顧客目線と現場主義で
未来を見据えた家づくり
三浦 木の香りが漂ってきそうな、素晴らしい家だと思います。建築の仕事の醍醐味は、自分のアイディアを形にできることだと思うのですが、やりがいがありそうですね。
池野 はい。ただし、建築士のアイディアを施主様に押しつけるのは違うと思うんですよ。私は施主様のご要望や予算をお聞きしながら、3種類くらいの設計案をご提案して、その中から納得できる家を選んでいただけるようにしています。
三浦 家というのは、一生で一番大きな買い物です。確かに、それくらい選択肢があったほうがいいだろうな。
池野 家は建築士が住むのではなく、あくまでも施主様が住むためのものですからね。それに、竣工した時はいい家に見えても、何年か経つうちに住みにくくなってはいけません。ご家族が増えたり減ったりすることを見越して、10年先、20年先まで快適に住める家をご提案するようにしています。
三浦 施主の容貌に応じるだけでは本当に良い家を建てるのは難しいでしょうから、どこかで落着点を見つけることも必要なんでしょうね。
池野 はい。「光土間の家」も、最終的に施主様のご希望でこのデザインになりましたが、「夏は暑くなるし、光熱費は普通よりかかります」と、デメリットはしっかりご説明しました。建築士として当然の倫理だと思いますから。それと、風呂場を透明なガラス張りにしたいというご要望だったのですが、「それでは娘さんが大きくなった時に困りますよ」と説得して差し上げて(笑)、磨りガラスにしました。
いい家のため現場でもアイディアを出し合う
三浦 それにしても家づくりというのは、様々なアイディアを上手に組み合わせなければならない仕事ですよね。たとえば見映えのために柱を細くすると、耐震性に問題が出るでしょう。
池野 そうですね。そういう問題を解消するために、私はあえて、構造設計や設備設計はそれぞれ専門の他の事務所に協力していただいております。
三浦 えっ、でも、池野代表はご自分でもやれるでしょうに。どうして外に出すんですか?
池野 確かにやれますが、外部の協力を仰げば、それだけ多彩な案が出てさらに良い解が導けますから。建築現場でも同じで、私は現場監督や職人さんなどの意見や経験も、デザインに取り入れるようにしています。
三浦 建築の世界では珍しいことなんじゃないですか? でも考えてみれば、建築士も現場監督も「施主様のためにいい家を建てる」という目的で仕事をしているのは同じです。現場の発想を柔軟に採用するのは、大切なことなんでしょうね。
池野 ええ、現場で細かいところまで気を遣って仕事をすれば、そのぶんいい家ができますから。それに、アイディアを出し合って現場との信頼を強め、互いにブラッシュアップすることが施主様の喜びにもつながりますし。