャイアンツという常勝チームにいて、両方を知ったことで何に気付いたかというと、まず選手が見ている方向が違うんです。ジャイアンツでは全員が優勝しようという気概に満ちていました。全員がそっちに向いていました。誰か一人でも優勝できなくていいと思っていたら、あれほど強いチームにはなっていないでしょう。
 
 
 
勝利への飢え、渇望。これらはまさにモチベーションの源だ。飢えを感じなければ空腹に気付かずそのまま餓死していってしまう。上原選手は、そこでチームに必要なのは組織のリーダーの存在だと言う。
 

背中で語れる存在に

 
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 経験上思うのは、選手の気持ちというものは周囲に広がっていくんですよ。チーム内で 「必ず優勝する!」 という気持ちがブレないでいると、驚くようなチームプレーが生まれたりもする。オリオールズは去年から監督が変わり、選手の意識改革が進んでいます。それを間近で見ていると、指導者は部下についてこさせるために何が必要かとか、一般にも通じる組織論の在り方の勉強になりますね。こういう目標がある。だから、そっちに行くぞ、と。
 僕は指導者という立場ではないですが、選手の中ではベテラン層に入ります。ベテラン選手は、自分の背中でチーム全体を引っ張っていくことも大事だと思います。僕が巨人に入った頃は、桑田さん (桑田真澄投手) などがそういった選手でした。ベテランが若手の目標になればチームにとってもプラスです。もちろん、技術を直に若手に教えるようなことはありません。彼らが上がってくるとこっちがクビになる世界ですからね(笑)。 でも 「俺は何も隠さないから、見たいなら見ろ。見て感じてくれ」 という姿勢をベテランが持っていると、若手も伸びやすい。監督やベテラン選手などの上の人間が、明確な目標を掲げて、背中で引っ張る姿勢を見せることが、チームが強くなれる要因の一つだと考えています。 
 
 
 
 

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