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経営者インタビューEXECUTIVE INTERVIEW

患者の思いに寄り添って 
心を癒すクリニック

 

日常会話の中で相手を癒す技法

 
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川﨑 鹿島院長は患者さんに対して、どんな導き方をするのですか。
 
鹿島 患者さんの心の病や物事についてのスタンスを変えていくことが効果的ですね。例えば、うつ病を発症したことで得られたメリットを理解して頂くように働きかけるんです。患者さんが「うつ病を発症して意味があった」と思えるように。
 
川﨑 なるほど。考え方を180度変えれば、そういう捉え方もできるのですね。患者さんがそれを理解するには、綿密なカウンセリングが必要だと思います。
 
鹿島 そこで当院では、初診の方とは30~40分、再診の方でも10~20分は話をするようにしていまして。カウンセラーのカウンセリングをご希望の方には、医師の診察とは別に時間を設けるようにしています。一概にカウンセリングと言っても様々な流派があり、これまで日本で主流だったのは、無意識に抑圧されている心的なものを意識化する精神分析と、アメリカの心理学者、ロジャーズが創始した傾聴型のカウンセリング。治療の上で、精神分析は、直面化といって、患者さんの気付いていない問題点を指摘することがあり、患者さんによっては余計につらくなってしまうことがあります。
 
川﨑 誰でも、欠点を指摘されるのは嫌ですよね。
 
鹿島 そうなんです。対して傾聴型のカウンセリングでは、カウンセラーは聞き手に徹しているので、患者さんとしては「なぜ、先生は何も言ってくれないの?」と疑問を感じてしまいがちです。日本人は日常的な会話の中に癒しを求めているので、対話が重要なんです。
 
川﨑 確かに、人と会って話をすると気が晴れることがあります。
 
鹿島 そうですよね。また、最近保険点数化された認知行動療法も、患者さんによっては、手間がかかり過ぎるように感じられることがあります。どの技法も、それで良くなる患者さんは大勢おられ、役に立つ面もありますが、私は患者さんが慣れている日常会話の中で元気づけることを意識しています。そうすれば、患者さんは私と普通に話をしているだけでも、帰る頃には笑顔になっているんです。
 
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成城大学での講義風景。人気講義で学生からも支持されている
川﨑 普通の会話に見えても、様々な知識と技術と経験を駆使して会話を進めているんでしょうね。具体的に、どんな言葉をかけるのですか。
 
鹿島 難しい言葉は使いません。患者さんの言葉をなるべく用いながら、どんなことでも、「それはいいですね」、患者さんには「あなたっていいですね」とわかりやすく伝え、自分の良さに気付いてもらうようにしています。これは言うは易しで、治療として行うことは訓練を必要とするし、難しいことなのです。しかし、それだけでも患者さんは癒されます。悩まれていても、「私っていいんだ」と思えれば、おのずと症状は改善されていくものなんですよ。